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第17話 限界

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 響の事が好き。 だけどまだ告白はしていない。 ドラマがクランクアップするまで 告白はしないで。と木田に言われている。 木田の元彼。 響からは、コウタくん。 木田からは、コウちゃん。と呼ばれている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) 青山の事が大好き。 だけどまだ告白はしていない。 仕事の事で頭がいっぱい。 アイドルグループ FiVE DrinKのセンター。 撮影中のBLドラマ「フタツノ ヒカリ」W主演で “浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。 落ち着いたら告白しようと考えている。 青山からは、ワタル。 木田からは、響もしくは、ワタルと呼ばれている。 ・押部リョウタ(おしべリョウタ) FiVE DrinKのリーダー。 明るくノリが良いムードメーカー。 思った事をすぐ口に出すタイプで、 FiVE DrinKの空気を一気に明るくする存在。 なんだかんだ周りをよく見ており、 気付けば騒ぎの中心にいる。 ・黒川ジン(くろかわジン) FiVE DrinKメンバー。 クールで口数は少ないが、感情が顔に出やすい。 ずっと響を想い、 その気持ちを伝える事なく響を支えていた。 しかし、青山の笑顔と、 手作りの明太子パスタに堕ちた。 今では黒川にとって、 青山コウタは“推し”になっている。 だが、TOKYO FINALの 打ち上げ以降、堀越と……。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKを預かる敏腕マネージャー。 青山コウタの元彼女。 青山からは、悪魔と呼ばれている? 響のスマホのLINEの名前は、 “天使か悪魔か”にされていたが “木田天”に変更された。 ・吉川キョウスケ(よしかわ キョウスケ) ReACTiO PRO所属。 新人女優、大空ユメのマネージャー。 人当たりが良く、 誰とでもすぐ打ち解ける柔らかい性格。 常に笑顔を絶やさず、 木田アスカにも懐いている。 しかしその裏では、 芸能界の様々な情報を独自に集め、 中尾や黒崎からも頼られるほどの情報通。 響のスキャンダル騒動でも、 水面下で大きく動いていた。 ・堀越サチ(ほりこしサチ) 青山が働く鉄道会社の後輩車掌。 熱狂的なFiVE DrinKファン。 響と黒川が推しだが、 TOKYO FINALの打ち上げ以降、 黒川と……。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --響の家 「なんでもっと早く 起こしてくれなかったの?!」 「しょうがないやん。 昨日、人身事故で仕事終わるの遅くなって、 ダッシュで最終の新幹線に乗って来て フラフラやったんやから。」 「今日大事なラストシーンの撮影するのに!」 「そんなこと昨日言ってなかったやん。」 「もういい!!」 響は怒ってそそくさと支度をし、 家を出て行った。 ガチャン!! 青山は、髪を掻きむしり ぶつけようのない怒りを紛らわしていた。 「あー!もう!!」 ソファにドン!と座り、 力が抜けるように寝そべる。 「最終で来たのに……。」 ━━━━━━━━━━━━━━ ピッ ウィーン ガチャ 響「お待たせ!」 木田「お……おはよう……。」 響「早く閉めて!」 木田「あ……、はい。」 ピッピッ ウイーーン カチャン。 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ……。 ヒュイーン 木田(え?何事??) 木田「響?どうかした?」 響「何が?!」 木田(ご機嫌斜めねぇー。 触らぬ神に祟りなし……。) 響(オレ何、怒ってんだろ?) 窓の外を見る響。 ━━━━━━━━━━━━━ --時計の針を戻して深夜0:30 ピッ ガチャッ ドサッ 青山「もう無理……。動けない……。」 リビングまで行く気力、体力もなく 玄関に座り、大きいリュックにもたれ、 崩れる青山。 玄関の開く音を聞き、 寝室から出てくる響。 ガチャッ 「コウタくん、おかえり。」 「ただいま……。」 「人身事故大丈夫だった?」 「最大2時間遅れ。 走り回ってほぼ休憩なし。 18時に終わる予定やったのに、 終わったのは20時30分。 それから急いで着替えて ギリ最終の新幹線に間に合った。」 「お疲れ様。」 「ありがとう。」 「シャワー浴びる?」 顔を上げ、 ゆっくりと立ち上がる青山。 「先に洗濯する……。」 「分かった。」 「響、明日は早いんやろ? 先、寝てて良いよ……。」 と言い、響の横を通り過ぎる青山。 「分かった……。」 壁伝いに歩き、 脱衣場へ入る青山。 バサッ、バサッ、バサッ。 バタンッ! ピッ……ピッ……ピッ……。 ドサッ。 洗濯機の操作が終わり、 座り込む青山。 「おやすみ……。」 響はその横を静かに通り過ぎた。 ガチャン。 響は寝室に入り、 青山は脱衣場で座り込む。 (何してんだろ?) (何してんだろ?) ━━━━━━━━━━━━━━━ --車の中 (コウタくんは疲れてるのに来てくれた。 なのに、オレは声をかけただけだった。) スマホを取り出す響。 タタタタタタタタタッ 〈さっきはごめんなさい。ボクが悪かった。〉 いつもならスグに既読になるはずのメッセージ。 〈既読〉の二文字は表示されない。 --5分後 未だに〈既読〉はつかない。 心が締め付けられる響。 スマホの画面に表示される青山の名前。 〈コウタくん〉 痺れを切らし通話する響。 着メロに設定している FiVE DrinKの「ずっと一緒」が流れてくる。 だが、青山は電話に出ない。 一度切り、もう一度かけ直す。 再び「ずっと一緒」が流れる。 切る、かけ直す。 切る、かけ直す。 切る、かけ直す。 バサッ スマホを持った手が座席に落ちる。 そして天井を見上げる響。 「嫌われちゃった……。」 木田「何か言った?」 「終わった……。」 木田「何が?」 「コウタくんと……。」 木田「………………」 木田「今……なんて言った……?」 「コウタくんに嫌われて、終わった。 って言ったのー。」 天井を見上げたまま、 放心状態で答える響。 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ。 ヒュイーン……。 ハザードを点け、 路肩に車を止める木田。 木田「え?なんで?」 「朝、ケンカしたー。」 木田「あなた達が……?ケンカ……?」 「悪いーー??」 木田「悪くはないけど……。」 「だから終わったーー。」 木田「なんでそうなるのよ?」 「LINEしても既読にならないし、 電話しても取ってくれなーい。 終わったーーー。」 木田「嘘でしょ?」 「終わったーーー。」 「オレもう生きる価値無しー。」 「芸能界辞めるーー。」 「FiVE DrinKも辞めるーー。」 「ドラマも辞めるーー。」 「何もかも辞めるーー。」 木田「ちょっと!ちょっと!ちょっと!待って!! と、と、とりあえず一旦……落ち着こう……。 ね、ワタルくん、一旦落ち着こう。」 「もーむりーー。」 「ひびきワタルはもう終わりましたーー。」 木田はすかさず青山に連絡する。 「ずっと一緒」が流れる。 だが、青山は出ない。 切る、かけ直す。 切る、かけ直す。 チラッとルームミラーで響を確認する。 口を半開けし、 天井を見上げ放心状態の響が目に入る。 【どうやら響は屍になったようだ】 木田「そうだ!」 木田「LINEがダメなら……。」 木田はLINE通話を諦め、 連絡先から青山を探す。 木田「あった……。」 プップップップッ……。 「おかけになった電話は、 電波が届かない所にあるか、 電源が入っていないため、かかりません。」 血の気が引いた……。 木田「う……そ……でしょ……??」 もう1回かけ直す。 プップップップッ……。 「おかけになった電話は、 電波が届かない所にあるか、 電源が入っていないため、かかりません。」 電話を切り、ルームミラーを覗く。 木田「キャーーー!!!!」 死んだ目をした響の顔が ドアップに映っていた。 木田は振り向くと、 目の前に死んだ目をした無表情の 響の顔があった。 響「どーだったーー??」 木田「しょ……少々……、 お待ちくださいませぇ……。」 木田はかける相手を変えた。 〈吉川〉 プップップップッ 吉川「おはようございます。吉川です。 どうかされましたか?」 木田「ごめん。ちょっと急なんだけど、 頼まれて欲しい事があって……。」 吉川「頼まれて欲しいこと?? ライバルの他事務所のアイドルを スキャンダルで潰しますか?」 木田「あなたも何を言ってるのかなぁー?」 吉川「いつでも潰せますよ……。」 木田「アホか。そんなことより、 場所教えるから今すぐ来て!!」 吉川「あ……はい……。」 今止まってる場所を教え、 吉川に来てもらうことに。 木田「今、吉川が来るから。 響をピックアップしてもらって、 私が響の家を見に行ってくるから。」 「ふーん。このどさくさに乗じて、 オレのコウタくん取る気でしょ?」 木田(ここにもアホが居たんだ。 特大のアホが……。) 木田「そんなことしません!」 ブッブー、ブッブー、ブッブー 木田のスマホが鳴る。 木田、響が画面にかぶりつく!! 〈堀越〉 咄嗟に響が木田のスマホを取り上げる。 ピッ 「もしもし〜?堀越さん?なにー? もしかして、あなたも、 このどさくさに紛れて……」 木田「バカ!何言ってんの!!」 暴走した特大のアホが 良からぬ事を言う前に、 スマホを取り上げる木田。 木田「もしもし〜。木田です〜。 堀越さん、お久しぶり〜。 どうかされましたか〜??」 堀越「スっスっスっ……。」 啜り泣きが電話口から聞こえた。 木田「ど……どうしたの?」 堀越「スっ……スっ……、 ジンくんが……、ジンくんが……。」 堀越「LINE既読無視するんです!!」 ピッ 即座に〈通話終了〉を押す木田。 木田(何も聞いてない。何も聞いてない。) タッタッ 〈黒川ジン〉 プップップップッ 黒川「おはようございます。」 木田「おはよう。」 黒川「木田さん迎えに来るの今日でした?」 木田「違うの……。 今、響といるんだけどね。」 黒川「コウタくんとケンカして、 『人生終わったー。』とかほざいてます?」 木田「あっ……。察しがいいわね。 ていうか、そんなことより!あなた! 堀越さんとLINEしてるでしょ?!」 黒川「はい。」 木田「ちゃんと返信してあげてるの?!」 黒川「あ、はい。」 木田「ジンが既読無視するって、 堀越さん泣いてたわよ!!」 黒川「今、隣に居ますけど。」 木田「え?」 黒川「だから、 堀越さん、今隣に居ますよ?」 木田「どういうこと??」 黒川「どういうことと聞かれても……。」 木田「まさか……。」 プーッ、プーッ、プーッ、プーッ。 通話を切られる木田。 木田「チッ!どいつもこいつも……。」 響「なんで、 ジンくんと堀越さん一緒にいるの?」 木田「知る訳ないでしょ!!」 イライラが募る木田。 すると前に割り込む車が……。 木田「あ〜、やっと来たぁ。」 木田「響!吉川くんに送ってもらって!」 響「オレ家に帰りたい。」 木田「ダメよ! 今日ラストシーン撮らないと いけないんだから!」 響「やる気スイッチ折れましたーー。」 木田「つべこべ言わずに、 さっさと移動して!!」 響「ハァ……。」 黒い……いや、真っ黒な影が 吉川の車へゆっくりと移動する。 そして、黒い影、いや、 響を乗せた車が動き出した。 木田「はぁ……、さて、行きますか。 とりあえず、響の家か……。」 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ。 ヒュイーーン。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --506 響の家の前 ピンポーン……。 ピンポーン……。 木田「どっか行ってるのかしら?」 静かなマンションの通路。 だが、部屋の奥から何やら聞こえる。 ジャーーー。 木田(何の音??……水の流れる音??) 玄関の扉に耳を当てる木田。 ジャーーー。 確かに水の流れる音が聞こえる。 胸騒ぎがする木田。 木田「え?嘘でしょ?!まさか?!」 響から預かっている カードキーを出し解錠する。 ピッ ガチャ 玄関を開けると、 水の流れる音がハッキリと聞こえる。 ジャーーーー。 走る木田。 ダッダッダッダッダッ、 ガチャ 脱衣場に行き、 お風呂場の扉を勢いよく開ける。 ガッ!! 青山もいなければ、 水も流れていなかった。 一番懸念していたことが無くて ホッとする木田。 力が抜け、 ゆっくりとお風呂場、 脱衣場を後にする。 水の流れる音は、 リビングの方から聞こえていた。 ゆっくり、リビングの扉を開ける。 ソォ〜 少しずつリビングが見えてきた。 すると、 ソファで横になっている青山がいた。 木田は、青山に駆け寄り、 肩を揺らす。 木田「コウちゃん!コウちゃん!!」 反応しない青山。 青山の身体を大きく揺さぶる木田。 木田「コウちゃん!!」 ゆっくり目を覚ます青山。 青山「……ん……?」 目を擦りながら木田を見る青山。 青山「なんか……、忘れ物……??」 木田「違うわよ! さっきから何度も連絡してるのに 出なかったから心配して来たのよ!」 意味が分かってない青山。 ボーっとしている青山。 青山の顔が赤く染まっていた。 木田は、青山の額に手を当てた。 木田「ちょっとあんた! 熱あるじゃない!!」 青山「大丈夫……。」 立ち上がろうとする青山。 ガクっ 咄嗟に木田にもたれかかる青山。 木田「どこがなのよ。」 木田「座って。」 木田「ちょっと待ってて。」 そう言い、 水が流れる音のする方へ急ぐ。 キッチンの流し台で 蛇口から水が出しっぱなしだった。 ジャーーー。 サッ ポトッ。 食器棚から、 コップを取り水を入れる。 サッ ジャー サッ 青山の元へ戻る木田。 木田「とりあえず、水飲んで。」 木田「コウちゃん、 水、出しっぱなしだったわよ!」 青山「……ごめん……。」 木田「とりあえず横になって。」 青山「……うん。」 木田「ところで、 電話掛けたんだけど覚えてる?」 青山「……そうなの??」 目線でスマホを探す青山。 テーブルの上にあるスマホを見つける。 青山「そこ、テーブルの上。」 木田は振り向きテーブルを見る。 木田「あ、これね。」 青山のスマホを手に取る木田。 スマホの画面は真っ暗。 画面をタップする木田。 タッ、タッ、タッ……。 木田「電源切ってる??」 青山「そんなことする訳ないやん。」 スマホごと青山の方へ向き直す木田。 青山「…………スゥ…………。」 木田「ホント、 昔から変わらないんだから……。」 青山の乱れた髪を掻き分け、 整える木田。 ブッブッ 木田のスマホが鳴る。 響からのLINEだった。 〈ワタル〉 〈コウタくんとイチャイチャ してんじゃないでしょうね??〉 頭を抱える木田。 木田「問題は、こっちだった……。」 ━━━━━━━━━━━━━━ --吉川の車の中 後部座席で、 響が何かを歌っている。 静かに聞いている吉川。 すると、段々と大きくなる歌声。 響「恐いぃくら〜い、覚えてるのぉ〜……」 吉川(HYの366日??) 響「あなたの匂いや、仕草や全てをぉ〜……」 吉川(響さんって、 こんなに節を付ける人だったっけ?) 歌い終わり静まる車内。 吉川(終わりましたね。) 響「さよならが喉の奥にぃ つっかえてしまって〜……。」 吉川(あ……、2曲目ですか……。) 吉川(今度は、 back numberのハッピーエンド?) 吉川(ということは……??) 響「青いままぁ!枯れていく〜っ!」 吉川(きますよね〜……。 というか、FiVE DrinKのセンター 響くんが歌う失恋ソングの カバーを聴けるなんて、 私はなんて幸せ……) 吉川(……え……??) ミラー越しに響を見る……。 心ここに在らずで、 勢いに任せて歌う響。 吉川(失恋ソング……??) 吉川(し……つ……れ……ん……??) 1.5秒 吉川「えーーーー!!!」 いきなり吉川が叫び、 びっくりする響。 響「わっ!わっ!わっ!何?何?何?!」 あまりの衝撃に、 吉川は路肩に車を止める。 響「吉川さんどうしたの?!」 吉川「失恋ってどういうことですか?!」 響「あー、コウタくんとね……。 ちょっと……。」 吉川「私、響さんの為に、 裏であんなことや、こんなことや、って、 色々動いてたんですよ! 一ノ瀬ルナの件だって!! あの人のコメント取るの 大変だったんですよ!! それなのに別れただとぉ?! オレは許しませんよ! 吉川は、許しませんからね!!」 響「…………。」 いつも静かで腰の低い吉川が 大声を出し、口早に話すのを見て、 引く響。 吉川「ホントに!こっちだって ヒヤヒヤしたんですから……。 中尾社長と黒崎社長を……」 響「何それ?? 一ノ瀬ルナのコメント??」 我に戻る吉川……。 吉川「……え……?」 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ……。 響「ま、いいや。」 響「木田さんから連絡来ないなぁ。 LINEしてみよ。」 タッタッタッタッタッタッタッタッ 〈コウタくんとイチャイチャ してんじゃないでしょうね??〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --響の家 響に電話する木田。 プッ、 響「もしもし!」 木田「早っ!仕事の連絡も その速さでお願いしたいわね。」 響「で、どうだった??」 プチッ 木田の中で、 何かが切れる音がした。 木田「あんた! どれだけコウちゃんに無理させてんのよ?! コウちゃん倒れてたわよ! 響、分かってる? アナタが忙しいのは分かる。 コウちゃんは、 大阪から来てること分かってる?? ワタルは仕事終わる度に、 大阪に行くことを考えた事ある? コウちゃんの体調の事とか考えた事ある? いくら会いたいからと言っても 限度というものがあるでしょ!」 響「…………。」 木田「いい?ワタル……。 明日から、大阪から通いなさい。 大阪のコウちゃんの家から通いなさい。」 響「え……?……、 仕事が夜遅くに終わったら……。」 木田「深夜の高速バスがあるじゃない。」 響「でも、次の日仕事だったら……。」 木田「数分会って、 それから朝、新幹線で現場に行きなさいよ。」 響「休みないよオレ?」 木田「コウちゃんは、 休みの日を全てアンタに 捧げてるのわかんないの!! コウちゃんの休みはどこよ? ねぇ!どこよ!!」 響「でも……、 コウタくんは大丈夫……って……。」 木田「コノ馬鹿は、 大丈夫しか言わないのよ!! アンタが一番分かってるでしょ!!」 木田「何が幸せにするよ……。 何がコウタくんを守る。……よ。」 木田「守ってないじゃない! 守れてないじゃない!」 自分の忙しさにかまけて 青山の事を考えてなかったのだと、 気付かされる響。 響(オレが……、オレは……。) 響(自分が一番しんどいものだと思ってた。) 響(でも……、 コウタくんだってしんどいよね。 仕事終わる度に大阪から来てくれて、 そして、東京から大阪の会社へ通ってくれる。 全ては、オレのため。) 響(オレには出来るんだろうか? 仕事終わる度に、大阪へ行って、 大阪から東京の現場に通う……。 1回や2回なら、まだ何とかなるかもだけど、 流石にずっとは無理だ……。) 木田「ひびき!聞いてんの?!」 響は、言葉を絞り出した。 響「……ごめん……なさい……。」 木田「私に謝るより、コウちゃんに謝って! そして、ちゃんと二人で話なさい!」 木田「今、コウちゃん熱出して寝てるから。」 木田「スマホ、充電せずに寝たみたいよ。 もう全然、余裕が無かったんじゃない?」 響(そう、コウタくんが洗濯機の前で 力尽きて座ってるのを オレは横目で見ていた。 なのに、“明日は早いから”って 見て見ぬふりしてた。 コウタくんの方が絶対にしんどいのに……。) 響「オレ、今から帰って……、」 木田「まだ寝惚けた事言ってんの?! コウちゃんがそれで喜ぶと思う?? コウちゃんは、 響に気分よく仕事をして欲しいから 来てるんじゃないの? それが仕事を放り出して帰ってくる?? コウちゃんの努力は一体何?? 響は今日、 ラストシーンの撮影で一番重要な日! 今から帰る?!ふざけないで!! 帰って来たら、私、一生許さないから。 ひびきのこと一生許さないから。」 響「じゃぁ……、 オレは……、どうすれば……。」 木田「響は、今与えられた仕事を 精一杯、頑張って来なさい。 あなた、 事務所でラストシーンの練習してた時、 なんて言ったか覚えてる?? 『このラストシーンで、 また、コウタくん堕とすんだ!』って。」 木田「今の響なら、 コウちゃん堕ちないわよ。 もしかしたら、 ホントに振られちゃうかも……。」 響「それは嫌だ……。」 木田「じゃぁ、どうするの?」 響「オレの本気見せる……。」 木田「こっちは任せて。」 響「うん。 コウタくんが頑張って来てくれた分、 オレも頑張る。」 木田「じゃぁ、またあとで。 いってらっしゃい。」 響「いってきます。」

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