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第14話 削除しますか? +第6.5話 もうひとつのサプライズ
【登場人物】
・青山コウタ(あおやまコウタ)
鉄道会社の車掌。
響への想いを自覚し、二人のこれからを真剣に考えている。
ドラマがクランクアップするまでは告白しないよう木田に言われており、今は響を支えることを優先している。
《FiVE DrinK》
・響ワタル(ひびきワタル)
FiVE DrinKのメンバー。
青山のことが大好きだが、仕事のことで頭がいっぱいになっている。
現在はBLドラマ「フタツノ ヒカリ」でW主演を務め、“浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。
・押部リョウタ(おしべリョウタ)
FiVE DrinKのリーダー。
明るくノリが良いムードメーカーで、思った事をすぐ口に出すタイプ。
なんだかんだ周囲をよく見ており、気付けば騒ぎの中心にいる。
・緑川コウヘイ(みどりかわコウヘイ)
FiVE DrinKのメンバー。
冷静そうに見えるが、どこか天然で子供っぽい一面を持つ。
暴走するメンバー達にツッコミを入れつつ、気付けば自分も巻き込まれている。
・楓ユウサク(かえでユウサク)
FiVE DrinKのメンバー。
距離感が近く、人をイジるのが大好きなムードメーカー。
自由奔放に見えるが実はかなりの策士で、特に黒川をイジって遊ぶのが好き。
・黒川ジン(くろかわジン)
FiVE DrinKのメンバー。
クールで口数は少ないが、感情が顔に出やすい。
ずっと響を想い、その気持ちを伝える事なく支えてきたが、青山の笑顔と手作りの明太子パスタに心を奪われ、今では青山も特別な存在になっている。
・木田アスカ(きだアスカ)
FiVE DrinKのマネージャー。
青山とは中学時代からの同級生で、三年前まで付き合っていた元恋人。
青山と響の気持ちを知る数少ない人物で、二人を支えながら、時に強引に背中を押している。
・社長
FiVE DrinKが所属する事務所
ReACTiO PRO(リアクティオ プロ)の社長。
その声が似ていることから、木田のスマホには“フリーザ”と登録されている。
━━━━━━━━━━━━━━━
――朝9時
ブッブー、ブッブー。
響のスマホのアラームが鳴る。
「うっ……。」
アラームを止め、スマホを見る響。
青山からLINEが来ていた。
タップし、内容を確認する響。
〈おはよう。
熱はあるけど今のところ大丈夫そうやから。
安心してな。ワタルはゆっくり休みぃや。〉
返信する響。
〈おはよう。今起きた。ありがとう。
コウタくんも無理しないでね。今から行くからね。〉
送信を押そうとした時、
「いや、“今から行く”は、
送ったらあかんやん!あっぶねぇー……。」
“今から行くからね”を消し、
メッセージを送信した。
「おかげで目が覚めたわ。」
ベッドから立ち上がり、
背伸びをする響。
「さぁぁー……、行くぞ!!」
掛け布団が足に絡まる響。
「あっ!!!」
━━━━━━━━━━━━━━━
リビングのソファに座る響。
「痛てててぇー……。」
鏡でおでこを確認すると、
おでこが少し切れていた。
「やってしまったぁ……。」
鏡で位置を確認しながら、
絆創膏を貼る響。
鏡に映る時計が目に入った。
9時30分
「やべ!10時に木田さん来るんだった。」
サッと立ち上がり、ハッとした。
(このまま焦って動くとまたコケそうだな。
ここは、一旦止まってと。)
深呼吸をし、
ゆっくりと足を前に出した。
すると、ソファにかけてあった毛布が
足に絡まっており、
毛布がスルスルと
落ちていった。
「あっぶねぇ〜。またコケる所だった。」
「ふぅ〜〜っ」
腕でおでこを拭く仕草をする響。
落ちた毛布をソファにかけ、
洗面所に向かう。
━━━━━━━━━━━━━━━
身支度を終え、
ソファでゆっくりする響。
「後10分かぁ。コーヒーでも飲むか。」
お湯を沸かし、
インスタントコーヒーを淹れる響。
カップに口を付けようとしたその時。
ブッブー、ブッブー、ブッブー。
“音声通話 天使か悪魔か”
「え?今、コーヒー……。もう!!」
「もしもし?」
「おはよう。響。
もう着いたから、
いつでも降りて来て良いわよ!」
「おはようございます。
今コーヒーを淹れたばかりなんですけどね。」
「じゃぁ、飲んで降りてきて。」
「はーい。」
ビロンッ
「また、なんか言われたら嫌だから、
名前変えとこ。」
タタタタタタタタタタ
LINEの木田の名前を
“天使か悪魔か”から
サササと“木田天使”に変えた。
変えたつもりだった。
友達リストの
お気に入り欄に表示される
良くやり取りする人の名前。
コウタくん
ジン
木田天
(木田天??あ……ミスった……。
ま、いっかぁ……。)
(てか、木田天って……。)
「ぷっ……。じゃこ天みたい……。」
笑いを必死に堪えた。
「ぷっ……、無理……。」
━━━━━━━━━━━━━━━
車の後部座席のドアを開ける響。
ピッ
ピッピー
ウィーーーン
ガチャッ
「おはようございます。」
「おはよう。コーヒーは美味しかった〜?」
木田が振り向き、
響に挨拶をする。
「インスタントですよ……。プッ……。」
木田の顔を見て、
何かを思い出した響。
「何が面白いのよ?なんか付いてる?」
「いえ、何も……。」
笑いを堪える響。
後部座席のドアが閉まり、
車は動き出した。
━━━━━━━━━━━━━━━
――新幹線の車内
《ただいま 熱海を通過しました。》
車内の電光掲示板に流れる表示。
「ねぇ木田さん、今さらだけど……、
ちょっと聞きたいことあるんだけど?」
「改まって何よ?」
「なんでコウタくんと別れたの?」
「……。」
「あ、い…嫌なら言わなくて良いよ。」
「……言わない?」
「言わない?とは?」
「コウちゃんに……。」
「言わないよ。」
「出会った時の話は、したよね。」
「うん。」
「コウちゃん……、ずっと優しくてね。
でもアノ人、他人に興味ないのよ。
ただ優しいだけ。
優しくしてる自分が好きなだけだった。
それに気付いてしまって、冷めちゃった。」
「そうなの?」
「私がプレゼントした誕生日プレゼントとか、
クリスマスプレゼント覚えてないのよ?」
「え?」
「でも卑怯なのは、
出会った日と付き合った日は覚えてるのよ。
あと、サプライズ好きなところね。」
「それ、忘れてたらオレなら、コロす♡
サプライズ好きなのは、なんとなく分かるかも。」
「あと、慣れたら放置されるから。」
「え?どういうこと??」
「付き合う前は、LINEとか電話とか
頻繁にしてたけど、
付き合ってしばらくしたら、
頻度がね……。
同棲して最後の方は、
業務連絡みたいな会話だったのよね。」
「付き合ったらそうなんだ。」
「なんか、“単なる優しい人”になっちゃって。」
「……。」
「自分から聞いてきて、
何考えこんじゃってるのよ。
不安がらせちゃった?」
「うぅん。どうしたら、
そういう風にならないように
しようかなぁ?と。」
「え?」
「どうしたらプレゼント
忘れないようにしようかなぁ?
どうしたら、ボクにずっと
興味持ち続けさせようかなぁ?
どうやってLINEと電話の頻度を
維持させようかなぁ?って。」
「す……凄いわね……。」
響は、なおも考え続けていたため、
木田は話しかける事を躊躇った。
(仕事以上の真剣な顔ね。
これは集中途切れさせたらダメね。)
木田はスマホを取り出し、
写真のライブラリを開いた。
〈削除しますか?〉
〈削除〉
ゆっくりと親指がスマホに近づく。
タッ
〈削除しました。〉
1枚の“シャシン”を削除した木田。
それは、唯一残していた
出会った時に撮った
青山との写メだった。
木田のスマホのライブラリから
青山との思い出は全て消えた。
そして、真剣に考え込む響を見て、
(やっと、吹っ切れたわ……。
ワタル……ありがとう……。)
と心の中で呟いた。
ツーッ……
一筋の雫が木田の頬を伝う……。
響に顔を見せまいと下を向く木田。
我慢しようとするも、
一度溢れた涙を止めることは出来なかった。
ポツ……ポツ……と、
床に雫が落ちていく。
潤みきった目は、
床を歪めて映していた。
木田は顔を上げ、
反対側を向き、
「ひ、響、ちょっと私トイレ行くね!」
「うん……。」
響は窓の外を見て
考え込んでいて、
カラ返事で応える。
慌てて響から離れる木田。
下を向いて
通路を足早に進む木田。
一粒、一粒、雫が零れる。
もう止まらないと悟った木田。
ウイ〜〜ン
デッキとの仕切りの扉が開き、
足早に化粧室へ駆け込む。
シャッ!
化粧室のカーテンを閉めた。
蛇口を急いで回し、
水を流し、
洗面台に手をかけたその時、
木田はゆっくりと崩れていった。
ジャーーーー
「うっ……うっ……。」
水の流れる音で
かき消される嗚咽。
━━━━━━━━━━━━━━━
「プレゼントに日付書くか?
コウタくんのメモに残すか?」
「あと、女の影もチラつかせようか?
いや、男?」
「LINEと電話は、
オレからするからいっか♡」
ニヤニヤする響。
窓に映る、
そのニヤけた自分の顔に気付いた。
それと同時に、
木田がいないことにも気付いた。
木田がいた席に目をやる響。
(どこ行ったんだろ?トイレ?)
席を立とうとした時、
床に水滴が付いてるのが見えた。
(ん??木田さん何か飲んでたっけ?)
小さな玉状の水滴が数滴あった。
見覚えのある水滴。
ダンスレッスン中、
振付けが覚えられず、
何回も何回も同じ所を繰り返す。
悔しさと、自分の不甲斐なさ。
そして、トラウマ。
休憩中、
膝を抱き隠れて泣いた日々。
何度、
床に落ちた雫を見てきたことか。
フラッシュバックのように
思い出した嫌な過去。
そして、
それが何の水滴か分かった響。
胸がギュッと締め付けられる。
(今は、コウタくんがいるから大丈夫。
オレは大丈夫。)
そう言い聞かせて、
グッと我慢した。
気を逸らそうと、
窓の外に目をやる響。
外は、
雨が降っていた。
カッシャ、カッシャ、カッシャ……。
雨の音は聞こえず、
新幹線の走行音だけが耳に残った。
《ただいま 新富士を通過しました》
音もなくスクロールする電光掲示板。
フワッ
ビクッ
窓に映る木田の姿。
響は、
木田の顔を見ることが出来なかった。
見ると自分も泣いてしまうかも知れない。
と思ったから。
「トイレ?」
顔を見ずに木田に尋ねる響。
「う…うん。」
明らかに声が掠れてる。
泣かないように我慢する響。
「そ…そうなんだ……。」
それしか言えなかった。
それ以上言葉を発すると、
瞼に溜まった涙が零れるから。
カタカタカタカタカタ
通路を挟んで座っているサラリーマンの
パソコンを打つ音が、
“未来と過去”と打ってるかのように。
そう考えていると、
肩に重さが伝わった。
窓に目をやると、
木田が響の肩にもたれていた。
微動だにもしない響。
「どうしたの?」
「ちょっと……、このまま居させて。」
掠れた声で絞り出すコトバ。
「いいよ……。」
「ありがとう……。」
お互いコトバを発さないまま、
景色と時間だけが過ぎていった。
━━━━━━━━━━━━━━
〈♪♪♪まもなく京都、京都です。
お出口は……。〉
身体を起こす木田。
響も寝ていて、
肩が軽くなり目を覚ました。
背伸びをする木田。
響も背伸びをした。
「移った?」
「移った。」
お互い見合って笑った。
「ありがとう。」
「いいよ。コウタくんは任せて。」
木田は響の肩に腕を回し、
お互い頭をくっつけた。
「頼むわね。」
「お腹すいたね。」
「たこ焼き食べに行く?」
「浪速そばのうどん食べたいかな……。」
「好きね……。」
「新大阪といえば浪速そばでしょ!」
京都を出発すると、
横に電車が見えた。
「コウタくんの電車!」
「そうね!ていうか、
この前の大阪LIVEの後、
あんたコウちゃんに会いに行ったでしょ!」
「はて??」
「それも、響だけならまだしも。
あの時、大変だったんだからね!」
「なんで??」
「響が、『車用意できる?』って言った時は、
多分コウちゃんに会いに行くんだなぁ。
と思ったけど。
その後よ。」
ブッブーブッブーブッブー
木田「イイトコなのに社長から……。」
スマホの画面を響に見せた。
“着信 フリーザ(社長)”
響「え?」
木田「あ……、名前は気にしないで。
ちょっと出てくるね。」
木田は席を外し、
デッキへ向かって行った。
響「オレに、“天使か悪魔か”で
文句言ってたのに、自分は社長の事、
フリーザ呼ばわりじゃん。
てか、言われてみれば……、
社長……、フリーザって……ぷっっ……。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━
第6.5話 もうひとつのサプライズ
(第6話 サプライズ!!のAnother Story)
――FiVE DrinK 全国ツアー 大阪公演 2days
初日終演後 舞台裏
押部「お疲れ様でしたー!」
緑川「お疲れ様でしたー!」
楓「お疲れ様でしたー!」
黒川「お疲れ様でした。」
響「お疲れ様でしたー!」
木田「みんな、お疲れさまー!」
響「木田さん!LIVE中の写メ
コウタくんに送ってくれた?」
木田「送ったよ!」
響「なんか言ってた?」
木田「特に?」
響「えーー、もぅーー。」
響「ねぇ、30分後に車用意できる?」
木田「出来るけど……。」
響「じゃぁ、お願い!」
黒川は聞き逃さなかった。
でも、
黒川だけでは無かった。
全員の耳がピクっとし、
自然と黒川、楓、押部、緑川が集まった。
押部「あれって……。」
黒川「あれは行くな……。」
緑川「だよな……。」
楓「ということは……。」
全員「行っちゃう?♡」
輪になってヒソヒソ話をしてる
4人に気付いた木田。
木田(あ……、あの4人……、気付いたか……。)
ルンルンでシャワー室に向かう響は、
その4人には一切気付いていない。
木田(私……しーらないっ。)
そろ〜っと、
楽屋から立ち去ろうとする木田。
4人「木田さ〜ん♡」
木田(悪夢だ……。)
木田「な……なに……?ごめんなさい!
これから関係者と打ち合わせが!」
楓が木田の肩を優しく掴む。
そして耳元でこう囁いた。
楓「姐さん、共犯者にならないか……。」
肩を落とす木田。
振り返り、
楓にこう伝えた。
木田「悪くはないわね。」
でも、
マネージャーとしての顔は忘れなかった。
木田「絶対に、周りには、
そしてファンにはバレないようにね!」
悪魔に取り憑かれた4人は、
ニヤリと微笑み、
4人「任せなさい……。」
押部「てか、響がどこ行くか、
コウタくんと、どこで落ち合うかとか
分かんなくね??」
5人の顔が響のいた所を見る。
ブッブッブッブッ
テーブルに置いてあるスマホが震えて、
さも、見てよ!と言わんばかりでいる。
木田「それはダメよ!」
木田の注意なんて、
誰も聞きやしない悪魔達。
木田「ちょっと!ダメだって!」
緑川が木田を静止する。
楓が響のスマホをタップする。
楓「あれ?響、
暗証番号でロックしてないの?」
黒川「あ〜……、コウタくんに
いつ見られても良いように
してんじゃない?」
押部「健気〜♡」
楓「でも、今はそれが裏目に出たな。」
黒川「とりあえずLINEだな。」
楓「待って……。」
タッタッタッタ
スルーースルーー……。
黒川「あった!!」
楓「え?何??」
黒川「これ!コウタくんが乗る電車!」
頭を抱える木田。
抵抗しない木田を見て、
仲間に加わる緑川。
楓「1522C??なにこれ?」
黒川「電車の番号だよ。」
押部「やけに詳しいなぁ。」
黒川「待って!」
黒川は自分のスマホを取り出し、
時刻表を検索した。
黒川「あった!
大阪中央22:40発の普通、東高槻行き!」
緑川「スゲー……。」
木田(何この一体感。
そしてこの全員の集中力。
仕事でもそんなけ集中せぇよ!)
共犯者ゆえ、
口に出しては言えない木田。
シャワーの音が止まって、
シャワー室の扉が開く音が聞こえた。
黒川「楓!OK!」
楓「あいよ!」
押部「楓!指紋!指紋!」
楓「あ!」
ふきふき……。
パタ……。
テーブルから離れる4人。
楓「で、どうする?これから。」
押部「流石に大阪中央駅はヤバくない?」
緑川「LIVE終わった後だしな。」
楓「多分、ファンだらけだよ。」
押部「オレ達あんまり
変装セット持って来てないしな。」
黒川「オレは……ある……。」
緑川「え?何用??」
黒川「それは……秘密……。」
黒川(せっかく誰にも言わずにひっそりと
コウタくんの仕事姿を見に行こうと
思ったのに……。)
黒川のムスッとしている顔を、
楓は見逃さなかった。
楓は黒川に近付き、
こっそり耳打ちした。
楓「抜け駆けは行けませんぜ。黒川大先生♡」
ビクッッ!!
黒川「な……何がだよ!!」
楓「列車の番号……、時刻検索……、
もうこれ以上言わなくても分かるよな……。」
黒川「べ……別にイイじゃん!」
楓「黒川大先生は、
どこで待ち伏せした方が
良いと思われますかぁ〜?」
黒川「今からシャワー浴びて、
片付けてとか諸々してたら……、
時間的に、東高槻かな……。」
楓「東高槻って!」
押部・緑川「東高槻??」
ガチャッ
響が脱衣場から出てきた。
この部屋で、
4人がよからぬ事を計画していることなど、
1ミリも知らない響は、
鼻歌混じりにテーブルに戻り、
身支度を整えていく。
響「木田さん!
オレのスーツケースとか諸々の荷物は、
ホテルに届けて貰って良いですか?」
木田「え?!あ……、
わかったわ。手配しておく。」
木田が響に近寄り、
隣に座る。
木田「行くの?」
響「うん。でも心配しないで、
ちゃんと変装していくから。」
帽子とマスク、
そして少し地味なシャツ。
響「アクセサリーも全部外すし。
流石にバレないっしょ!」
耳、指に付けていたアクセサリーも取り、
アクセサリーケースに収めた。
木田「くれぐれも気を付けてね。
もし、何かあったらすぐ連絡するのよ。」
木田はもう、
そう言うしか出来なかった。
そして木田には、
残りの4人に釘を……、
1番大きい特大サイズの釘を
打たなければならない。
木田「楽しそうにしてる所、悪いんだけど、
くれぐれも身バレしちゃダメよ。」
押部「大丈夫!なんとかなるよ!」
黒川「ヤバくなったら、
タクシーに飛び乗ります。」
楓「あと、緑川を餌食にして
オレたちは逃げる。」
緑川「え?オレを??」
木田「とにかく!」
木田の声に驚き、
響がこちらを見た。
押部・楓・黒川・緑川
「シーーーー!!」
5人を見て首を傾げたが、
また、ルンルンで鼻歌を再開させ、
鏡で身バレチェックする響。
押部「大丈夫。」
緑川「東高槻駅までどう行くの?」
楓「電車でしょ。」
黒川「でも、まだファンが
いっぱいいると思うよ。」
深くため息をつく木田。
木田「車、用意するわ……。」
押部・緑川「え?!いいの??」
木田「4人まとまって行動してて、
身バレしたら、どうなると思ってんのよ。」
楓・黒川「さっすが〜♪」
木田「何が、さっすが〜。よ……。」
押部「そしたら、とりあえず……
30分後に集合で!」
緑川「ラジャ。」
楓「オッケー。」
黒川「うん。」
木田「はいはい。30分後ね。」
コンコンッ
木田が楽屋のドアを開ける。
ガチャ
木田「はい。」
スタッフ「お車が到着しました。」
木田「ありがとうございます。」
木田は響の方を向き、
木田「ひびきー!車、来たわよー!」
広い楽屋に響き渡るような
大きな明るい声が返ってきた。
響「はーーーーい!!!」
スキップをしてくる響。
押部「ひびきく〜ん♡
スキップしてどこ行くのー?」
緑川「もしかして……。」
楓「コウタくんのところ〜?」
スキップがパタっと止まった。
ブリキのおもちゃのように
ぎこちなく振り返り、
響「そ……ん……な……。」
黒川「図星かよ。てか、分かりやすい。」
楓「えー?誰かも抜け駆けして
行くつもりだったんでしょ〜?♡」
顔を真っ赤にし、
俯く黒川。
響「まさか……ねぇ……??」
響は助けを求める為、
木田の方に顔を向ける。
が、
木田は俯きスマホを触っていた。
今にも掻き消されそうな細い声で、
響「き……き……木田さん……。」
木田「え?何??
ていうか、車、待たせてるわよ。」
ブリキの響は、
再度ドアの方へゆっくり
歩いて行った。
響「あっ。」
緑川「あ、つまづいた。」
押部「歩き方変じゃね?」
楓「動揺し過ぎ。
アレが我がグループのセンターとは……。」
黒川は静かに席を立つ。
楓「ジンちゃ〜ん♡
ど・こ・い・く・の?♡」
黒川の腕を掴み、
引き寄せ、
耳に息を吹きかける楓。
黒川「はぁ〜〜ん♡」
ソファに倒れ込む黒川。
黒川「耳はダメだって……。」
緑川「アイツらはアイツらで何やってんの?」
押部「あの二人、意外と仲良いよね……。」
ガンッ
響「イテっ!」
緑川「今度は、入口でぶつかった。」
押部「大丈夫かよ……。」
楓「生きて会いに行けるかしらねぇ♡?」
黒川「オレが一緒に行った方が……。」
立ち上がろうとする黒川。
また、
楓が黒川の腕を掴み、
引き寄せ、
耳に息を吹きかけた。
黒川「はぁ〜〜ん♡」
黒川「だから……。」
緑川「またやってるよ。」
押部「オレらも……。」
緑川「やんねぇよ。」
押部「お……おぉ……。」
ガンッ!!
緑川「今度は何にぶつかった?」
押部「結構、音、おっきかったね。」
黒川は立ち上がり、
楓を振りほどき、
響を追った。
黒川「ひび……。」
通路に飛び出したが、
もうそこには、
響の姿は無かった。
うなだれる黒川。
楓は黒川にそっと寄り添い、
トドメの言葉をかける。
楓「ドンマイ♡」
緑川「さぁ、シャワー浴びてこよー。」
押部「オレもー。」
楓「シャワールームあと一つだねぇ。
ジンちゃん一緒に浴びる?♡」
黒川は楓を睨みつける。
黒川「浴びねぇーよ……。」
楓を振り払い、
黒川は早々と
シャワールームへ向かった。
楓「あれ?あれ?」
木田を見る楓。
咄嗟にスマホを見る木田。
でも、
笑いを堪えられない木田。
楓「何笑ってんすか〜?」
木田「な……なにも……、
くっ……、くっ……。」
━━━━━━━━━━━━━━━━
――30分後
押部「そろそろ行くか。」
緑川「え?」
黒川「まだ、あのバカが……。」
楓「えー!待ってよ!!
まだ髪乾かしてないよ!」
押部「30分後って言ったじゃん!」
緑川「それはそうだけど……。」
黒川「アイツいたらうるせぇし、
置いて行くか。」
楓「ホントに置いて行ったら、
呪って出るからな!
末代まで呪ってやる!」
━━━━━━━━━━━━━━━━
――地下駐車場
車に乗り込んでる3人。
走ってくる楓。
押部「来た。」
緑川「意外と早かったね。」
黒川「チッ……。」
バタンッ!
黒川がドアを閉める。
車のドアを叩く楓。
楓「ちょっと!ちょっとぉ!!」
バンバンバン!
ウィーーーン
窓を開けた黒川。
黒川「カギは開いてるよバカっ。」
楓「あ……。」
ガチャッ
車のドアを開け、
大人しく座る楓。
ガチャッ
押部「すいません。
運転手さんお願いします。」
運転手「東高槻駅でしたね。」
押部「はい……。」
動き出す車。
楓「コウタくんの元へレッツゴーー!!」
黒川「やっぱお前うるせぇ!降りるか?」
楓「さーせん。」
地下駐車場を出た車は、
押部、緑川、黒川と、
あと一人うるさいヤツを乗せて、
東高槻へ向けて走って行くのだった。
fin
━━━━━━━━━━━━━━━━
--新大阪へ向かう新幹線のデッキ
木田「もしもし。木田です。」
男の口元がゆっくり動く。
社長「今、大阪へ向かってるらしいじゃない?
さっき、とある週刊誌から、
“FiVE DrinKの響ワタル、男性と親密愛”
っていう見出しの記事原稿が送られてきたの。」
テーブルに、
週刊誌から送られてきた原稿が散らばる。
社長「駅前で、一つの傘に入って
腕を組んで歩いてる写真付きでね。」
腕を組み、
ひとつの傘に収まる
二人が写っている原稿。
社長「……一体これは、どういうこと?」
社長「あと……
アナタが今口説いてるっていう
FiVE DrinKの新しいマネージャーの件は、
進んでるんでしょうね?」
木田「……………。」
ともだちにシェアしよう!

