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第11話
『紅紅 、そろそろ戻ってきてもいいよ』
その念言術が頭の中に飛び込んできたのは、山の中で過ごしておよそ10年の年月が経っていたころだった。
そろそろ戻ってきてもいいということは、全てが終わったということだった。
新しい王朝が開かれた。そして、胡明一族が皇族になったのだろう。
きっと、明然 も──。
明然は今、いくつになっただろうか。
元気にやっているだろうか。
元気にやっているのかといえば、あの皇太子だ。
国が無くなったと言えば、皇太子の命も危うい。
『今行く』
身支度をするとすぐに移動した。
清陽 のところに行くと、清陽と春蕾 が頬を綻ばせて出迎えてくれた。
「早いね」
「うん。元気にしてた?」
変わらない二人の姿に、考えていたこともどこかに消える。
「紅紅に紹介したい人がいる」
「ん?」
首を傾げると、清陽の背後から二人に似た美しい見た目の少女が顔を出した。
明紅は目を見開いた。
「え、え、あ、え?」
二人と、その少女を見比べて口を金魚のように開いたり閉じたりを繰り返した。
「え、おめでとう」
咄嗟に出た言葉に清陽と春蕾が顔を見合わせて笑いあう。そして、後ろの少女さえも口を手で押さえて笑い始める。
「え?」
戸惑っていると、清陽が言った。
「お前に紹介したことがあるのに、忘れてしまったのか?」
「ここにいるときよりも、山にこもっている時間のほうが長いのに」
「それもそうよ」と少女が言った。そして、少女はくるくると回りながら明紅の前に出てきた。そして、その少女は姿を変えて、青年の姿へと変化する。
「あ?」
少女と思っていた姿が男になり、明紅は口をあんぐりと開けた。
その男は見覚えがあった。
「陛下」
反射的に床に跪き、拱手をした。
「大変申し訳ありません。この明紅の不敬をお許しください」
「はははっ、いい。いい。頭をあげよ」
そう言われて頭をあげた明紅は清陽を見た。
この皇帝陛下という存在は、月沈国初代皇帝でもあり、明紅に勉強を教えてくれた頭の上がらない存在だ。
「どうして陛下が?」
「明紅、お前がいない間の代わりをやってたんだ」
「陛下が? なんで教えてくれなかったの!」と思わず子供のように清陽のほうに駆け寄って袖を引いてしまった。
ハッとして恥ずかしくなり、顔を赤らめながら一歩下がる。
「天狐にもなったお前が未来を見ただけで寝込むとは到底思えない」
そういったのは陛下だった。
「清陽殿と春蕾殿は明紅を甘く見ていると思ったのだ」
「どういうこと?」
眉間を寄せ、言葉を疑う。
清陽を神として崇める陛下がそのような発言をすることが意外だった。
「座ろうか」と清陽が言った。
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