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第12話 実は……。
【登場人物】
・青山コウタ(あおやまコウタ)
鉄道会社の車掌。
響への想いを自覚し、二人のこれからを真剣に考えるようになった。
響を守るため、アイドルと付き合うことの現実とも向き合い始めている。
・響ワタル(ひびきワタル)
FiVE DrinKのメンバー。
人付き合いが苦手で繊細だが、青山にはすっかり心を許している。
青山と一緒にいる未来を望み、二人の今後について考え始めている。
・木田アスカ(きだアスカ)
FiVE DrinKのマネージャー。
青山とは中学時代からの同級生で、三年前まで付き合っていた元恋人。
青山と響、二人の気持ちを知る数少ない人物で、二人の関係を支えている。
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青山と響は、
ソファに並んで座りながら、
今後の事をじっくり話し合った。
・スキャンダルになるような行動はしない。
・一緒に外に出ない。
・一緒に並んで歩かない。
・外では名前を呼ばない。
・甘える、くっつくのは家の中だけ。
・外では目立つような行動はしない。
話し合いが終わりかけた時、
響はついに切り出した。
「ねぇ、コウタくん……。オレと……」
「待って。」
「その話は、もう少し待って欲しい。
絶対、ワタルのそばから離れないから。
信じて待って欲しい。
ワタルならできるよね?」
「……わかった……。」
「ありがとう。」
グゥ〜……
――19:10
「お腹すいたね。」
「そだね。」
「オムライスでも作るか!」
「ヤバ♡」
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――翌日10:00
ブルブルッブルブルッブルブルッ
スマホの振動で目を覚ます響。
ゆっくり起き上がり、
スマホの画面を見ると、
音声通話
“天使か悪魔か”
木田からの電話だった。
「もし……もし……」
「おはよう! よく寝れた?」
「はい……、どうしたんですか?」
「おめでとう! 主役決まったわよ!」
「えー?! ホントにーー!!」
大声で驚き喜ぶ響にびっくりし、
横で寝ていた青山もビクっとして
起き上がる。
「どう……したの?
そんな大きな声出して……。
電話……? 誰……?」
「コ……コウタくん……、
オレ……オレ……、主役決まった……!」
「マジっ?!」
知ってるのに白々しい。
コイツも意外と悪魔の素質ある。
「良かったやーーん!!」
嬉しさの余り、
抱き合う二人。
「もしもしー!」
木田の声はもう届かなかった。
「今日中に台本取りに来てよ!」
木田(またあとで良いっか。)
ピロン
見つめ合う二人。
「おめでとう。」
「ありがとう。」
「今日はお祝いせなな!」
「嬉しい!」
「何作って欲しい?」
「なんでも良い?」
「じゃぁ……ハンバーグ!!」
「おっけー!」
「マジでーー! ヤバーー♡」
「お任せあれ♡」
「じゃぁあとで、買い物行ってくるか。」
「オレも行くー!」
「ダメー。」
「えー……。」
「木田に言われたでしょ。」
「オレが買い物行ってる間に、
台本取りに行っておいで。」
「そだね!」
――2時間後
響は外出の準備をし、
先に家を出る。
「いってらっしゃい。」
「いってきます!」
響が家を出て5分後、
青山も家を出た。
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――ReACTiO PRO (リアクティオプロ)
事務所内
響「お疲れさまでーす!」
木田「お疲れ様。会議室で話しましょ。」
二人は会議室に入り、
静かに扉が閉まった。
カチャン
木田「はい。
台本と撮影スケジュール。」
木田「そこにも書いてるけど、
来週から、衣装合わせ、
顔合わせ、本読みと入るから。」
響「はい。」
木田「クランクアップするまで、
結構ハードスケジュールに
なると思うから覚悟してて。」
響「はい。」
木田「分かってると思うけど、
スキャンダルになる行動、言動は、
絶対ダメだからね。
SNSの更新は、基本、
私か事務所がするから。
響はSNS禁止。
どうしても更新したいなら、
更新前に文面や写真を私に見せて。」
響「分かりました。」
木田「昨日、コウちゃんと色々話したから。
響は何も考えずに、
このドラマの事だけに
集中するように。」
響「なに話したんですか?」
木田「アナタ達の未来の事に決まってるでしょ。
あと、ドラマ終わるまで、
響のメンタルケアよろしくね!
って言っといたわよー。」
響「昨日……? ドラマ終わるまで?」
木田「どうかした?」
木田「あ……。オホホ……。」
響「やっぱり知ってたんだー。」
木田「なんのことー? オホホー。」
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――響の家の近くのスーパー
「ミンチ肉、牛乳、レタス、きゅうり、
トマトと……。
あとは……、あ……ケーキだな。
ケーキは気になるお店が
近くにあったから、そこで買お。」
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〈打ち合わせ終わったから帰る。〉
〈もう少し時間かかりそうだから、
先帰ってて。〉
〈わかった。〉
――1時間後
ピッ
ガチャ
「ただいまー。」
(そう言えば、
コウタくんが来る前までは、
「ただいま。」とか言ってなかったなぁ。)
(「おかえり。」も。)
緊張が少し解れ、
顔が緩む響。
ソファに座り、
カバンから帰る途中に本屋で買った
ドラマの原作本を取り出す。
(BLドラマかぁ……。)
(そう言えば、コウタくん、
オレの出てたドラマとか
観たことあるんかなぁ?)
原作本の表紙を捲り、
読み出す響。
『フタツノ ヒカリ』
ピッ
ガチャ
鍵を解錠し玄関のドアが開く音がした。
本をテーブルに置き、
玄関へ向かう響。
「おかえりー。」
「ただいまー。」
「これ持って。」
「はい。あ……、ケーキ??」
「そだよ。気になってたお店があってね。」
「楽しみ!」
「冷蔵庫に入れといて。」
「うん!」
リビングに入ると、
テーブルに置いてある
1冊の本が目に入る。
「これ、ドラマの関係の本?」
「そう! 原作本。」
「そうなんだ。」
「ねぇ……。」
「コウタくんは、
オレの出てたドラマとか
観たことあるの?」
「あるよ。」
「え? そうなの?」
「そりゃあるよ。」
「どう……だった…………?」
響は恐る恐る聞いた。
「また違う響が見れて良かったよ。」
「ホント?」
「うん。」
「演技のこととかは、
あんま分かんないけど、
観てると物語に惹き込まれる感覚はあるよ。
表情とか台詞の言い方とか?」
「そこまで見てくれてるの?」
「見てるけど、
そういう事は、あんま言っちゃいけないのかな。って。」
「そうだったんだ。」
「ちゃんと全部観てるよ♡」
「恥ずい……♡」
パシッ
恥ずかしくて青山を叩く響。
「てか、いつ観てるの?」
「新幹線の中で。」
「あーね。」
「曲とかは、さすがに聞いてないよね……。」
響(さすがにまだ、そこまではね……。)
青山はスマホを取り出し、
なにやら操作しだした。
そして、
目の前にスマホの画面を差し出された。
“FiVE DrinK フル”
“FiVE DrinK ベスト”
“FiVE DrinK お気に入り”
“朝に聴くFiVE DrinK”
“気分アゲFiVE DrinK”
“寝る前FiVE DrinK”
“ずっと一緒ローテ”
プレイリストは、
FiVE DrinK一色だった……。
目を潤ませる響。
「コウタ……くん……。
ガチファンじゃん……。」
「一種の洗脳やな。」
苦笑いしながら軽く言う青山。
パッと青山に抱きつく響。
そして青山の耳元で、
「大丈夫……。
もっと洗脳するから♡♡♡」
「あー抜け出せないーーー。」
「なんで棒読みよ!」
お互い顔を見合い、
笑い合った。
笑いが落ち着き、
「ねぇ、コウタくん……。」
「ん?」
チュッ
響が聞く前にキスする青山。
「キスして良い? でしょ?」
「ズルい……。」
「大人はね、
ズルいくらいがちょうど良いんだよ。」
「なにそれ〜?」
「でも、そんなコウタくんも好き。」
「好きだったの〜?」
「え? 知らなかったの?」
「風の便りならチラホラ耳には……。」
「“木田の便り”?!」
「一番いらない便り。
来たら、受取拒否するわ。」
木田「ハ……ハ……クシュン!」
木田「風邪かしら?」
「そろそろご飯にしよか?」
「うん。
でも、もう少しだけ、このままで……。」
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――撮影1日前の夜
「明日から本格的な撮影に入る。」
「楽しみだね!」
「初めての主演だから緊張する。」
「それで良いんじゃない!」
「え?」
「本気ってことじゃん!」
「緊張して、悩んで、色々考えて。
少しでも良い作品になったら、
オレはそれで良い。と思うけどな。」
「全力でぶつかって来いよ!
全力でフォローするから!」
そして青山は響を優しくハグし、
「大丈夫……。ワタルならできる……。」
背中を、
トン…トン…。
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――朝
「おはよう。」
目を擦りながら、
ゆっくりリビングに入る響。
食卓には、いつも通りの朝ごはん。
そして横には、
包みに入ったものが。
「コウタくん、これなーに?」
「ひと口サイズのおにぎり。
何個かあるから、
小腹空いた時とかに食べて。」
「ありがとう!」
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「いってきます。」
「いってらっしゃい。」
青山は響を抱き締め、
気合いを注入した。
「じゃぁ……。」
「じゃぁ……。」
軽く手を振り、
響を見送る。
パタン
玄関の扉が閉まる。
(どうしよう……
どうしよう……。)
(ワタル大丈夫かな?
緊張してないかな?
途中でまた逃げ出したりしないかな?)
足が震えてきた青山。
リビングの窓へ向かう。
カーテンの隙間から下を見る青山。
(車に乗ったな。)
車が見えなくなるまで、
外を見続ける青山。
車が見えなくなり、
カーテンを閉める。
(はぁ……。)
食卓の食器を片付け、
洗い物をする青山。
途中でいてもたってもいられず、
スマホを取り出す。
タタタタタタッ
〈ワタル、大丈夫??〉
〈何が?〉
一番緊張し、
一番大丈夫で無かったのは、
青山の方だった……。
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