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第8話 余韻
【登場人物】
・青山コウタ(あおやまコウタ)
鉄道会社の車掌。
優しく世話好きで、自然と人が集まってくるタイプ。
初めて見たFiVE DrinKのLIVEに、強い衝撃を受ける。
《FiVE DrinK》
・響ワタル(ひびきワタル)
人付き合いが苦手で、繊細な性格。
青山にはすっかり心を許し、素直に甘えることも増えてきた。
・黒川ジン(くろかわジン)
クールでぶっきらぼうだが、実は周囲をよく見ている。
青山にもすっかり懐き、以前より距離が近くなっている。
・押部リョウタ
とにかく笑い上戸。
メンバーのボケや言動にツボってしまうことが多い。
賑やかな場では率先して盛り上がるタイプ。
・緑川コウヘイ
マイペースで、天然気質。
真顔でしれっとボケを挟んでくる。
・楓ユウサク
明るく無邪気で、人懐っこい性格。
周りの変化によく気付き、思い立ったらすぐ行動する。
・木田アスカ(きだアスカ)
FiVE DrinKのマネージャー。
面倒見が良く、メンバーを支える姉御肌。
青山とは中学時代からの同級生で、元恋人。
・吉川
木田の後輩マネージャー。
木田をサポートしながら、FiVE DrinKの現場を支えている。
・堀越サチ(ほりこしサチ)
青山の後輩車掌。
FiVE DrinKの大ファンで、推しはワタルとジン。
東京FINALに参加し、思いがけず青山と合流する。
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押部「みんな今日はありがとう!!」
緑川「みんな明日も来るよな?!」
黒川「今日がファイナルだよ!」
楓「もしかして??」
響「もしかしてとかないから。」
全員「ありがとう!!!」
5人が手を振りながらステージを後にする。
響だけ、
ある一点に向かって投げキッスをしたが、
黒川に連れられ奥へ消えて行った。
FiVE DrinK 全国ツアー 東京FINAL 終演
会場が明るくなり、
周りの女子達は座って
思い思いに推しの良かった所を
語り合ったり、帰り支度をしていた。
動けず呆然とする青山。
交錯する照明。
心臓まで届いた音。
激しくもキレッキレのダンス。
その中にも、
優しくしなやかな身体の動き。
メンバー全員が
一人一人キラキラ輝いていた光景が、
頭から離れない。
LIVEの魔法は、
スマホの振動で解けた。
ブルッ
LIVEの余韻が身体から抜け切れず、
ゆっくりとスマホを取り出し
LINEを開いた。
堀越〈今LIVE終わりました!
めっちゃヤバかったですよ!
ワタルくんとジンくん
めっちゃカッコ良かった!!
青山さんも来たら良かったのに!〉
堀越からのLINEだった。
青山は、何も考えず返信した。
青山〈見た。〉
堀越〈何をですか?〉
青山〈LIVE〉
ブルブルブルブルブル
”音声通話” 堀越
青山「もしもし?」
堀越「今のどういう事ですか?!」
青山「え? どういう事って……。
今、会場にいる。」
堀越「え?! どこ?!
どこにいるんですか? 席番は?」
青山「待って……。えっと……。」
財布からチケットを取り出し、
堀越に伝える青山。
青山「Aブロック……、
1列目……12番……。」
堀越「え? 最前?!
ちょっと待ってて下さい!」
ピロンッ
――3分後
堀越「青山さん!」
堀越に肩を叩かれるまで、
放心状態で全く動けなかった。
堀越「なんでいるんですか?
チケット持ってない。って。」
青山「FiVE DrinKの
マネージャーが知り合いでね。
それで連れて来られた。」
堀越「はぁ? マネージャーと知り合い?
その話、初耳なんですけど?!」
青山「あ……。そうだったっけ?」
堀越「ワタルくんといい、
マネージャーといい、
FiVE DrinKと
ズブズブな関係じゃないですか!」
青山「言い方……。」
堀越「そのペンライトとタオル、
いつの間に買ったんですか?」
青山「あ……。これも、
そのマネージャーさんが
用意してくれて。」
堀越「さすがマネージャー。
席もさることながら、グッズも完璧。」
青山「あぁ……。」
と話をしていると、
木田がやって来た。
木田「コウちゃん! どうだった?
あれ? こちらの方は??」
青山「会社の後輩。」
青山「堀越、こちらが、
FiVE DrinKマネージャーの木田さん。」
木田「初めまして。木田と申します。」
堀越「初めまして。堀越です。」
木田「あら。良いセンスしてるわね!」
堀越「え?!」
木田「響と黒川が推しなのね。」
堀越「はい! そうなんです!」
木田「ありがとう。」
堀越「はい!」
木田「そしたら〜。
せっかくだから、堀越さんも来る?」
堀越「え? 来る?どこにですか??」
木田「いいところ♡」
青山と堀越は木田に連れられ、
廊下の奥へ通される。
- STAFF ONLY -
木田は、スタッフに通行証を見せ、
その奥へ通される。
辿り着いた先は、
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FiVE DrinK様
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と書かれた一室であった。
木田はノックをし、扉を開く。
そこには、
テンションが上がったままの5人がいた。
木田「お疲れさまー。
お客様を連れて来たわよ!」
5人「お疲れ様でーす。」
メンバー全員が一斉に振り返る。
一瞬、室内は静かになり、
メンバー全員が
誰かに気付き走り寄ってきた。
群を抜いて響が青山に抱きつく!
青山は、為す術もなく棒立ち状態。
黒川が一歩遅れ、
間に合わず立ち竦む。
でも、彼は笑顔だった。
響「コウタくん来てくれてありがとう♡」
堀越(え? 何? これどういう状況?
ワタル君が……青山さんに
抱き……付いて……る?
で、今……、コウ……タくん……って?
え? どういうこと??)
青山「あ……。うん……。」
響「どうしたの??」
黒川「ひびき……。今は……。」
そう言って、
響の肩を叩いた。
そして、
楓が誰かに気付いた。
楓「あれ? 後ろにいる女子って……。
堀越ちゃんじゃない?」
駅のホームでも
緊張していた堀越だが、
流石にバッチバチに
キメてるアイドルを前にすると、
身体が硬直しガチガチに緊張していた。
押部・緑川「堀越ちゃんじゃん!」
押部と緑川が堀越に駆け寄る。
木田「え? 何?みんな知り合い??」
木田が唖然とし、
これどういう状況?
みたいな顔をしていた。
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堀越には、
青山と木田がどういう関係だったかを。
木田には、
FiVE DrinKと堀越が
何故、顔見知りなのかを。
ジュースを飲みながら、
みんなで談笑していた。
コンコンッ
会場スタッフ「すいません。
そろそろお時間なので、
片付けの方、よろしくお願いします。」
全員で時計を見る。
20時30分。
FiVE DrinKが使えるのは
21時00分まで。
木田とFiVE DrinKのメンバーは、
叫び、慌てふためいた。
木田「続きは、どっか
お店貸し切って打ち上げする?」
黒川「今から、
貸切とか出来るんすか?」
と、冷静に返す黒川。
楓「ボク良いところ知ってるよー。」
木田「じゃあ、そこで良いわ。」
堀越「じゃぁ、
私はここで失礼します。」
木田「あなたも来るのよ?」
堀越「良いん……ですか……?」
木田「ここまで来たら、帰さないわよ♡」
会場の地下駐車場には、
2台の黒いワゴン車が
用意されていた。
1台は木田が、
もう1台は吉川が運転して、
楓が知っていると
言っていた所へ行く事になった。
木田の運転する車には、
楓・響・青山・黒川・堀越が。
吉川の運転する車には、
押部・緑川が乗ることになった。
楓は木田を誘導しつつ、
スマホをずっと触っている。
木田と堀越には口頭だが、
メンバーや青山には、
LINEで、
〈何か食べたいものある?〉
と質問を投げかけていた。
淡々とスマホを操作する楓。
そして、
「そこで止まって。」
と指を差した。
止まった場所。
楓が、
「良いところ知ってるよー。」
と言った場所。
それは……。
響のマンションだった。
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――木田の車の中
木田「ここはー……。」
堀越以外「え……?住宅街??」
響・青山「どういうこと?」
黒川「おまえ、やったな。」
堀越「????」
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――吉川の車の中
吉川「止まりましたねぇ。」
押部「楓のヤツやったな。」
緑川「響、怒ってるだろうなぁ。」
吉川「木田さんの車……。
なんか……、
めっちゃ揺れてるんですけど……。」
押部「楓、響にボコられてるんじゃね?」
緑川「意外と響、怒ると怖いもんね……。」
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――木田の車の中
響・青山「ウソでしょぉぉぉ!!」
楓「だって、どこも無理だもん。」
響「オレん家も無理だけど……。」
堀越「オレん家……?って、
え?! ここワタル君ん家?!
え?! 無理、無理、無理、無理!」
木田「今から、
別の所を探すって言ってもねー。」
楓「あ! Uber来たよ!」
ガチャ
車のドアを開け、
配達員に声を掛ける楓。
楓「ここでーす!」
青山「みんなに
食べたい物聞いてたの、コレだったんだね。
って言うことは……、
これから……どんどん届く。
……ってことじゃない?」
響「終わった……。」
頭を抱える響。
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――響の家【リビング】
響と堀越以外「かんぱーい!!」
響「かんぱい。」
堀越「か……かんぱー……い……。」
響「ねぇ楓、
コレは一体どういうこと?」
Uberで頼んだ料理が
積み上げられたテーブル。
楓「みんなの好きなの聞いてたら、
こうなっちゃったみたい♡」
木田「お金は、
会社が出すから問題ないわよ。」
響「食べ切れるのか?!って聞いてるの!」
押部・緑川「はーい!
大食い担当ここにいまーす♡」
青山「堀越、大丈夫??」
堀越「大丈夫な訳ないでしょ。
推しの家ですよ。しかも隣は、ジンくん。」
堀越(青山先輩♡とジンくん♡に挟まれて、
尚且つ、ワタルくんの家♡
わたし……、明日、死ぬのかなぁ……?)
顔をほのかに赤らめ、ボーっとする堀越。
黒川「堀越さん、何食べる?
取ってあげるよ。」
堀越(えー?♡ ジンくん、
プライベートでは、そんな感じなんだー♡)
堀越「なんでも良いです♡」
楓「堀越ちゃんのリクエストの
焼き鳥その下だよー!」
堀越以外「え?」
全員の視線が楓に突き刺さる。
静まり返るリビング。
堀越(あのヤロゥ……。
デリカシーねぇなぁー。)
黒川「渋っ。オレも貰って良い?」
堀越「良いですよ、どうぞ、どうぞ!」
吉川「あのー……。
わ、私も混ぜて貰ってて
良いんでしょうかぁ?」
吉川以外、ニヤリとして、
「いぃよぉ〜〜♡」
吉川(今すぐ帰りたい…………。)
響「ねぇ! コウタくん、
いつの間にチケット買ってたの?
オレには、チケットの話とか、
LIVEに行く話とか、
なんにも言わなかったよね??」
青山「アスカがくれたよ。」
木田、吉川、青山以外
「やっぱり〜……。」
響「なんかおかしかったんだよねー。
途中でいきなり居なくなって。」
楓「デッカい忘れ物
取りに行ってたんだねー。」
押部「アノ人、チケット買ったの〜?
って白々しい……。」
緑川「全ては木田マネの手の内。
だったって事ね。」
黒川「凄い通り越して怖い。」
堀越「ねぇ、ジンくん。
こんな事、ここでジンくんに
聞いて良いか分かんないんだけど。」
黒川に小声で話しかける堀越。
黒川「ん?」
堀越「青山さんと、ワタルくんって、
付き合ってるの?」
黒川「…………。」
堀越「そか…………。」
黒川「付き合ってはない。みたいよ。
でも、ワタルは、
『コウタくんと結婚したい。』
って言ってた。」
堀越「けっ……!?」
慌てて両手で口を塞ぐ堀越。
手を離し、少し落ち込んだ声で、
堀越「そうなんだ……。」
黒川「堀越ちゃんも、
コウタくんのこと好きなんだ。」
堀越「え?!」
黒川「分かるよ。オレも好きだから。
でも、ワタルみたいに積極的に行けないし、
もうワタルに取られた後だしね。
堀越さんは、コウタくんのどこが好き?」
堀越「優しい所……。
1年前にね、私が仕事の準備してる時に、
『おはよ! 堀越!! 何してるん?
もう仕事終わり?』って、
突然話し掛けて来てくれて……。
それまで3ヶ月くらいずっと職場に馴染めず、
ほぼ誰とも話したことなくて。
私の事なんて誰も知らないんだろうなぁ。
居ても居なくても一緒。
って思ってたりもしてて。
でも、青山さんは、初対面なのに
名前も知っててくれて。
私が、
『おはようございます。
今から仕事です……。』
って言うと、
『知ってる』って、笑いながら言うんですよ。
あの笑顔は反則ですよ。
それに、こんな私を見てくれてるんだ。
知ってくれてるんだ。
と思ったら嬉しくて。
それで勇気を出して、
その日の作業の不安な所を聞いたら、
凄い真剣な顔して手順書を見てて、
顔をあげた瞬間、笑顔に戻って、
『あー、ここね!
オレも最初不安やったから分かるわぁー。』
って。
その後も凄く分かりやすく説明もしてくれて。
最初の方は、
青山さんから話しかけてきて、話す。
って感じだったんですけど、
いつの間にか私からも話に行くようになって。
青山さんと話した事で、色んな先輩達から、
話しかけられるようになって。
私にも、居場所が出来た。
今の職場で居られるのは、
青山さんのおかげ。」
黒川「あの人の笑顔ってホント反則だよね。
名前を知っていてくれた嬉しさ分かるなぁ。
オレってこんな感じだから、
結構、怖い人、近寄り難い人って
誤解される事が多くて、
人があんまり近寄らないんだよね。
話しかけても、
何?って目で見られるし。
でも、コウタくんは違って。
オレへのフィルター0で話してくれる。
聞いてくれる。
そして、受け入れてくれる。
あと、声めっちゃ良いよね。
この前、みんなで
電車乗りに行ったじゃん。
それでコウタくんの放送聞いた時、
制服姿のカッコ良さも相まって
ドキッ♡ってして、
オレ電車降りるまで、放心状態だったもん。」
堀越「そう! 声も良いんですよ!そか……。今日、LIVEの最後にワタルくんの
暴走止めたのは、
青山さんのこと分かってたんですね。」
黒川「楽屋に入ってきたコウタくんを見て、
オレがコウタくんの車掌してる姿に衝撃を受けた時と同じように、
アイドルとしてのワタルや
オレ達を見て衝撃を受けてくれて
放心状態になったんじゃないか。
それだったら、ここは、
余韻に浸らせるべきなんじゃないかなぁ。
って思って。
あと、LIVEで最後に響がした投げキッス。
あれ、予定には無かったから。
いきなり投げキッスしだして焦ったよ。
多分、勢い余ってコウタくんに向けて
したんだとは思うけど。」
堀越「それ、ナイス判断でした。
あれ、そうだったんですね。
私も、ファンも誰も気付いてませんよ。」
黒川「オレは、
コウタくんも、ワタルも好き。」
堀越「私も、
青山さんも、ワタル君も好き。」
黒川「一緒だね。」
堀越「一緒ですね。」
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