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第16話 スキャンダル(後編)

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 響の事が好き。 だけどまだ告白はしていない。 ドラマがクランクアップするまで 告白はしないで。と木田に言われている。 木田の元彼。 響からは、コウタくん。 木田からは、コウちゃん。と呼ばれている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) 青山の事が大好き。 だけどまだ告白はしていない。 仕事の事で頭がいっぱい。 アイドルグループ FiVE DrinKのセンター。 撮影中のBLドラマ「フタツノ ヒカリ」W主演で “浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。 落ち着いたら告白しようと考えている。 青山からは、ワタル。 木田からは、響もしくは、ワタルと呼ばれている。 ・押部リョウタ(おしべリョウタ) FiVE DrinKのリーダー。 明るくノリが良いムードメーカー。 思った事をすぐ口に出すタイプで、 FiVE DrinKの空気を一気に明るくする存在。 なんだかんだ周りをよく見ており、 気付けば騒ぎの中心にいる。 ・緑川コウヘイ(みどりかわコウヘイ) FiVE DrinKメンバー。 冷静そうに見えるが、 どこか天然で子供っぽい一面を持つ。 暴走するメンバー達にツッコミを入れつつ、 気付けば自分も巻き込まれている。 ・楓ユウサク(かえでユウサク) FiVE DrinKメンバー。 距離感が近く、 人をイジるのが大好きなムードメーカー。 自由奔放に見えるが、実はかなりの策士。 悪知恵は誰よりも働き、 面白そうな事にはすぐ首を突っ込む。 特に黒川をイジって遊ぶのが好き。 ・黒川ジン(くろかわジン) FiVE DrinKメンバー。 クールで口数は少ないが、感情が顔に出やすい。 ずっと響を想い、 その気持ちを伝える事なく響を支えていた。 しかし、青山の笑顔と、 手作りの明太子パスタに堕ちた。 今では黒川にとって、 青山コウタは“推し”になっている。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKを預かる敏腕マネージャー。 青山コウタの元彼女。 青山からは、悪魔と呼ばれている? 響のスマホのLINEの名前は、 “天使か悪魔か”にされていたが “木田天”に変更された。 ・吉川キョウスケ(よしかわ キョウスケ) ReACTiO PRO所属 新人女優、大空ユメのマネージャー。 人当たりが良く、 誰とでもすぐ打ち解ける柔らかい性格。 常に笑顔を絶やさず、 木田アスカにも懐いている。 しかしその正体は……。 ・社長/中尾マサシ(なかお マサシ) FiVE DrinKが所属する芸能事務所 ReACTiO PRO(リアクティオ プロ)の社長。 人を見る目に長けており、 響ワタルをスカウトした張本人。 穏やかな口調とは裏腹に、 時には冷酷な判断も下す。 その人が売れる為なら、 自ら悪役になることも厭わない。 木田やFiVE DrinKからの信頼も厚い。 元所属タレント・黒崎零とは、 複雑な因縁と信頼関係を持つ。 フリーザの声に似ているらしい? ・野村リカ 中尾社長の秘書。 中尾が役者時代の3代目マネージャーとして 支え続け今では中尾の右腕として働く。 中尾の事を一番良く知る人物。 ・黒崎零(くろさき れい) 芸名 RAY-K(レイケイ) 芸能事務所 Crest Aster(クレストアスター)の社長。 元アーティストであり、 圧倒的なカリスマ性と実力で 事務所を大手へ押し上げた叩き上げの男。 勝ち気で口も悪く、 かつてはReACTiO PROに所属しており、 中尾社長には反抗的な態度を 取っていたが、 誰よりもその実力と 人を見る目を信頼している。 向上心が強く、 常に“勝つこと”を求め続ける。 所属タレントには厳しいが、 その才能と人生には本気で向き合う。 実はモフモフしたものが好き? ・兎波奏(となみ かなた) アイドルグループ VIREST(ヴィレスト)のセンター。 「フタツノ ヒカリ」で 響ワタルとW主演を務める若手人気俳優。 クールで近寄り難い雰囲気を持ち、 ドSキャラとして人気を集めている。 響ワタルを尊敬しており、 共演をきっかけに親しくなる。 現在は、 響の恋愛相談相手にもなっている。 所属事務所は、 Crest Aster(クレストアスター)。 社長の黒崎零(RAY-K)からは、 「かなた」と呼ばれている。 ・葉山智也(はやまともや) 兎波奏のマネージャー。 デビューの時から兎波の事を 支えている。 ・阿川聖哉(あがわせいや) 元芸名、SEIYA(セイヤ) Crest Asterの副社長。 黒崎の側近。 ReACTiO PRO在籍時の同期。 黒崎の事を良く知る人物の一人。 ・一ノ瀬ルナ(いちのせルナ) Crest Asterに所属する女優。 Crest Aster一番の稼ぎ頭だが……。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --スキャンダル発覚の翌朝8時30分 テレビから、いつもの 明るい女性アナウンサーの声が聞こえる。 女性アナウンサー 「次のコーナーは、今日食べたい! イチオシ、スイーツのコーナーです!!」 リポーター 「みなさん!おはようございます! 今日、私が来ているのは……。」 朝の情報番組の1コーナー。 リポーターの紹介とともに 甘くて美味しそうな スイーツが並び出したその時。 《速報》 女優の一ノ瀬ルナさん、 俳優の江口カケルさんと入籍 スイーツコーナーが終わり、 CMが流れ スタジオに戻ってきた画面。 男性アナウンサー 「速報です。 女優の一ノ瀬ルナさんが、 5歳年下の俳優 江口カケルさんと入籍されました。」 男性アナウンサー 「一ノ瀬ルナさんは、 Crest Asterに所属する25歳。 今一番ノリに乗っている女優であり、 昨年には、大河ドラマにも出演。 益々活躍が期待されている一ノ瀬ルナさん。 お相手の男性は、 劇団明日(げきだんあした)に所属する 5歳年下の俳優 江口カケルさん。 また、一ノ瀬ルナさんは、 この入籍を機に所属事務所である Crest Asterを退所され、 独立されるとの事です。 一ノ瀬ルナさんから コメントが届いています。」 女性アナウンサー 「かねてよりお付き合いさせて いただいておりました 江口カケルさんと この度、入籍させていただきました。 また、デビューの頃より お世話になりました事務所を退所し、 一ノ瀬ルナ個人として独立し、 さらにお仕事へ邁進していく所存です。 これからも皆様の温かい応援を よろしくお願いいたします。」 男性アナウンサー 「いやぁ……突然の発表に驚きましたねぇ。」 女性アナウンサー 「私、目が覚めましたもん!」 男性アナウンサー 「まだ起きてなかったんですか? しっかりしてくださいよぉ!」 それから日本中は、 一ノ瀬ルナの話題で持ち切りだった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 遡ること1日前 --Crest Aster社長室 ガチャッ 黒崎「なんでこうも続くんだよ!」 阿川「中尾さんの事務所の響に、 そして一ノ瀬……。」 黒崎「中尾のおっさんの所の件は、 おっさんがどうにかするだろう……。 だが、一ノ瀬はウチの事務所の問題だ。」 そう、一ノ瀬ルナは、 Crest Asterで トップの人気と売上を誇る 看板俳優。 だが、傲慢さ、我儘、自由奔放さ、 口の悪さが仇となり、 共演者・スタッフからは総スカン状態。 そこに他の事務所の俳優と恋仲に。 それも弱小事務所の新人俳優に。 仕事へ支障が出るほど入れ込み、 「彼と結婚して独立する!」 と社長の黒崎に直談判までする始末。 Crest Aster、そして黒崎にとっては まさに今一番の厄介者。 阿川「もうこの際、 一ノ瀬をクビにでもしますか〜 ハッハハハ……。」 黒崎「…………。」 阿川を睨み付ける黒崎。 だがすぐ目線は逸れ、 顎に手を掛ける。 阿川「すいません……。言い過ぎました。」 黒崎「待て……。」 阿川「あ……はぃ……。」 顎に手を掛けたまま、 ウロウロし何かを考えてる様子の黒崎。 すると、考えが決まったのか 立ち止まり窓の外を見て笑った。 黒崎「フッ……フッフッフフフ……。」 阿川(とうとう壊れたか?) 大きく笑い出した黒崎。 黒崎「ハァー……ハッハッハッハハハ……。」 急に笑いだし、 心配になり声を掛ける阿川。 阿川「社長……、どうしました??」 黒崎は、窓の外を見たまま言った。 黒崎「一ノ瀬ルナをクビにする。」 ボトッ 阿川「え……?!」 あまりの驚きにスマホを落とす阿川。 黒崎「結婚したかったんだろう? それに、独立もしたがってた……。」 阿川「そ……それは、そうですけど……。」 黒崎「一ノ瀬ルナの寿退社、そして独立。」 黒崎「そうすれば、オレらも あの厄介者とは、おさらばだ。 そして、中尾のおっさんの所の スキャンダルも吹っ飛ぶ。 これで、一石二鳥じゃねぇか……?」 振り向く黒崎の顔が、 まさに悪魔の顔だった。 黒崎の提案に身震いする阿川。 阿川「ですが……、 一ノ瀬を手放すとなると、 Crest Asterの売り上げが……。」 黒崎「そんなもん一時的なものだ。 まだ第二四半期に入った所。 今年度は多少減っても、 来年度には、巻き返せる。」 黒崎「それに、ここで中尾のおっさんに 借りを作っておけば……。」 阿川「ヨシカワを使いますか??」 黒崎「そうだなぁ……。」 再度考え込む黒崎。 黒崎「下手に打つより確実か……。」 阿川「はい……。」 スマホを取り出した黒崎。 《ヨシカワ》 プップップップッ……。 ♪♪♪♪♪ 黒崎「寄りによって 着メロがFiVE DrinKの曲かよ。」 吉川「お世話になっております。 黒崎社長。 そろそろかかってくる頃だと 思いましたよ。 一ノ瀬ルナ…… の件でよろしいですか?」 一ノ瀬ルナの名前を聞き、 思わずビクっとする黒崎。 吉川の情報収集能力と、 その速さには、いつも驚かされる。 そして、次の一手を見据えている所も。 黒崎「あぁ……。」 吉川「分かりました。 では、明日の朝を、お楽しみに。」 ツーッツーッツーッツーッ…… 阿川「ヨシカワはなんと?」 黒崎「明日の朝を、お楽しみだと。」 阿川「ヨシカワは、 何をする気なんでしょうか?」 黒崎「知るか! だが、盤面は明日の朝、180度変わる。」 黒崎「楽しみにしようじゃないか……。」 そう言い、窓際に両手をつき外を見る。 だが、言葉とは裏腹に 黒崎の両手は震えていた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --16時10分 品川駅前 吉川「そろそろ来る頃かな?」 カタカタカタカタカタカタ……。 《一斉送信》 人差し指がENTERキーを押した。 送信される一斉メール。 コンコンッ パタッ ノートパソコンを閉じ、 車のドアのロックを解除する。 ガチャッ 木田「ありがとう。吉川くん。」 吉川「いぇー。全然構いませんよ。 ボクはいつでもヒマしてるんですから。 なんせ売れない俳優さんの マネージャーですからね……。」 響「吉川マネ、ドンマイ……。」 木田「こらっ!誰のせいで 今大変な事になってると思ってんのよ?!」 吉川「私の受け持つ俳優にも 色恋のスキャンダルの 一つでもあればなぁ……。 うっうっうっっ。」 ハンドルに伏せ、 泣き真似をする吉川。 木田、響「ドンマイっ。」 ブッブッ 響のスマホが鳴る。 通知は、グループLINEで 楓からのメッセージだった。 《FiVE DrinKメンバー》 楓〈みんな着いたよー〉 素早く返信する響。 響〈さっき品川駅に着いて、 吉川マネと合流した。〉 響「みんな着いた。って。」 吉川「私たちも行きましょう。」 木田、響「お願いします。」 カッチカッチカッチカッチ ヒュイーーーーーン。 吉川が運転する車は、 木田、響を乗せ品川駅を後にした。 ━━━━━━━━━━━━━ --ReACTiO PRO 社内会議室 楓「響と木田さん、 さっき品川駅に着いて、 吉川さんと合流したみたい。」 緑川「あと20分くらいかぁ。」 押部「響、どんな顔して 入ってくるだろうね?」 楓「落ち込んで泣いてるとか?」 緑川「ありえる。めっちゃ落ち込んで 肩落として来んじゃね?」 押部「いや、アイツの事だから、 車から降りるなり、また逃げるんじゃね?」 黒川「お前らアイツの事何も知らねーなー。 『お待たせー!』って 能天気に入って来るんだよ。」 押部、緑川、楓は、 薄くした目で黒川を見つめ、 楓、押部、緑川「さすが元彼♡」 黒川「も……モト……カレ……??」 顔が真っ赤になっていく黒川。 楓「冷えピタいる?」 黒川は、ハッとし、 黒川「いらねーわ!! てか、元彼でもねぇーし!」 楓、押部、緑川は、 また薄くした目で黒川を見て、 楓、押部、緑川「ふ〜〜〜〜ん……。」 黒川はいきなり立ち上がり、 会議室を出ようとする。 黒川「ちょっとトイレ行ってくる!」 バタンッ! 楓「あれ?怒っちゃった?」 押部「流石にやり過ぎたか?」 緑川「でも、間違いじゃないよね……。」 楓、押部「さぁ……??」 会議室を出てトイレへ向かう黒川。 スタスタスタスタスタスタスタ…… 黒川「なにが元彼だよ!」 黒川「告白すらしてねーよ!!」 スタスタスタスタスタ…… ━━━━━━━━━━━━━ 黒川がトイレから戻り10分。 スマホをいじり暇を潰す三人。 コンコンッ ガチャッ 木田「お待たせ。」 響「お待たせー!」 押部、緑川、楓、黒川 ポカーーーん……。 響「どしたの?みんな??」 押部、緑川、楓は下を向いた。 三人ともプルプル震えている。 黒川「おっすぅ。」 楓「ぷっ……ぷっ……、無理……。」 押部「オ……オレも……。」 緑川「……こんなことあんのかよ?」 押部、楓、緑川 「ぷはぁー!ハッハッハッハッハー」 我慢出来ず笑い転げる三人。 木田「何?どうしたの?いきなり?」 響「笑うところあった……?」 押部「わ……笑う所しかなかった……。」 ことの顛末を話す楓。 響「何それ?ジンちゃん……。」 黒川を睨み付ける響。 黒川「だって、そう来ると思ったから。」 木田「はいはい!その話はここまで。」 木田「もう、そんな話どころじゃないのよ!」 木田「これから……」 ガチャッ 木田の話の途中なのに、 会議室のドアが開き、 ビックリし全員が開いたドアの方を見た。 中尾「お疲れ様……。」 その場が一気に凍りついた。 全員一瞬固まったが、 バッ!! 全員が瞬時に立ち上がった。 メンバー「お疲れ様です!」 木田「お……お疲れ様……です……。」 中尾「さっき廊下を歩いてたら、 ここから笑い声が聞こえたようだけど、 どういう事かしら??」 木田「そ……それは……。」 一気に全員が震え出した。 中尾「あんたたち! 今どういう状況か分かってんの?!!!」 中尾の怒号が飛んだ。 中尾の声圧の波が全員を襲う。 震えが止まらない木田とメンバー達。 中尾「誰のせいで こんなことになってると思ってんの?」 中尾が響を睨み付ける。 響は、中尾の睨みつける目を そ〜っと見ようと目線を動かせた。 その時、響の横を風がぬけた。 そして、木田の背中が目の前に入った。 木田「申し訳ございません。 全て私の不徳の致す所です。」 木田「どんな処分も 甘んじてお受けいたします。」 深く頭を下げる木田の背中。 中尾「あら、そう……。」 頭を下げる木田の背中が震えていた。 響も、咄嗟に頭を深く下げた。 響「社長!申し訳ありません。 僕のせいで……。 謹慎、脱退なんでも処分受けます!」 中尾「2人して処分?謹慎?脱退? そんなことする訳ないでしょ。 木田が居なくなったら、 FiVE DrinKどうするのよ?! 響が居なくなったら、 誰がセンターするのよ?」 中尾「もういい。座りなさい。」 一同ゆっくりと席に着いた。 秘書の野村がパソコンを プロジェクターに接続した。 中尾「今回の件だけど……。」 木田「インスタで広げます。」 中尾「はい?!」 変な声が出る中尾。 木田「メンバーが何も触れない。 というのはFiVE DrinKのノリとして おかしいと私は思います。 それなら、インライでもして 敢えてこの件に触れ、響をイジる。 笑いに変える。ということですよ。」 中尾「そ……そういう事ね……。」 パッ とプロジェクターに写った文章。 《コメント》 一般の方ですので、 お相手に関する詳細は控えさせて頂きます。 なお、現在出演中のBLドラマにおける役作りや演技研究の一環として、弊社マネージャーの友人の方にご協力頂いていたものと認識しております。 その方とは、親密な関係ではございません。 また、一般の方ですので、お相手の方への取材・詮索等はお相手側のご迷惑になりますのでご遠慮頂きますようお願い申し上げます。 この度は、弊社のタレントの軽率な行動によって、関係者の方々やファンの皆様にご迷惑やご不安、ご心配をお掛け致しましたことを深くお詫び申し上げます。 今後ともFiVE DrinK並びに弊社ReACTiO PROをよろしくお願いいたします。 代表取締役社長 中尾マサシ 押部「ま、無難だな。」 緑川「オレの時と全然違う……。」 楓「まぁ〜、あの時はねぇ〜……。」 響「……。」 黒川は響の心の中を察した。 そして、響の肩を優しく叩き、 黒川「今は、これで良い……。」 中尾「明日の朝、 このコメントを発表します。」 木田「かしこまりました。」 中尾「その後の、インスタライブの件や FiVE DrinKでどうするかは、 自分達で決めなさい。 ちなみに、これ以上話を大きくしたら 許しませんからね。」 木田「承知しております。」 ブッブッ 中尾のスマホが鳴った。 《吉川》 中尾「私の話はこれで終わり。 木田、逐一報告する事を忘れないで。」 中尾は足早に会議室を後にする。 木田「かしこまりました。」 ガチャ 廊下に出て通話をする中尾。 中尾「もしもし……。」 吉川「黒崎社長も動いています。」 中尾「RAYが??」 吉川「一ノ瀬ルナが また騒動を起こしたとか……。」 中尾「あっちもあっちで大変ねぇ。 報告ありがとう。」 ツーッ、ツーッ、ツーッ 中尾は立ち止まった。 違和感を覚え、 手を口元に持っていき考える。 中尾「一ノ瀬……ルナ……。 吉川が動いてる……。 ということは……。 何かする気ね……、RAY……。」 口元が緩む中尾。 ガチャ 野村「お待たせいたしました。」 秘書の野村が会議室から出てきた。 中尾「行きましょうか。」 野村「はい。」 野村「大丈夫でしょうか?」 中尾「何がですか?」 野村「さっきの…… FiVE DrinKのやり方ですが……。」 中尾「ほっときなさい……。」 呆れた顔で「ほっときなさい。」ではなく、 薄ら笑いで「ほっときなさい。」と言ってる。 その中尾の顔を野村は見逃さなかった。 野村(もしかして……。) 野村「この後の予定ですが……。」 中尾と野村は、 社長室へ戻っていった。 ━━━━━━━━━━━━━ --翌朝8時20分 野村が運転する車で 出社途中の中尾。 中尾「野村……、 次はスイーツのコーナーよ。」 野村「良い所あったら、 メモっといて下さいよ。 あ、あと社長の食べたいのもあったら。」 中尾「わかりましたよ……。」 これが毎朝の中尾と野村の日課であった。 中尾「これ、美味しそうね。」 野村「さっきのイチゴのパフェのお店 メモってくれました?」 中尾「メモってるわよ!!」 野村「あざーす!」 スイーツコーナーが終わり CMに入ったので、 メモをまとめる中尾。 そして……、CMが終わり……。 まだ中尾はメモを一生懸命まとめている。 男性アナウンサー 「速報です! 女優の一ノ瀬ルナさんが、 5歳年下の俳優 江口カケルさんと入籍されました。」 中尾の耳がピクっと動いた。 ゆっくり顔をあげる……。 画面のスーパーが目に入る。 《速報 一ノ瀬ルナさん入籍&独立発表》 男性アナウンサー 「一ノ瀬ルナさんは、 Crest Asterに所属する25歳。 今一番ノリに乗っている女優であり、 昨年には、大河ドラマにも出演。 益々活躍が期待されている一ノ瀬ルナさん。 お相手の男性は、 劇団明日(げきだんあした)に所属する 5歳年下の俳優 江口カケルさん。 また、一ノ瀬ルナさんは、 この入籍を機に所属事務所である Crest Asterを退所され、 独立されるとの事です。 一ノ瀬ルナさんから コメントが届いています。」 中尾は、メモとペンを座席に置いた。 中尾「野村……、聞こえた?」 野村「はい。」 スマホを取り出し電話する中尾。 相手は、響のスキャンダルを 載せようとした週刊誌の編集長。 プップップップッ…… 編集長「もしもし?!」 電話越しに周りが バタバタしてる音が聞こえる。 中尾「忙しそうね。 響の件のコメントを 送らせて貰ったんだけど?」 編集長「おかげさまでね! あ〜……、なんかきてたな。 今それどころじゃないから切るぞ!」 プーッ、プーッ、プーッ、プーッ。 窓を開け外を眺める中尾。 中尾「フフフフッッ。 RAYごときに助けられるとは……。」 そして、野村の方を向き、 中尾「RAYに届けて欲しいものが あるんだけど……。」 野村「かしこまりました。」 ━━━━━━━━━━━━━━━ --朝8時50分 木田の家 ブッブー、ブッブー、ブッブー 木田「え?もう起きる時間?」 眠い目を擦りながらスマホを取る。 《着信 吉川》 木田「吉川??」 木田「もしもし?」 吉川「おはようございます。 テレビ見ましたか??」 木田「いや……、今起きた所よ。」 吉川「今すぐテレビを見てください!」 木田「何よ……?もしかして?!」 響の事が、もうテレビにまで 報道されるようになったのか?! と思い慌ててベッドから飛び出し、 リビングのテレビをつける。 《速報 一ノ瀬ルナさん入籍&独立発表》 木田「え?何よ? 響の事じゃないじゃない。 もう!ビックリさせないでよ!」 木田は安堵しソファに倒れ込む。 吉川「良かったですね。」 木田は、その言葉にハッとした。 木田「もしかして……。」 吉川「そのもしかしてですよ! これで響くんのスキャンダルは、 無いものも同然。」 木田「……、良かった……。」 うっすら涙を流す木田。 吉川「良かったですね……。」 木田「教えてくれてありがとう。」 吉川「私は、他にも用があるのでこれで。」 木田「ありがとうね。吉川。」 プーッ、プーッ、プーッ、プーッ。 木田はすぐ響に電話した。 響「もしもし?」 木田「あなたのスキャンダル もう、どっかいっちゃったわよ!」 響「ん??」 木田「大物俳優の入籍報道で、 あなたのスキャンダル 吹っ飛んだのよ!」 響「そうなの?!」 木田「そう。これでもうこの件は終わり。」 響「良かった……。」 木田「もう、あんなことしちゃダメよ。 もっと自覚を持って行動しなきゃ。 守りたいんでしょ。 コウちゃんとの未来を。」 響「うん……。わかった。 もう……、あんなことしない。 コウタくんとの未来、オレが守る。」 木田「じゃぁ、また後でね。」 響「ありがとう。」 木田「私は何もしてないわよ。」 響「じゃぁ誰が??」 木田「それは……?」 響「コウタくんにも電話しとくね!」 木田「お願い。」 響「じゃぁ!」 木田「じゃぁね。」 ━━━━━━━━━━━━━━━ --数日後の夜 響の家 ピッ ガチャ 仕事から帰ってきた響。 「ただいまー」 ガチャ リビングから出てきた青山。 「おかえり。」 「コウタくん……。」 青山はすかさず響を優しく抱き、 頭を撫でる。 「良く頑張ったね……、偉いぞ……。」 腕を青山の背中にまわし泣く響。 「ごめんね……。」 親指で涙を拭ってあげる青山。 「もう謝らなくて良い……。 大丈夫だから……。」 強く抱き締める響。 「好き!」 頭を撫でながら応える青山。 「オレも……、好きやで。」 響が泣きやみ離すまで、 青山はずっと抱きしめ 頭を撫で続けた……。 ━━━━━━━━━━━━━ --Crest Aster社長室 ガチャ 阿川「社長お疲れ様です。」 黒崎「お疲れー。」 黒崎「うわっ!!!何これ?」 阿川「中尾社長からです。」 どうやって入れたのかと不思議なくらい 大きな可愛いクマのぬいぐるみが 社長室のソファに鎮座していた。 その横には、半分位の大きさの クマのぬいぐるみも。 恥ずかしさと、苛立ちが混じる感情。 黒崎「とことん癇に障る野郎だ!!」 バンっ! カバンをデスクに叩きつけた黒崎。 黒崎「阿川……、 ちょっと席を外してくれないか……。」 阿川「私が居ても良いのでは?」 黒崎「……。」 阿川「分かりました。 お車をご用意してお待ちしております。」 静かに立ち去る阿川。 ガチャッ 静かに社長室のドアが閉まる。 静寂に包まれる社長室。 外からは微かに救急車のサイレン。 ソファに近付く黒崎。 そっとクマのぬいぐるみを撫でる。 サラッ……、スーーッ。 黒崎「はぁ〜っ♡」 ぎゅっ♡♡♡♡ ほっぺをぬいぐるみにスリスリする黒崎。 黒崎「これだよコレ! おっさん、分かってんじゃん……。」 ━━━━━━━━━━━━━ --20分後 Crest Aster駐車場 ガチャ 黒崎「お待たせ。」 ミラー越しに黒崎を見る阿川。 若干、髪が乱れている黒崎。 その次に現れたのは、 もう一体のクマのぬいぐるみ。 阿川「ふふふっ……。」 黒崎「なんだよ……?」 阿川「なにも……。」 ウインカーを出し 車を発進させる阿川。 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ。 ヒュイーーン。 阿川「良かったですね……。」 黒崎「うっせぇ……。」 黒崎「来月は、山口行くんだろ?」 阿川「楽しみですね……。」 黒崎「楽しみだけどよ。 おっさんも来るのがめんどくせぇな。」 阿川「嬉しいくせに。」 黒崎「うっせぇわ……。」 クマのぬいぐるみを撫でながら、 外の夜景を見て少し微笑む黒崎。 黒崎「ほんとに……、 どいつもこいつも……。」

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