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第13話 こういう時こそ

第13話 こういう時こそ 【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 鉄道会社の車掌。 響への想いを自覚し、二人のこれからを真剣に考えている。 ドラマがクランクアップするまでは告白しないよう木田に言われており、今は響を支えることを優先している。 ・響ワタル(ひびきワタル) FiVE DrinKのメンバー。 青山のことが大好きだが、仕事のことで頭がいっぱいになっている。 現在はBLドラマ「フタツノ ヒカリ」でW主演を務め、“浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKのマネージャー。 青山とは中学時代からの同級生で、三年前まで付き合っていた元恋人。 青山と響の気持ちを知る数少ない人物で、二人を支えながら、時に強引に背中を押している。 ・兎波奏(となみかなた) 芸能事務所Crest Aster(クレストアスター)所属のアイドルグループ VIREST(ヴィレスト)のセンター。 ドSアイドルとして知られており、現在はBLドラマ「フタツノ ヒカリ」で“吉川輝”(よしかわひかり)役を演じている。 自身も、とある男性ファンのことが気になっている。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ――1週間後 深夜2時 夜遅くまで撮影が長引き、 やっと帰宅できた響。 ピッ ガチャッ 玄関のドアを開け、 廊下を進む響。 スタスタスタスタ ガチャッ 「ただいまー。」 リビングのドアを開け、 声を掛けるも、そこには青山はいない。 ……………… 「そっかぁ……、 今日はコウタくん、来てないんだった……。」 ドサッ 鞄をソファの横に置き、 ソファに倒れる響。 「静かだなぁ……。」 体勢を変え、 横になる響。 スマホの光が響の顔を照らす。 〈今から撮影に戻るね!〉 〈いってらっしゃい!頑張ってね!〉 〈終わったー!今から帰るよ!〉 〈お疲れさま!気を付けて帰りぃよ!〉 〈うん!〉 LINEのやり取りを見つめる響。 タタタタタ 〈ただいま。〉 タタタタタ 起こしたら悪い。と思い、 文字を消す響。 (流石に寝てるよなー。) ブッブーブッブーブッブー “音声通話 コウタ” 「もしもし?」 「もう帰ってきた?」 「うん。」 ガチャ 目の前の寝室のドアが開く。 「おかえり。」 寝室のドアから出てくる青山。 「え……?」 響はビックリし、 起き上がった。 「気になって来ちゃった。」 照れ笑いし、 隣に座る青山。 「コウタくん、明日仕事じゃん……。」 目を潤ませる響。 「13:00出勤だから大丈夫!」 「何時に起きて出るの?」 「オレの心配は、いいから。はい。」 両手を広げる青山。 「うん……。」 青山の胸に顔を埋める響。 「お疲れ様。」 そう言い、 青山は響の頭を優しく撫でた。 トントンっと、 背中を優しくたたく。 「ワタル……、お風呂は??」 「朝、シャワー浴びる……。」 「ご飯は?」 「あるの??」 「もちろん。」 「食べる……。けど……。 もう少しこのまま……。」 顔を胸に強く押し当て、 首を振り、 青山を掴む手に力が入る。 青山が仕事帰りに買ってきた カーネーションの匂いに包まれ、 ゆっくりと時間が過ぎていく。 「ワタルは、明日、何時起き??」 「9時に迎えに来る。」 「何時に起きる?」 「8時。」 「わかった。」 時計の針は、 3時を指そうとしていた。 ぐぅぅぅぅ〜 「お腹の虫が呼んでるよ。」 響は顔を上げ、 青山を見つめる。 「昼から何も食べてなかった……。」 「ずっと撮影?」 「うん……。」 コクリと頷く響。 「じゃぁ、オムライス食べなきゃね。」 優しく微笑む青山。 「コウタくんのオムライス好き。」 満面の笑みで答える響。 「知ってる。」 満面の笑みで返す青山。 バッと起き上がり、 両手を上げ背伸びする響。 「動く気になった?」 バッと、 青山の胸に吸い込まれる響。 「ダメ〜♡」 「オレは良いけど、 寝なくて大丈夫なん?」 「今は、睡眠欲より、コウタ補給……。」 すると、 深く深呼吸をした響。 トントンッと、 優しく背中をたたく青山。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ――朝7:30 響は青山にしがみつき、 青山は包み込むようにし、 抱き合って寝ている。 ブッブー、ブッブー、ブッブー。 「うっ……。」 青山が目を覚まし、 スマホのアラームを止め、 響を見る。 スヤスヤと気持ち良さそうに眠る響。 響の乱れた髪をかきあげ、 手で頬を包む青山。 ゆっくりと優しく、 親指で頬をなぞる。 響に顔を近付ける。 頬を掠め、 響のうなじに ゆっくりと顔を埋め、 深呼吸をする青山。 ス〜〜〜〜ッ……。 (響の匂い好きだなぁ。落ち着く。) 響の心臓の鼓動が、 青山の胸に伝わる。 響を見つめて、 ふと言葉が出てしまう。 「結婚しようね……。」 パチッ 響の目が開いた。 「今、なんて言った?」 「え?」 「今、なんか言ったよね?」 「え?……えーー……。」 「どしたの??」 チュッッ 青山からの突然のキス。 「コウタくんズル〜い……。」 チュッッ 「もう!」 面白くなり、 笑い出す響。 チュッッ 「何よ?このキス?」 もう笑いが止まらない響。 チュッッ 「もういい!」 「もういいの?」 「……優しく……して欲しい……。」 親指で唇を撫でる青山。 ゆっくり近付く。 目を瞑る響。 唇が重なる。 ゆっくり口が開き、 舌を絡ませる。 せっかく整えた髪も乱れていく。 ……………… 掛け布団が乱れ、 ベッドから落ちた。 バサッ ━━━━━━━━━━━━━━━ ――午後1時 フタツノ ヒカリ撮影現場 兎波「なんか良いことあった?」 フタツノ ヒカリ 吉川輝(よしかわひかり)役の 兎波奏(となみかなた)が話しかけてきた。 響「別にー。なんで??」 兎波「足、バタバタさせてたから。」 響「させて悪いかよ?」 兎波「悪くないけど……。 羨ましいなぁ……。って。」 響「え?」 兎波「彼女?」 響「彼氏。」 兎波「え?」 響「え?」 兎波「か……れし??」 響「彼氏。」 兎波「マジか?!」 響「マジよ。」 兎波「そかぁ。良いなぁ……。」 響「え?」 兎波「オレもさぁ、気になる人いるんだけど。」 響「男性??」 兎波「うん。」 響「意外!!」 兎波「オレも意外だったし!」 響「相手どんな人??」 兎波「冷たい……かな……。」 響「なんで、気になるの?」 兎波「わかんない。 でも、凄く視線は気になる。」 響「見られてる?」 兎波「多分……。」 響「それは、業界の人?」 兎波「ファン……。」 響「やったな。」 兎波「やってねぇーわ!」 響「そのやったじゃないし。」 兎波「響こそ、業界の人?」 響「いや、一般人。 でも、コウタくんは、 最初オレの事知らなくて、 最近ファンになった系?みたいな。」 兎波「え?どこで出会ったの?」 響「渋谷……。」 兎波「やったな。」 響「やってねぇわ!」 兎波「てか、渋谷でどう知り合うん?」 響「話すと長くなる。」 兎波「今度飲みに行こか。」 響「いいよ。」 兎波「その、コウタ?君も連れてくる?」 響「それは絶対イヤ。」 兎波「なんで?」 響「他の男と話してるのも嫌なのに、 奏と話してる所見たら、 オレ発狂するよ?」 兎波「じゃぁ、二人で。」 響「よし。」 兎波「なんで気になるんだろう?」 響「それ、もう好きじゃん。」 兎波「やっぱそうだよなぁー。」 兎波「でも、向こうのタイプが オレじゃないんだよなぁー。」 響「じゃぁ、終わったな。」 兎波「終わったとか言うなし。」 響「恋してるね!」 兎波「うっせぇわ。」 スタッフ「響さん!兎波さん! スタンバイお願いしまーす!」 スタッフから声を掛けられる二人。 「はーい!」 「はーい!」 兎波「続きは、また後で!」 響「オレが恋の指導してやるよ。」 完全スルーして、 セットに向かう砺波。 響「次のカット、 めっちゃアドリブ入れてやろ。」 後を追いかける響。 ━━━━━━━━━━━━━━ ――午後10時 撮影が終わり、 木田が待つ車に乗り込む響。 「お疲れ様。」 「お疲れ様です。」 車を出し、 ルームミラー越しに 響の顔を見る木田。 「あら?朝は元気だったのに、 流石にお疲れの様子ね。」 「コウタくん、風邪ひいたんだって。」 「そういうこと……。」 「せっかく明日から3連休だったのにね。 コウちゃんも来る予定だったんでしょ?」 街灯が照らす夜の街を見つめる響。 「うん。」 「響が看病しに行けば?」 ルームミラーに映る木田を見る響。 「コウタくん家知らないし。」 ウインクをする木田。 「え?」 後部座席から身を乗り出す響。 「木田さん!コウタくん家知ってるの?!」 「近い、近いー。」 「そういえば、木田マネ、 コウタくんの元カノだったわ。」 「響、ご飯食べに ファミレスにでも寄る?」 「そだね。お腹空いたしね。」 ━━━━━━━━━━━━━━━ ――ファミレス店内 「空いてて良かったわね。」 「何食べよ?」 「とりあえず私は、 ノンアルビールかなぁ。」 「帰って飲みなよ。」 「私も、もうすぐ仕事終わるから良いの!」 注文が終わり、 スマホを見る響。 「マジか……。」 「どうしたの??」 「コウタくん、熱あるって。」 「余計、介抱しに行かないとね。」 「住所教えてよ。」 「LINEで送るわ。」 「じゃぁ、オレも コウタくんに明日行くって LINEしよ。」 「しなくて良いんじゃない?」 「え?しなかったら、 オレ、玄関でずっと待つの??」 すると、 木田が一本の鍵を 響の目の前に差し出す。 「これ、なーんだ?」 「カギ……。誰の?」 「え?まさか??」 「その、まさか♡」 「てか、なんで持ってるの??」 「別れた時、返しそびれたのよ!」 「そういうことね。」 「で、サプライズで驚かせろと?」 「好きでしょ?サプライズ♡」 「お主も悪よのぉぅ。」 「お代官様ほどでは……。」 「ヒッヒヒッヒ〜」 「ヒッヒヒッヒ〜」 「時代劇のオファーくるかなぁ?」 「これじゃぁ、無理ね。」 「頑張りマーース。」 「はい。」 カギを手渡される響。 「ありがとう。」 ニヤニヤしながら、 カギをキーケースに取り付ける響。 「悪い顔……。」 「だってマネージャーが……。」 「マネージャーが何??」 「あ!そうだトイレに行こ!」 そう言って立ち上がり、 トイレへ急ぐ響。 「逃げ足だけは早いんだから……。」 (響にコウちゃんの住所送っとくか。) 「送信と。」 ブッブー 「スマホ忘れてんじゃん。」 スマホに映し出された文字が、 木田の目に入る。 “天使か悪魔か” 〈兵庫県尼崎市立花町〇丁目……〉 「天使か悪魔か??」 不思議な言葉に、 思わず手が伸びた。 「天使か悪魔か……、 私の送った住所……。」 (え?これ、私の名前??) トイレの方を睨みつける木田。 (あのヤローーー……。) すると、 響がスッキリした顔で戻ってきた。 「え?ハンバーグまだ??」 「まだみたいですよーー。」 「え?どうしたんですか?」 「あ、さっき、“天使か悪魔か”さんから LINE来てたわよーーー。」 「え?」 「どうしたの〜?ひびきく〜ん♡」 「あ……、ちょっと、お腹痛くなってきた。」 すると、 配膳ロボットがやってきた。 「はい♡響くん♡ハンバーグよ♡」 「トイレ……。」 「はよ食え。」 「ひぇっ……、は……はい……。」 小さく縮こまり、 木田の目線を気にしながら ハンバーグを食べる響。 (なんか、ハンバーグ美味しくない……。) 食事が終わり、 車に戻った二人。 車は再び動きだし、 響の自宅へ走る。 「響、大阪へはいつ行くの?明日?」 「そだね。明日行こうかな。」 「品川で良かったら、明日車出すけど。」 「ホント?助かるぅ。」 「だって私、天使ですもん♡」 ルームミラー越しに、 ニヤリと微笑む木田。 (悪魔の顔してますやん……。) 「すいません。」 「気にしてないわよー♡響くん♡」 (めちゃくちゃ気にしてるし、 なんなら、めっちゃキレてるやん。) 「あ……はい……。」 「私もそのまま、 大阪に行こうかしらー。」 「木田さんも休みなの?」 「私にも休みちょうだいよ!」 「あ、すいません。」 「私と行けば、 迷うことなくコウちゃんの家に行けるわよー。」 「行こう!」 「早っ!」 「コウちゃん、 明日何時に仕事終わるんだった?」 「スケジュール把握してるんじゃないの?」 「私、今運転中。」 「11時27分だって。」 「ありがとう。」 話してる内に、 響の自宅前に到着した。 「じゃぁ、明日の迎えに行く時間、 後でLINEするわね。」 「ありがとう。」 「お疲れ様。おやすみ。」 「お疲れ様です。おやすみなさーい。」 ピッピ ウィーーーン ガチャッ 後部座席の扉が閉まり、 車が走り出していった。 「あ〜疲れた。」

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