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第7話 TOKYO FINAL

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 鉄道会社の車掌。 優しく世話好きだが、誰かのためとなると周りが見えなくなることも。 FiVE DrinKのメンバーともすっかり打ち解けている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) 人付き合いが苦手で、繊細な性格。 青山には少しずつ素直な自分を見せるようになり、甘えることも増えてきた。 ・黒川ジン(くろかわジン) クールでぶっきらぼうだが、実は仲間想い。 青山にもすっかり懐き、以前より距離が近くなっている。 ・押部リョウタ とにかく笑い上戸。 メンバーのボケや言動にツボってしまうことが多い。 場の空気を明るくするタイプ。 ・緑川コウヘイ マイペースで、天然気質。 真顔でしれっとボケを挟んでくる。 ・楓ユウサク 明るく無邪気で、人懐っこい性格。 周りの変化によく気付く、FiVE DrinKのムードメーカー。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKのマネージャー。 面倒見が良く、メンバーを支える姉御肌。 青山とは中学時代からの同級生で、元恋人。 ・吉川 木田の後輩マネージャー。 木田をサポートしながら、FiVE DrinKの現場を支えている。 ・堀越サチ(ほりこしサチ) 青山の後輩車掌。 FiVE DrinKの大ファンで、推しはワタルとジン。 東京FINALを楽しみにしている。 ━━━━━━━━━━━━━━ ――5月6日 FiVE DrinK 全国ツアー 5箇所目 東京公演 2days 2日目 ツアーFINAL 当日 昨日から響の家にいる青山。 響はリハーサルの為、 早めに家を出ていった。 いつものように、 ゴミ箱チェックから始まり、 リビングの掃除をしていた時―― ブルッ 青山(響からかな?なんだろ? 忘れ物?) LINEを開くと、堀越からだった。 堀越〈FiVE DrinKの 東京ファイナル楽しんできまーす! 先輩も来たら良かったのに。〉 と、写メ付きのメッセージ。 青山(あ〜。行くって言ってたなぁ。 チケット買ってねぇし。 行こうと思った時には、 もうチケットSOLD OUTやったし。) 青山〈買おうと思った時には、 チケットSOLD OUTやったから行けない。 オレの分も楽しんで!〉 と送った。 スマホをポケットに しまおうとした瞬間……。 ブルブルブルブルブル 青山「ビックリした〜。」 青山(ん?? 電話?? アスカ?) 青山「もしもし?」 木田「今どこ?」 青山「響ん家だけど?」 木田「今日、ひま?」 青山「ま……、まぁ……。」 木田「今日何の日か、知ってるわよね?」 青山「オレの誕生日?」 ツーッ、ツーッ、ツーッ…… 青山「やっべぇ!」 タッタッタッタッ 木田「何?」 青山「すいません。 FiVE DrinKの東京FINALの日です……」 木田「分かってんじゃん。」 青山「そりゃね。」 木田「来ないの?」 青山「チケットねぇーし。」 木田「買わなかったの?!」 青山「買おうと思った時には、 既にSOLD OUTやったんですぅ。」 木田「チケットある。ってなったら?」 青山「行くかな……。」 木田「じゃぁ、迎えに行くから待ってて。 45分後に着くから。」 青山「え……?」 木田「FiVE DrinKのLIVEに行くの!」 青山「チケットは?!」 木田「私を誰だと思ってるのよ?! FiVE DrinKのマネージャーよ!!」 青山「あ、そうでした……。」 木田「そうそう。 あと、この事は、みんな知らないから。」 青山「お前は、悪魔か……。」 木田「小悪魔♡、と呼んでちょうだい♡」 青山「切るね。」 ピロンッ 木田「あんのやろぉ〜。フッ……。」 怒りつつも、 微笑を浮かべる木田。 やっぱりこの女は、 悪魔だったようだ……。 ――50分後 青山がマンションの前で待っていると、 一台の黒いワゴン車が目の前で止まった。 後部のスライドドアが自動で開く。 ウィーーン カチ 奥にいたのは、そう……悪魔。 いや、木田だった。 木田「お待たせ!」 青山は、チラチラと周囲を見回し、 恐る恐る乗り込んだ。 ウィーーン カチ 青山「イカついマネージャーやなぁ。」 木田「誰が?」 チケットをヒラヒラさせる木田。 青山「さーせん。」 木田「吉川くんお願いします。」 吉川「青山さん! 初めまして。 木田さんの後輩で吉川といいます。」 青山「初めまして。青山です。 なんか、すいません。悪魔が……」 ドンッ。 肘で青山の脇腹を突く木田。 青山「痛っ……!」 青山「……いや、木田が。 いつもお世話になってます。 よろしくお願いします。」 ━━━━━━━━━━━━━━━ ――FiVE DrinK 東京公演控室 ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ FiVE DrinK 様 ﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌ コンコンッ スタッフ「失礼します。 先程、開場しました。 本番まであと1時間です。」 全員「ありがとうございます!」 響「はぁ〜……。」 溜息をつく響。 楓「ひびきー、元気ないねー。」 響「だって東京FINALだよー。 コウタくんに来て欲しかったぁ。」 黒川「それな……。」 スマホの写真ライブラリにある 青山の車掌姿を、じっと見続けている黒川。 緑川「黒川もか……。」 押部「チケットないんだから しょうがないじゃん。」 楓「どうにかなんないのー!」 押部「さすがにこればっかりは……。」 全員「はぁ〜……。」 青山に来て欲しかった気持ちは、 全員一緒だった。 黒川「ねぇ、木田さんは?」 響「そういえば、いないねぇー。」 楓「コウタくんを、 迎えに行ってるんじゃない?」 緑川「有り得る……。」 押部「アノ人たまに、 エゲツない行動力発揮する事 あるもんねーー。」 押部「ま、ウジウジ考えても仕方ないし、 FINALぶちかまそうぜ!!」 響、黒川、楓、緑川「はーーーい。」 覇気のない返事をする4人。 楓「あ! てか、 今日、カメラ入るんじゃなかった?」 響「うーん。入るね。」 だからなんだよ。 という悪態。 黒川「あ……。」 楓「ジンくん気付いた?」 響「どしたのー??」 黒川「カメラが入る……。てことは? コウタくんに見てもらえる。」 押部「それな!」 緑川「これは?!」 押部「カメラの向こうに コウタくんがいると 思えば良いんだよ!」 響「よっしゃー! やったるか!!」 急に立ち上がり、 拳を突き上げる響。 押部「意外とチョロかったな……。」 楓と押部は見合ってニヤついた。 ――開演30分前 コンコンッ 木田「ただいまぁ〜。あっ……。」 押部「おかえりなさーい。 どこか行ってたんですか〜?」 木田「ちょっと忘れ物があってね。 事務所に取りに行ってたのよ。」 緑川「忘れ物?? 木田さんが??」 響「コウタくん?」 木田「え?! どこ?! どこ??」 黒川「いる訳ないじゃん……。」 木田「ビックリするじゃない!」 楓「なんで木田さんが〜〜?」 木田「コウちゃんが来たら、 ここにいる全員 ビックリするでしょ!?」 楓「ま、そうだけど〜。 なんか隠し事してない?」 木田「隠し事??」 楓「コウタくんが来てるとか〜?」 木田「アノ人、チケット持ってるの??」 響「持ってなーい。」 黒川「木田さんこそ、 1席分のチケットとか 持って無かったんですか? それか、関係者席とか……。」 木田「さすがに……、ね……。」 木田「ていうか、そんなに 青山くんに来て欲しいの?」 響「当たり前じゃん! FINALだよ! オレだって、 カッコイイとこ見せたいもん……。」 黒川「オレだって……。」 押部「オレも……。」 楓「オレも……。」 緑川「あんなの見せられた後じゃねぇ……。」 青山の仕事姿が、 めちゃくちゃカッコよく、 今まで見た誰よりも輝いて見えた。 と同時に、 自分の、自分達の、 カッコイイ姿、 輝いてる姿を見てもらいたい。 全員が同じ思いだった。 木田「じゃぁ、カメラの向こうに 青山くんがいると思ってやってみない? 私がお願いして 特別に編集した動画を 青山くんだけに送るから。」 全員「え?……」 木田「みんなで、 めちゃくちゃカッコイイ所見せつけて、 コウちゃんを、堕♡と♡そ♡」 悪魔が笑顔でウインクした。 目がキラキラ輝く5人。 すると、 さっきまでわちゃわちゃしてた 5人が散らばり、 各自振り付けの練習をしだした。 木田(コウちゃんの威力、凄っ……。) 木田はスマホを取り出し、 青山にLINEをした。 タッタッタッタッタッタッタ 木田〈みんな張り切ってるから、 ちゃんと見てあげてね。〉 青山〈分かってるよ。 ていうか、オレ、この席で合ってる??〉 木田〈もちろん♡〉 ━━━━━━━━━━━━━━━ 明るい場内が少しずつ暗くなる。 ザワザワしていた場内が 一気に静まり返る。 ステージの奥に FiVE DrinKのロゴが浮かび上がる。 イントロが流れ始めた瞬間―― 「キャーーーー!!」 会場全体から女子の歓声が響き渡り、 5色のペンライトが乱舞する。 バシューーーン!!! 銀テープの号砲と共に 床下から飛び出るメンバー。 青山(スゲェ……。カッコイイ……。) 「キャーーーー!! ワタル〜〜!!」 「ジンくーーーん!!」 「リョーターーー!!」 「ユウサクーー!!」 「コウヘーーーイ!!」 全方位から推しの名前叫ぶ女子達。 響のメンバーカラーである ピンクのペンライトが 会場の大半を埋め尽くし、 歓声と共に響の名前を叫ぶ女子達。 1曲目から観客の心を鷲掴み、 そのままの勢いで 2曲目、3曲目と続き、 4曲目でダンスナンバー。 黒川と楓の見事なコンビネーションに 押部、緑川のアクロバティックなダンス。 そして真ん中でマイクを握る響。 青山も見ていて テンションが上がってくる。 いつの間にか、 木田から渡されていた ピンクと紫のペンライトを 周りと同じように振ったり、 タオルを振り回したりしていた。 4曲目が終わりMCに入ると、 さっきまでのカッコ良さとは裏腹に、 いつも見ている FiVE DrinKのメンバーがいて、 青山の顔も綻ぶ。 5曲目に入ると、 アイドルらしいキラキラした 明るい曲が始まり、 会場全体も5色のペンライトで キラキラ輝いていた。 6曲目は、 押部と黒川がメインの激しい曲。 7曲目は、 響、楓、緑川の しっとりした曲が続いた。 8曲目が始まる前、 場内が真っ暗になった。 静かになった場内。 ステージ奥の画面に 映像が流れ始めた。 砂浜で寄り添い座る二人。 二人の前の砂浜には、 ”ずっと一緒” と書かれていた。 そう、FiVE DrinKの新曲が ”ずっと一緒” だった。 FiVE DrinKは、 この日の為にMVは出していなかった。 初披露のMVに観客全員が 一言も発すること無く見入る。 緩やかなイントロが流れ、 MVの前で響が歌い出した。 ゆっくりした曲は、 一人ずつメンバーのパートが加わり、 徐々に曲の雰囲気が変わっていく。 青山がふと隣を見てみると、 何故か動画撮影用のカメラが来ていた。 青山(なんかの撮影なのかな? あ……、LIVE映像の撮影か……。) そう思っている内に 曲はどんどん進み、 響がステージの先端へ ゆっくり歩み寄ってきた。 そして、屈んだと思ったら、 カメラと青山の方を狙って―― 響「オレのこと好きだよね?」 と、歌詞にある一言を呟いた瞬間、 ニヤッとし、 クルッと後ろを向き ステージに戻る響。 『キャーーーーーーー!!!』 この日一番の歓声があがる。 だが、青山だけは違った。 身体に電気が走り、動けない。 音も全く聞こえない。 唯一分かるのは、 ”オレに向かって言った。” ということだけだった。 ドキドキする。 身体の中が熱くなる。 そして心の中で、 こう答えていた。 (はい……。) 響は、 カメラが 観客席前方にいることは分かっていた。 そこ目掛けてカッコ良くキメて、 ニヤッとすればいいことを。 そして、 ステージの先端で屈み、 カメラ目掛けて指を差した瞬間……。 (コウタくん……?) 響「オレのこと好きだよね?」 ニヤッとし、 後ろを向く響。 ステージに戻る響の顔は、 観客からは見えていない。 だが、他のメンバーは、 響の異変に気付いていた。 真顔で顔を真っ赤にして 戻ってきたからだ。 そして響は、 口パクで、 ”カメラ” とメンバーに伝えた。 メンバーは、 (カメラ??) と、 響が何の事を言っているのか 分からないまま曲は進む。 そして今度は、 黒川がステージの先端で屈み、 カメラに向かって 歌詞にある一言を呟くターン……。 黒川(カメラってなんだよ。) 黒川「オレも好き……。」 『キャーーーーーーー!!』 (え……?) 黒川はクールに決めて、 クルッと後ろを向き、 ステージに戻る。 今度は黒川が顔を真っ赤にし、 恥ずかしい思いでもしたのか、 下を向き戻ってくる。 顔を少し上げ、 残りのメンバーに口パクで ”コウタ” と伝える黒川。 響のパートで 心を鷲掴みにされて間もないのに、 今度は黒川に心を触れられた。 (そうだったんだ……。 ジンくん。ありがとう。 なんだろう? この感情。 二人のことが凄く愛おしい。) 木田は最初からモニターで メンバーの顔をずっと追っていた。 そして、呟いた。 木田「やっと気付いたか……。 世話がやける子達ねぇ……。 ここからが本番よ。 さぁ……みんな、 コウちゃんを堕としてね……。」 そう言い、 持っているタオルを握り締める木田。 押部、楓、緑川は、 黒川の”コウタ”という 口パクに頭の中で困惑しながらも、 精一杯歌い、そして踊った。 ラストは、 メンバー5人が ステージ先端で呟いて終わる。 5人が揃い、 左から響、緑川、黒川、押部、楓。 響が左端で単独パートを歌う。 4人はマイクを離し、 円を描くようにダンスをする。 そこで黒川は、 「カメラの横にコウタくんいる! 木田がまた、やりやがった!」 と、 残りのメンバーに伝えた。 すると残りのメンバーは笑い、 楓が一言。 「みんなで堕としにいくよ♡」 円が解け、 黒川が響に歩み寄る。 今度は、 押部、楓、緑川のパート。 そしてその横で、 響と黒川がマイクを離し、 円を描くようにダンスをする。 ここで黒川は響に、 「オレも気付いた。 みんなには伝えた。 だから、全員で堕とすよ。」 と伝えた。 響は、 「OK」 と一言だけ返し、 円が解けて 5人が再度横並びになった。 5人は揃って、 ステージ先端へと歩み寄る。 全員が一緒に呟くパートに差し掛かった。 そして全員、 青山一点を狙い―― 「もう、離さないから……。」 『キャーーーーーーーーーー!!!』 全員(決まった……。) 全員が満足気な表情を浮かべ、 観客席に背を向け、 ゆっくりと歩き散らばる。 そして、 緩やかに曲が終わった。 曲が終わり、 観客席の方を見る5人。 響は、 最高の笑顔を届ける為に 青山の方を見るが……。 青山は……。 何故か、 下を向いていた……。

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