11 / 22

第11話 無限で♡

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 鉄道会社の車掌。 響への想いを自覚し、二人のこれからを真剣に考えるようになった。 響と寄り添って生きていきたいという答えを出したが、アイドルである響を守るため、その関係には慎重になっている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) FiVE DrinKのメンバー。 人付き合いが苦手で繊細だが、青山にはすっかり心を許している。 青山と一緒にいる未来を望み、自分の意思で「コウタくんと一緒にいたい」と木田に伝えている。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 五反田駅で乗り換えるはずが、 響との今後のことを考えていて、 気付けば東京駅まで来てしまっていた。 『次は、東京、東京。 お出口は右側です。』 ハッと外の景色を見回す。 新幹線が並んで走っている。 (あ、やってしまった……。) 東京駅で電車を降り、 反対方面の電車へ乗り換える青山。 ブルッ 〈今どこー?〉 〈東京〉 〈え?〉 〈考え事してて、 気付いたら東京駅だった笑〉 〈車掌さんでも、そんなことあるんだー〉 〈あるある笑〉 〈今、電車乗ったから。 今度はちゃんと乗り換える。〉 〈お風呂沸かす?〉 〈お願い〉 〈おけー〉 (今日、響と話すか。) ブルッ 〈雨降ってきたけど傘あるのー?〉 〈ない〉 〈駅まで迎えに行くねー〉 〈わか……〉 わかった。と打とうとした時、 木田の言葉が思い浮かんだ。 「スキャンダルはご法度よ!」 〈大丈夫。 駅からタクシー乗るか、 コンビニで傘買う。〉 〈わかった〉 (本当は迎えに来て欲しい。 手を繋いで帰りたい。) それでも、 響との今後のことを考えて、 青山はその気持ちを飲み込んだ。 『次は、五反田、五反田。 お出口は右側です。』 (ヤバ、また降り損ねるとこやった……。) 五反田で電車を乗り換え、 響の家の近くの駅に着く青山。 ピピッ 【残高15,563円】 (まだ全然余裕だな。) 駅の改札を出ると、 やはり雨が降っていた。 (結構降ってるな。 ま、スグ風呂入るし ワンチャン濡れても……。) 駅の建物から一歩出ようとした時―― グッ (ん?) 腕を掴まれ、 前に進めない青山。 振り返ると…… キャップを深く被って、 マスクをした響が 腕を掴んでいた……。 (え……?) 「濡れて、また倒れられると困る……。」 「ワタ…… 多分、これくらいの雨なら 大丈夫だと思うけどなー……。」 「なんで迎え断ったの?」 「迎えに来て貰う程でも ないかなぁ……って……。」 「うそ。」 「え?」 「うそついてる。」 「う〜ん……。 帰ってから話すよ。」 「わかった。」 「とりあえず……帰ろっか……。」 傘を差し出す響。 「はい。」 「あ、ありがとう……。」 バサッ 傘を差し、 駅の建物から一歩出ようとした時―― グッ (ん?) 腕を掴まれ、 前に進めない青山。 振り返ると…… 響が腕を組んでいた……。 (え……?) 「なんで、 一人で傘さして帰ろうとしてるの?」 「え? ワタル……傘は?」 「この一本だけだよ。」 「一本……?」 「四本くらい欲しかった?」 「出来れば二本で……。」 「何それ? 一本で十分じゃん。」 「いや……、まぁ……。」 「え? オレと相合傘、嫌なの?」 「そうじゃなくて。」 「じゃぁ何? 何かやましい事でもしてるの? え? 浮気? 不倫?」 「んな、訳……。」 「じゃぁ何よ……。」 「な……何もございません……。」 「よろしい。」 響を庇うあまり、 左腕はびしょ濡れ。 右腕は響にホールドされ暑かった。 帽子を目深に被り、 マスクをして、 ほぼ目元しか見えないが、 ルンルンで コチラを見ているのがわかった。 そんな響を咎める理由は無かった。 ━━━━━━━━━━━━━ バサバサバサバサッ 青山は濡れた傘の水を払い、 ピッ カチャ 響は玄関を開けた。 「ただいまー」 「ただいまー」 響は振り返り驚いた。 「めっちゃ濡れてんじゃん!」 「え? え? ホント? あ……。」 「先に、お風呂入っといでー。」 「うん。ありがとう。」 洗濯機の上に、 完璧にセットされた バスタオルと着替え。 (なんか夫婦みたいだな……。) バタン キュッキュ シャーーーーー ジャーージャバジャバジャバ どっちが妻で、 どっちが夫。 ということじゃない。 どっちも妻にもなれるし、 どっちも夫にもなれる。 お互いが気付き、 補い合う関係。 青山は、響の過去の話を聞いた時、 決めた事があった。 それは、 問い詰めない。 突き放さない。 響とケンカになるくらいなら、 負けた方がマシだ。 シャワーを浴びながら、 青山はそう思っていた。 キュッキュッ ファサファサファサファサ タオルで髪を拭う青山。 身体を拭き、 響の用意してくれた スウェットを着た。 脱衣所のドアを開けると、 目の前に響が立っていた。 ビックリしていると、 響が抱きついてきて―― 「おかえり♡」 「ただいま。」 「ひびき……。」 青山は少し背伸びをし、 響の唇にキスをした。 突然のことでビックリして、 目を見開く響。 だが、 少しずつ目を閉じていく響。 カーネーションが香る廊下。 時計の針の音。 重なる唇と唇。 響の腕が青山に絡みつく。 ゆっくりと離れる唇。 「お待たせ。」 「遅い♡」 「ワタルの事、ちゃんと考えたい。 だから、お互いのこと、今後の事、 ちゃんと話し合いたい。」 「オレも、コウタくんの事、 ちゃんと考えたい。 今後の事もちゃんと話し合いたい。」 「ありがとう。」 「こちらこそありがとう。」 「ねぇ……?」 「何?」 「もう一回、チューして♡」 「一回だけで良いの?」 「……無限で♡」

ともだちにシェアしよう!