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第57話 入浴前のイベント。

「ひみぃ、30秒も顔つけてられなかったよ!雑魚すぎるぜ〜」 「うるせ!昔は10分いけてたんだよ!しばらく潜ってなかったから、勘が鈍っただけだし!」 「次はベイブレードで勝負だ!」 「はん!それ俺が得意なヤツだわ。やったことはないけど、絶対勝つ!」 緋美たちはまた弟の部屋へと消えていった。 こんな短時間で意気投合することある? まあでも変なことは考えてなさそうだし、放置しておこう。 「じゃあこーくん、僕たちもお風呂いただこうか。お先にすみません、入ってきますね!」 「はーいどうぞ!」 すごいな…そんな軽いテンションで…。 でも大浴場にだって普通に一緒に入ったんだし、裸だからって何かあると思う方がおかしいよな。 ただの風呂、ただの風呂……。 ───浴室── 「はい、静夢。このタオル使って──。」 振り返ると、静夢は頬を真っ赤に染めて俯いていた。 「えっ!何!?静夢!照れてるの?!」 「好きな人とお風呂入るのに、照れない人いるの…?」 「だってさっき、『はーい!』って感じだったじゃん!」 「そう言うしかないでしょ、一緒はちょっと…って言えないよ〜!」 「そ、そっか。静夢、先に入っていいよ。俺待っとくから。」 「ううん、一緒に入ろ。ちょっと照れただけ。大丈夫。」 「そんなに照れられたら、俺が大丈夫じゃないよ。前みたいになっちゃうかもだから…。」 「なってもいいよ、もう泣いたりしないし。」 「ただ……、」 「何?」 「これ、一人じゃ脱げなくて…」 「脱がしてくれますか…?」 ええっ!そんなイベント聞いてない…!! 真っ赤な顔で丁寧にお願いすな! 血圧上がって風呂に入る前に死にそう…!!! 「わ、わかったよ。どこから脱がすの?」 「まず、エプロンの紐ほどいて。風ちゃん固結びしてるはず。」 俺はエプロンのリボンの端をゆっくりと引いた。 しゅる…… ただエプロンの紐をほどくだけなのに、自分が脱がしていると思うと、心臓が胸の中で暴れるみたいに、鼓動がどんどん速くなる。 リボンはすぐに解けたけれど、その下の固結びがなかなか解けなくて、気持ちばかりが焦ってしまう。 まるで早く裸にしたくて頑張っているみたいじゃないか……! 手が震え、時間がかかってしまったけれど、なんとかエプロンを脱がすことに成功した。 「ふぅ…。次は、メイド服か…。」 「あれっ、後にファスナーないよ?」 「うん。ワンピースはガバって脱ぐしかないと思う。でも生地が伸びないからさ、僕バンザイしてるから、下から捲り上げて脱がせてくれる?」 下から捲り上げる?!スカートを?? なんてハードルの高い服なんだ!! でもそうしないと脱げないなら……。 俺は意を決してフリルのスカートに手をかけた。 悪いことしてる気分……謎の背徳感があるな…。 静夢の必死で隠していたパンツが顕になり、 お腹…胸…脇…首…そして、 真っ赤に頬を染めた顔。 捲り上げた服のせいで、殺人級に可愛いおでこまで見えている。 後は腕を抜くだけだけど…… 何このポーズ!拘束されてるみたい……! 「恥ずかしいってば…腕早く抜いて…。」 「ご、ごめん!今やる!」 慌てて片腕ずつ袖を抜くと、ようやくワンピースが外れた。 「ふぅ〜……。」 静夢は大きく息を吐くと、脱いだ服を抱えて俺を睨んだ。 「絶対途中でわざと止まったでしょ。」 「……ちょっとだけ。」 「もう!」 月城くんはぷくっと頬を膨らませ、そのまま逃げるように浴室へ向かった。 ……ただの風呂。 ただの風呂だからな。 俺はもう一度、自分にそう言い聞かせてから、そのあとを追った。

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