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第9話 共有
【登場人物】
・青山コウタ(あおやまコウタ)
鉄道会社の車掌。
裏表のない優しさで、気付かないうちに周囲の人の居場所を作っている。
響のことを大切に想っているが、自分の気持ちと二人のこれからについて、まだ答えを出せずにいる。
《FiVE DrinK》
・響ワタル(ひびきワタル)
FiVE DrinKのメンバー。
人付き合いが苦手で繊細だが、青山にはすっかり心を許している。
青山への想いは強く、「結婚したい」と黒川に打ち明けるほど本気で惹かれている。
・黒川ジン(くろかわジン)
クールでぶっきらぼうだが、実は誰よりも周囲をよく見ている。
青山に特別な感情を抱きながらも、響の幸せを一番に願っている。
青山、響との距離も近くなり、二人を見守る存在になりつつある。
・押部リョウタ
とにかく笑い上戸で、場を明るくするタイプ。
FiVE DrinKのメンバーと青山との距離が縮まってからは、青山とも自然に接するようになった。
・緑川コウヘイ
マイペースで天然気質。
真顔でしれっとボケを挟みながら、FiVE DrinKの空気を和ませている。
・楓ユウサク
明るく無邪気で、人懐っこい性格。
思い立ったらすぐ行動するタイプで、東京FINAL後には響の家を打ち上げ会場にしてしまった。
・木田アスカ(きだアスカ)
FiVE DrinKのマネージャー。
青山とは中学時代からの同級生で、三年前まで付き合っていた元恋人。
青山の優しさも弱さも知る人物で、現在は響と青山の関係を見守っている。
・吉川
木田の後輩マネージャー。
木田をサポートしながら、FiVE DrinKの現場を支えている。
個性の強いメンバーや木田に振り回されることも多い。
・堀越サチ(ほりこしサチ)
青山の後輩車掌。
FiVE DrinKの大ファンで、推しは響と黒川。
職場に馴染めずにいた頃、自分を見つけて居場所を作ってくれた青山に特別な想いを抱いている。
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木田「私、そろそろ帰るけど。
堀越さんは、どうする?」
堀越「どうしようかなぁ……。」
押部「じゃぁ、オレも帰ろっかな。」
緑川「オレも。家で寝たい。」
吉川「帰りましょうかぁ……。」
木田「黒川はどうする?」
黒川「オレん家近いし、
最悪泊まるし、大丈夫っす。」
楓「オレも泊まろうかなぁ♡」
響・黒川「お前は帰れ!」
楓「コウタく〜ん!
この二人がボクのこと、
イジメる〜。ウワーン!」
青山「帰ろっか♡」
楓「はい……。」
木田「さぁ、片付けて帰る準備!」
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さっきまでの賑やかさと打って変わって
静まり返るリビング。
響「みんな、帰っちゃったね……。」
青山「寂しいの?」
響「ちょっとは……。」
青山「オレがいるのに??」
ドキッとして、顔を赤らめ下を向く響。
響「も、もぅー。」
黒川・堀越「まだ二人いるんすけどー。」
黒川「何?あの無自覚イケメン。
ちょっとムカついてきた。」
堀越「私も……」
青山・響「あ! ごめん!……。」
黒川「ねぇ、コウタくん。
オレ達のLIVEどうだった?」
青山「男性アイドルのLIVEって
初めて行ったんだけど、
めちゃくちゃ良かったよ。」
響「ホント?!」
青山「ホント。」
響「次も来てくれる?!」
青山「もちろん!
今度は、自分でチケット買って行く!」
響「ねぇ……。一つ聞いていい……?」
青山「何?」
響「”ずっと一緒”どうだった?」
青山「良い曲だった。
胸がキュ〜って締め付けられて、
ドキドキして、
恥ずかしくなって、
照れて、
そして涙が溢れてきて。
みんなには、
涙を見せちゃいけない。
と思って、
最後は下向いちゃったけどね。」
響「それで下向いてたんだ。」
黒川「最後の所で、
コウタくんが下を向いてた。
って響が言うから
みんなで心配してた。」
青山「ごめん。変な心配かけて。」
響「ねぇ、堕ちた?」
青山「うん……、堕ちた。」
それを聞いて、
ニヤつく響と黒川。
堀越「あ……。そういえば……。
ワタルくんとジンくんのパート、
アレ絶対、青山さんに向けて
言ってましたよね?!」
はて?
という顔をする響と黒川。
堀越「でも、あーでもしない限り
青山さんには、届かないかも。
ですもんね。」
三人の目線が青山に注がれる。
目を逸らし、
下を向く青山。
黒川「ねぇ、コウタくん。
そこのグラス洗うから取って。」
青山「あ、うん。」
グラスを渡そうとした時、
青山と黒川の手が触れた。
パリンッ
青山「あ! ごめん!」
黒川「コウタくん大丈夫?」
響「どうしたの?」
堀越「どうしたんですか?」
青山「グ……グラス落としちゃった。」
床に散らばった
グラスの破片を拾う青山。
青山「痛っ!」
黒川「どうしたの?
ねぇ、手見せて。」
響「え?!」
堀越「今度はなんですか?」
青山「指、切っちゃった……。」
黒川「ひびき! 絆創膏ある?」
響「あるよー。
はい! 患者さんはこちらですよー。」
黒川「呼んでるよ。」
青山「ごめん。」
堀越「私も……、切ろうかなぁ。」
黒川「何言ってんの?」
堀越「ですよねぇ。」
黒川「もし切ったら、
オレが手当するから……。」
堀越「……。」
顔を赤らめ、
下を向く堀越。
響「何してんの? もう。」
絆創膏を貼ってくれる響。
手が震えている青山。
絆創膏を貼り終わり、
響は青山の手を
ゆっくり両手で包み込む。
響「……手震えてるね……。」
青山「……ごめん。
LIVE観てから、ずっとドキドキしてて。
それからずっと手が震えてて。
まだ、止まらないんだよね。」
響「来てくれて嬉しかった。
コウタくんのおかげで、
最高のFINALになったよ。」
青山「なら、良かった。」
響「コウタくん……。オレ……」
青山の目を見つめて、
何かを言おうとした時――
黒川「ひびきー、コウタくん大丈夫そ?」
響「……震えがある。」
黒川「え? ちょっと貸して。」
響に代わって、
手を握る黒川。
黒川「コウタくん大丈夫だよ。」
頭を付け、
念を込める黒川。
黒川「落ち着いて。大丈夫……。」
青山「ありがとう。」
片付けも終わり、
ゆっくり過ごす四人。
眠そうな堀越。
黒川「堀越ちゃん大丈夫?」
堀越「うん。」
黒川「ベッドで寝な。
オレのじゃないけど。
ひびきー、良いよねー?」
響「堀越ちゃんが嫌じゃなければ。」
黒川「良かったね。
推しのベッドで寝れて。」
堀越「ありがとう……。
もうそんなんどうでもいい。
眠たい……。」
黒川「おいで。」
堀越「うん。」
堀越を寝室へ案内する黒川。
響「ジンくーん!
ついでに毛布持ってきてー。」
黒川「わかったー。」
堀越をベッドに寝かし、
毛布を持って戻ってくる黒川。
ソファにもたれ、
毛布を膝にかけ、
並んで座る三人。
静かに、
ゆっくりと時間が過ぎていく。
青山が口を開いた。
青山「二人に出会えて良かった。
ワタル、ジンくん、ありがとう。」
青山「でも、どうしたら良いか
まだ分からなくて。」
響「ゆっくりで良いよ。」
黒川「想いは伝わった?」
青山「伝わった。
だから、今、真剣に考えてる。」
黒川「伝わったなら
オレはそれで良いかな。
オレよりも響のこと、
ちゃんと考えて欲しい。」
青山「ジンくんは、
ワタルの幸せを願ってるんだもんね。」
黒川「……。」
響「そうなの?」
黒川「……うん……。」
青山「一番、真剣に考えてるから。
大丈夫だよ。ジンくん。」
黒川「わかった……。」
青山「ワタル、もうちょっと待ってね。
答えは必ず出すから。」
響「答えより……、
一緒にいる時間がたくさん欲しい。」
青山「わかった。
それも含めて一緒に考えよ。」
響「うん。」
黒川「良かったな。ワタル。」
響「……。」
黒川に頭を撫でられ、
照れくさそうにする響。
3人はそのまま、
仲良く眠りについた。
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――翌朝
カーテンの隙間から射し込む朝陽が
黒川の顔を照らす。
黒川「う、う……ん。」
目を擦り、
ゆっくり背伸びをする黒川。
横を見ると、
青山と響が互いにもたれかかり、
手を繋いで寝ていた。
黒川「二人とも可愛いなぁ……。」
パシャッ
写メを撮り、
それを見て笑顔が零れる黒川。
黒川(これで良いんだ。)
ゆっくりと寝室のドアが開く。
堀越が、
そ〜っと寝室から出てきた。
黒川「おはよう。」
青山、響を起こすまいと、
小声で堀越に挨拶をする。
堀越「おはようございます。」
堀越も小声で返す。
堀越「二人とも可愛い。お似合いですね!」
黒川「オレも同じ事思ってた。
あまりにも可愛いから写メ撮った。」
写メを堀越に見せる黒川。
堀越「何コレ?私にも下さい!」
黒川「良いよ。二人だけの秘密な。」
堀越「はい!」
お互い微笑み、
静かにリビングから離れた。
黒川「ねぇ、堀越ちゃん、
これからどうする?」
堀越「私は、明日仕事なんで
今日中に帰ります。」
黒川「そうなんだ。
じゃぁ、駅まで送ろうか?」
堀越「そう……ですね。
ここが何処かも
分からないですしね。
お願いします。」
堀越「声掛けなくて良いですかねぇ?」
黒川「疲れてるだろうし、
二人はそのままにしてあげよ。」
堀越「はい!」
二人は小声で話しながら、
そっと玄関へ向かった。
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――時は過ぎ6月
晴れ間が少なく、
蒸し暑い梅雨。
この日、
木田は響に付き添い、
ドラマのオーディションに
参加していた。
待合室でオーディションの
終わりを待つ木田。
響「オーディション終わったよ。」
木田「お疲れ様。早かったわね。」
響「4つくらい台詞言って終わった。」
木田「ふーん。」
響「どしたの?」
木田「なんもない。
今日はこれで終わりだから、
ちょっとドライブにでも行かない?」
響「そうなんだ。
え?! ドライブ?!
行きたい! 行きたい!」
響を助手席に乗せ、
車を走らせる木田。
響「どこ行くの?」
木田「オーディション頑張ったし、
気分転換に、海にでも行く?」
響「海?! めっちゃ行きたい!!」
木田「ご褒美ね!」
響「やったぁ!!
ってか、やっぱ、なんか知ってるでしょ?」
木田「何を?」
響「オーディションのこと。」
木田「なんにも〜。」
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――1時間後
江ノ島の海岸
響「わぁ! 江ノ島やん!」
封印している関西弁が、
咄嗟に出た響。
木田「久しぶりに響の関西弁聞いた。」
笑う木田。
木田「はい! 到着!」
車を降りて、
海に向かって段々に続く階段に、
二人は並んで腰を下ろした。
響「少し晴れたね!
夏はもうすぐだね!」
木田「そうね。」
響「どうしたの?」
響に缶コーヒーを渡す木田。
木田「響、コウちゃんのこと
どう思ってる?」
缶コーヒーを受け取る響。
響「どう……って?」
木田「この先、どうしたいか。
どういう関係でいたいのかとか。」
響「オレは……、
コウタくんと結婚したい!!」
木田「え?」
響「そうなるよね。
ジンくんにもビックリされた。」
木田「結婚はさすがに……ね。」
響「ジンくんにも言われた。
なるなら、パートナーだよね。って」
木田「そ……そうね。」
響「それくらい好き。」
木田「本気なのね?」
響「うん。」
木田「ならば、相当の覚悟がいるわよ?
それは、分かってるわよね?」
響「うん。」
木田「一応言っとくけど、
スキャンダルはご法度。
コウちゃんとの関係が、
もし、表に出たら、
響だけが終わるんじゃない。
FiVE DrinKが終わる。」
響「うん。」
木田「そういうこと、
コウちゃんと一回でも話したの?」
響「まだ。」
木田「今度ゆっくり話してみたら?」
響「うん。」
木田「私は、
コウちゃんと響のこと応援してる。
黒川も押部も緑川も楓も
応援してくれると思う。
でも、周りはそうじゃない。
私とFiVE DrinKのメンバー以外知らないから。
どこにも漏れちゃダメな話。
あと、これは元カノとして話すわね。
私がコウちゃんと別れた理由。
コウちゃんって優しいじゃない?
私はその優しさに甘えてた。
甘え過ぎてたかも知れない。
でも、その優しさが
私にとって重荷になってきた。
その重荷に耐えきれず、
私はコウちゃんの元から去ったの。」
響「そうなんだ。」
木田「響には、
今、コウちゃんが必要なのは分かる。
でも、今後、
もし響が苦しめられないとも限らない。
コウちゃんの優しさが重荷に
ならないかなぁ。って思う。」
響「それは無いかなぁ。」
木田「なんで?」
響「コウタくん以外の人で
あんなに優しくされたことないから。
コウタくんを離しちゃうと、
本当に独りになりそうで……。
オレは、もう独りに苦しめられるのは嫌。
でも、それ以上に……
コウタくんと一緒にいたいって、
オレが選んだんだよ……。
やっと、
運命の人が現れたんだよ……。」
涙ぐむ響。
木田「響の気持ち、分かったわ。
コウちゃんと一緒に寄り添って生きていく。
パートナーになりたい。
それでいいわね?」
響「うん。」
木田「私が、あなた達を守るから。」
響「ホント?」
木田「私を誰だと思ってんのよ?
FiVE DrinKの敏腕マネージャーよ?」
響「おーーー。」
木田「マネージャーとして、
元カノとして、
いつでも相談に乗るから
いつでも頼って来てね。」
響「ありがとう。」
木田「さて、帰ろっかぁ。」
響「うん!」
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