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第19話 究極の選択

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 響の事が好き。 だけどまだ告白はしていない。 ドラマがクランクアップするまで 告白はしないで。と木田に言われている。 木田の元彼。 響からは、コウタくん。 木田からは、コウちゃん。と呼ばれている。 響に会うため、 仕事の度に大阪と東京を往復していたが、 ついに体力の限界を迎えてしまう。 そんな青山の元に、 FiVE DrinKの新マネージャーになるという 新たな選択肢が舞い込んだ。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) 青山の事が大好き。 だけどまだ告白はしていない。 アイドルグループ FiVE DrinKのセンター。 撮影中のBLドラマ「フタツノ ヒカリ」W主演で “浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。 落ち着いたら告白しようと考えている。 青山からは、ワタル。 木田からは、響もしくは、ワタルと呼ばれている。 仕事の忙しさから青山に無理をさせていた事に気付き、 二人のこれからを考え始める。 ・黒川ジン(くろかわジン) FiVE DrinKメンバー。 クールで口数は少ないが、感情が顔に出やすい。 長い間、響を想い続けていたが、 その気持ちは伝える事なく、 響の幸せを優先し支えてきた。 青山と出会い、 今では青山コウタを“推し”として慕っている。 TOKYO FINALの打ち上げをきっかけに、 堀越サチとの距離も少しずつ縮まり……。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKを預かる敏腕マネージャー。 青山コウタの元彼女。 青山からは、悪魔と呼ばれている? 響のスマホのLINEの名前は、 “天使か悪魔か”にされていたが “木田天”に変更された。 青山と響の将来を考え、 青山にFiVE DrinKの 新マネージャーになることを提案した。 ・吉川キョウスケ(よしかわ キョウスケ) ReACTiO PRO所属。 新人女優、大空ユメのマネージャー。 人当たりが良く、 誰とでもすぐ打ち解ける柔らかい性格。 常に笑顔を絶やさず、 木田アスカにも懐いている。 しかしその裏では、 芸能界の様々な情報を独自に集め、 中尾や黒崎からも頼られるほどの情報通。 響のスキャンダル騒動でも、 水面下で大きく動いていた。 その情報網と行動力の全貌は、 まだ誰にも見えていない。 ・社長/中尾マサシ(なかお マサシ) FiVE DrinKが所属する芸能事務所 ReACTiO PRO(リアクティオ プロ)の社長。 人を見る目に長けており、 響ワタルをスカウトした張本人。 穏やかな口調とは裏腹に、 時には冷酷な判断も下す。 その人が売れる為なら、 自ら悪役になることも厭わない。 木田やFiVE DrinKからの信頼も厚い。 元所属タレント・黒崎零とは、 複雑な因縁と信頼関係を持つ。 フリーザの声に似ているらしい? 現在は青山コウタにも興味を持ち、 水面下で動き始めている。 ・野村リカ 中尾社長の秘書。 中尾が役者時代の3代目マネージャーとして 支え続け今では中尾の右腕として働く。 中尾の事を一番良く知る人物。 ・黒崎零(くろさき れい) 芸名 RAY-K(レイケイ) 芸能事務所 Crest Aster(クレストアスター)の社長。 元アーティストであり、 圧倒的なカリスマ性と実力で 事務所を大手へ押し上げた叩き上げの男。 勝ち気で口も悪く、 かつてはReACTiO PROに所属しており、 中尾社長には反抗的な態度を 取っていたが、 誰よりもその実力と 人を見る目を信頼している。 向上心が強く、 常に“勝つこと”を求め続ける。 所属タレントには厳しいが、 その才能と人生には本気で向き合う。 実はモフモフしたものが好き? ・兎波奏(となみ かなた) アイドルグループ VIREST(ヴィレスト)のセンター。 「フタツノ ヒカリ」で 響ワタルとW主演を務める若手人気俳優。 クールで近寄り難い雰囲気を持ち、 ドSキャラとして人気を集めている。 響ワタルを尊敬しており、 共演をきっかけに親しくなる。 現在は、 響の恋愛相談相手にもなっている。 自身も気になる男性がおり、 少しずつ距離を縮めようとしている。 所属事務所は、 Crest Aster(クレストアスター)。 黒崎零(RAY-K)からは、 「かなた」と呼ばれている。 葉山智也(はやまともや) 兎波奏のマネージャー デビューの時から兎波の事を 支えている。 阿川聖哉(あがわせいや) 元芸名、SEIYA(セイヤ) Crest Asterの副社長 黒崎の側近。 ReACTiO PRO在籍時の同期。 黒崎の事を良く知る人物の一人。 ・桜木悠真(さくらぎ ゆうま) 兎波奏が気になっている男性ファン。 ━━━━━━━━━━━━━━ --響の家の前 カッチ、カッチ、カッチ、カッチ……。 木田「コウちゃんとちゃんと話し合うのよ。」 響「うん。」 木田「アイツの大丈夫は、信じちゃダメ!」 響「わかった。」 ピー ガチャ ウィーン 響「ありがとう、お疲れ様でした。」 木田「お疲れ様。」 ピッピ ウィーン ガチャン 響の背中を目で追う木田。 その背中は、 アイドル響ワタルの背中ではなく、 1人の青年の背中だった。 どこか不安で、 どこか自信のなさげな小さな背中。 木田「もう少しだけ……、 我慢してちょうだい……。」 木田「さ、事務所に帰って、 山口へ行く準備でもしますか!」 ハンドルを持つ手が目に入る。 剥げたネイルが多忙な日々を物語る。 「あと、ネイルサロンも行かなきゃ。 ここの所私もバタバタしてたし。」 ヒュイーン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --響のマンションエレベーター内 響(どういう顔をして会おう?) ガチャン エレベーターの扉が開く。 スタ……スタ…… 会いたいのに、抱き締めたいのに、 足取りは重い。 玄関の扉が、そそり立つ壁に見える。 今にも自分に倒れそうな脆い壁に。 響「どうしよ?どうしよ?何て言おう? どんな顔したら、あぁー……。」 ガサゴソ いつもは、エレベーターの中で カードキーを出してるのに、 それさえも忘れていた。 カバンの中から財布を取り出す。 いつもなら、 スっと出せるはずのカードキーは、 中々出てこない。 重い空気が響を包む。 響「はぁ……。」 ガチャ 響(え?) ゆっくり扉が開く。 そして、ゆっくりと青山が現れる。 笑顔で……。 青山「おかえり。」 ツーッ 響の頬に涙が伝う。 バッ!! 響「ごめんなさい!」 青山「え?!」 響「ごめんなさい!!」 青山「とりあえず家に入ろっか……。 次、撮られたらもう言い訳出来ないよ?」 響「そだね。」 パタン ゆっくりと閉まる玄関の扉。 響「どこか行く予定だったの??」 青山「なんで?」 響「ドアがいきなり開いたから。」 青山「え?あんなに独り言言っといて??」 響「え?」 青山「廊下を掃除してたら、 外から『どうしよ?どうしよ? 何て言おう?どんな顔したら、 あぁー……。』って。」 響「え?」 青山「え?じゃないよ。」 響「だって……。」 青山「ワタルは、 いつも通り笑顔で『ただいまー!』 で良いねんで。 じゃなきゃ、オレが心配しちゃう。」 響「からかってる?」 青山「どこが?」 青山「ワタルの笑顔が一番好き!」 照れる響。次第に俯く。 青山は、両手で響の頬を包み顔を持ち上げる。 重なる唇……。 ゆっくりと腕を青山の背中にまわす響。 ドサッ カバンが落ちる。 今までのしんどさや 不安を振り払うかのように激しく重なる唇。 響「ベッドで続きしよ?」 青山「いいよ……。」 響「でも、もうちょっと!」 お互い抱き締めあい、唇を重ね合う。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --ベッドの中 響「ごめんね。コウタくんのこと……。」 青山「大丈夫だよ。」 響「ふっ……。」 笑い出す響。 青山「ん?」 響「ホント、大丈夫しか言わないね。」 青山「そ……そう??」 響「大丈夫禁止!」 青山「えー?」 響「きんし!!」 人差し指を青山の唇に当てる。 青山「はーい。」 響「熱、もう大丈夫??」 青山「大丈夫だよ。あ……」 響「プププッ」 青山「今のは、ワタルが悪いだろ。」 響「時間大丈夫??」 青山「…………。」 響「大丈夫??」 青山「問題ございませんわよ。」 響「くっ……うっ……、 もう無理!ハッ!ハーーッ!」 響「も、問題ございませんわよ…… くっ……」 ベッドの上で笑い転げ回る響 青山「ワタルが言わせたんやん!」 響「マジで、コウタくん大好き!」 満面の笑みで言う響。 青山「オレもワタルのこと大好きやで。」 優しい笑みで返す青山。 バッ! 抱き締め合う二人。 響「ちゃんとコウタくんのこと考えるね。」 青山の胸の中で伝える響。 青山「ありがとう。」 響の頭に顔を付け応える青山。 ゆっくり流れる幸せなフタリの時間。 誰の邪魔も入らない特別な空間。 ブッブッ スマホが震える。 黒川〈コウタくんと仲直りできたか?〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --数時間後 ソファで冊子を見る青山。 1ページずつ、ゆっくりと目を通す。 青山(このまま遠距離を続けるか、 それとも、近くに家を借りて FiVE DrinKのマネージャーになるか。) 青山(でも、 オレがFiVE DrinKのマネージャー?? そんなのオレに務まるのか?? それに直属の上司がアスカやろ?) 青山(ん?響と黒川担当?) もう一度、組織図を見る ・FiVE DrinK統括マネージャー 兼 押部、緑川、楓担当マネージャー 木田アスカ ・FiVE DrinKマネージャー 兼 響、黒川担当マネージャー 青山コウタ 青山(なんで、そこまで書いてあるんだ?) 右上の日付が目に入る。 【2027年4月】 青山(え?来年??) 青山「と、すれば、今年中に決めないとな。」 青山(どうしよ……?) 青山(このまま遠距離でも……。) 青山(心と身体が持たない……。) 青山(近くに住んで、 FiVE DrinKのマネージャー……。) 青山(今の仕事辞めたくないな……、 せっかく夢が叶ったのに……。) 目を閉じる青山。 ミーン、ミーン、ミン、ミー チリンチリン……、チリンチリン……。 暑い夏の蝉の声。 縁側で鳴る風鈴の音。 カンカンカンカンカンカンカンカン♪ 近くの踏切が鳴る。 青山少年5歳。 青山「電車が来る!!」 おばぁちゃんの家の真横に電車の線路。 急いで、2階に上る青山少年。 おばぁちゃんが2階で、洗濯物を干していた。 おばぁちゃん 「そんなに急いでもまだ来んよ……。」 青山少年「なんで?」 おばぁちゃん「来る汽車が分かるからね。」 毎日同じ時間に電車が来る。 長い間住み続けると、 来る電車の方向が分かるようになる。 電車が時報みたいな感覚。 カタカタカタカタカタ……。 小さい音が次第に近付いて来る……。 ガタン……、ガタンゴトン…… ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 青山少年「カッコイイ!!」 おばぁちゃん 「コウちゃんは、 将来、電車の運転士さんかな??」 青山少年「うん!!」 おばぁちゃん「そりゃ、楽しみだ!」 青山(そう……、 運転士にはなれなかったけど、 電車には乗れている。 ずっと好きでいて、 ずっと諦められなかった夢。 めちゃくちゃ遠回りして、 やっとなれた車掌。) 目を開ける……。 クーラーの効いた部屋。 カーネーションの匂い。 響の匂い。 落ち着いた空間。 電車の欠片もない。 青山「あー……、どうしよう……?」 パタッ……。 手に持った冊子はソファに落ち そのまま寝てしまう青山。 ペラ……、ペラ……。 紙をめくる音……。 響の匂いがする。 青山(響、起きたのかな??) 響「何これ……、え……?マジ……??」 青山(どうしたんだろ? 何に驚いてるんだろ?) 響「もしもし、ジンくん。」 響「コウタくんが、 ボク達のマネージャーになるらしいよ!!」 バッ!! ビックリして目を覚ます青山。 ギ……ギギギ……。 ゆっくり首を右に回す。 恐怖で首が上手く回らない青山。 青山の横で黒川に電話してる響。 手元には、さっきまで青山が読んでた冊子。 青山「あーー!!!」 慌てて、冊子を奪い取り、通話を切り、 カバンにしまう青山。 青山「さ、ご飯でも作ろうかなぁ?」 背伸びをし、何事も無かったかのように リビングに行こうとする青山。 響「君……、ここに座りなさい……。」 青山「あ……、はい……。」 正座して縮こまる青山。 響「さっきの、もう一度見せて。」 青山「いや……、あのぉ……、それは……。」 響「み……せ……て……。」 青山「こればっかりは……、 ちょっとぉ……。 見せれない……というか……、 お見せ出来ない……というか……。」 響「明日からの仕事……、 キャンセルしようかなぁ?」 スマホの画面を見せてくる響。 〈木田天〉 〈通話〉・〈メール〉 〈通話〉の近くに親指。 青山「響さん、それはダメですよ。 ちゃんと仕事はしないと。仕事は……。」 響「でも、担当マネージャーが 隠し事してるんですよねぇ。隠し事を……。」 青山「世の中には、知って良い事と まだ知らない方が良い事がございましてね。 響さん。」 響「へぇー……。」 響「あーもうむりーー。」 響「ボク仕事できなーーい……。」 響「マネージャーに隠し事されて、 傷ついて、ボク仕事できなーーい。」 綺麗な棒読みの響。 ブッブ、ブッブ……。 スマホが鳴る……。 〈ジンくん〉 青山の顔が青ざめる。 青山「取らない……」 取らないでね。と言いかけた時。 ピッ 響「もしもし〜。」 黒川「もしもし、てか今のなんだよ!!」 スピーカーにされ、ジンの声が聞こえる。 響「あーそれねー。今、本人が目の前にいるから聞いてみなー。」 黒川「コウタくん、 オレと響のマネージャーになるって本当ですか??」 青山「いやぁ……、それは……。」 響「さっきからこうなのー。 ボク達の専属マネージャーがねー、 こうやってはぐらかすのーー。 どう思うーー?ジンくーーん。」 黒川「ふーん。そうなんだー。 そしたら、詳しい話を、 ちゃんと、二人で聞かないとねー。」 ピンポーン♪ 響「あれれ〜?こんな時にお客さんだー。」 響「誰だろう??」 響は、ドアホンの前に立ち、カメラに写った客を見る。 響「あれれ〜?おっかしいなぁ? ジンくんだぁ〜。」 ピッ 響「今開けたからどーぞーー。」 ガチャ ドッドッドッドッドッ……。 青山にとっては正に、ホラー。 青山(夢であってくれ!!) ガチャ! 響「ジンくん!いらっしゃぁーーい!!」 青山(終わった……。) --リビングにて3者面談 ソファに座る響と黒川。 そして、テーブルを挟み、 正座して床に座る青山。 響「ねぇ、マネージャー。 さっきの見せて。」 青山「そればっかりは……、 しかもまだ決まった訳でもないので……。」 黒川と響は見合ってニヤッと笑い、 2人ともスマホの画面を青山に見せた。 どちらも、 画面を押せば木田に電話出来る体勢。 青山は観念し、 冊子をテーブルに差し出した。 響が手に取り冊子を開く。 黒川が響にピッタリとくっつき冊子を覗く。 ペラッ……。 黒川「めくるの早い!」 響「あ、ごめん。」 ペラッ 前のページに戻す響。 黒川「何この組織図……。」 響「2027年4月だって。」 黒川「マジで、オレと響のマネージャーに なってるじゃん……。」 響「みんなに教える?」 黒川「やめとけ。FiVE DrinKが分裂する。 多分、コウタくんを巡って、殺し合いが始まる。」 響「あ〜、なりかねないね。」 ペラッ ページをめくる響。 黒川「もう、育成スケジュールまで 出てんじゃん!!」 響「誰が作ったんだろ?木田さん?」 黒川「いや、これは……、中尾だ……。」 響「なんで??」 黒川「オレたちのデビュー前、 この事務所に入った時、 似たような冊子見た。」 響「……あ!!ちょっとまって!!」 響は急いで、寝室に戻って行った。 ゴソゴソ……ゴソゴソ……。 響が戻ってきた。 響「これ……。」 テーブルに乗せられた2つの冊子。 綴じ方も、紙の材質も、書き方も 全く同じ冊子。 一つは、青山が持つ 【FiVE DrinK 新マネージャー採用計画】 作成 木田アスカ もう一つは、響が持つ 【FiVE DrinK 響、黒川育成計画】 作成 中尾マサシ 黙り込む3人。 響「これ、社長……動いてるよね……。」 黒川「あぁ……、動いてる……。」 響「コウタくん……、コレ……、 社長、マジなやつだよ。」 黒川「リアルに見たらダメなやつだったな。」 響「本当にコウタくんが、 ボク達のマネージャーになるんだね。」 黒川「あぁ、確実に……なる……。」 ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ……。 緊張感を切り裂くかのように 青山のスマホが鳴る。 〈アスカ 着信〉 青山「こんな時に……。」 ピッ 青山「もしもし……。」 木田「もしもし〜コウちゃん! 具合どう?良くなった〜??」 青山「最悪だよ。 そして、電話かけてくるタイミングも 最悪……。」 木田「え?なんで??」 青山「冊子……、響にバレました。」 木田「え……??」 時間が止まる両者。 木田「アンタ何やってんの?! ウソでしょ?! 響には見つかったらダメ!って言ったよね? バカじゃないの!? なんで見つかるかなぁ?! バカ!!アホ!!マヌケ!!」 あまりの罵声に 耳をスマホから遠ざける青山。 ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ……。 ピッ 黒川「統括マネージャーの雷が落ちたな。」 響「特大の。」 ブルブルブル……。 三人とも一気に寒気がした。 黒川「さて、オレは帰るかな……。」 響「なんで??」 黒川「嫌な予感しかしない……。」 響「オレを見捨てる気?」 黒川の腕を掴む響。 黒川「今寒気しただろ!」 黒川「ヤツがくる!」 ピッ ガチャ 響、黒川、青山「え……?」 三人の目がリビングの扉に釘付けになる。 ドッドッドッドッドッドッ……。 正にホラー。 ガチャ 実際は一瞬なのに、 三人には、ゆっくり開いて見える扉。 そこには、もちろん木田が立っていた。 青山の所へ行き、胸ぐらを掴む。 木田「何してくれてんのよ!アンタ!」 青山「ご……ごめんなさい……。」 木田「機密事項を漏らすなんて、 マネージャー失格よ!!」 青山を突き放す木田。 黒川「じゃぁ、オレは帰ります。」 木田「そこに座んなさい。」 黒川「あ、はい。」 木田「これはあくまでも、 コウちゃんへの提案。」 木田「何も決まっていません!」 木田「FiVE DrinKの マネージャーになりませんか?のお誘い。」 木田「だから、 コウちゃんがOK出さない限り 動かない話なの。」 木田「この話、二人だけに留めといてよ。 あと三人加わるとか地獄でしかないわ。」 木田「FiVE DrinKが、 解散しかねない話なんだから!」 黒川「すいません。実は……。」 スマホを木田に見せる黒川。 そこには、FiVE DrinKのグループLINE 黒川〈コウタくんが FiVE DrinKのマネージャーになるらしい!〉 楓〈マジ?!木田マネはクビ?〉 緑川〈仕事増えるな!〉 押部〈嘘でしょ。ソースは??〉 足が崩れ座り込む木田。 木田「終わった……。」 響「ちょっと待って! なんでジンくんみんなにLINEしてるの?? ジンくんみんなには言っちゃダメって 言ってたよね。」 黒川「あれは、 響とオレの担当マネージャーになる。 って書いてあったから。 それを、押部、緑川、楓が知ったら、 分裂か解散するかも。って。 でも、オレがLINEしたときは、 FiVE DrinK全体のマネージャーになると 思ってたから。」 響「早とちりしたって訳ね。」 黒川「この件に関しては、オレが悪い。 ごめん。」 木田「分かってると思うけど……。」 黒川「言わないよ。 バックがバックだから……。」 木田「バック??」 黒川「社長でしょ?」 木田「……。」 黒川「そこの冊子見てよ。」 テーブルの上にもう一冊ある冊子。 全く同じ紙質、全く同じ綴じ方。 【FiVE DrinK 響、黒川育成計画】 木田「これは……。」 黒川「木田さんが、 マネージャーになる前のやつだから、 見たことないかもだけど。」 木田「参ったわね……。」 黒川「だから、オレも響も言わないよ。」 木田「そうしてくれると助かるわ。」 目をキョロキョロさせる青山。 青山「社長さんって……、 そんなにヤバい……の?」 木田、黒川、響 「会ったら分かる。」 青山(一番怖いやつやん……。) ━━━━━━━━━━━━━━━ --数日後 黒川「これで入れるもの終わりか?」 響「多分。」 黒川「多分って……。」 キャリーケースに詰め込まれた着替え類。 キャリーケースを閉じようとする黒川。 バリバリバリバリ……。 黒川の顔が青ざめる……。 黒川「今の何の音……??」 キャリーケースを再びゆっくりと開け 上の着替えを取り出す黒川。 【ポテトチップス うすしお味】 黒川はゆっくりとキャリーケースを閉め、 上に乗った。 バリバリバリバリ……。 黒川「アイツはバカか?! 粉々になったポテチでも食いやがれ!」 ギ……ギ……ギーーーー。 キャリーケースのチャックを閉めた黒川。 そこに響がフラフラと来た。 響「ねぇ、ジンくん。 オレのポテチ知らない?」 黒川「は……?知る訳ないじゃん!」 響「昨日、準備してて、 ポテチ食べたくなって、ここに持ってきて。 あ!パンツ入れてない。 と思ってパンツ取りに行ったら、 カーネーションが元気なくて。 水入れなきゃ!って水を取りに行って……。」 黒川「で、パンツは?」 響「今持ってきた……。」 黒川「お前、入れるもの終わりか? ってオレ、聞いたよな??」 響「だから、多分。って言ったじゃん。」 黒川「また、コレを開けるのか??」 響「じゃないと入れれないよ?」 黒川「いや、もう次開けると、 オレ閉める自信ないわ。」 響「どうすんのよ!? オレにノーパンで過ごせって言うの?! トップアイドルの響ワタルに!!」 黒川「とりあえず、鏡見てから、 もう一回同じこと言ってくれ。」 響「え?」 仕方なく洗面台に向かう響。 ガチャ。 ガチャ。 ボサボサの髪、無精髭、だらしないTシャツに短パン。 ニート感は100点だった。 するとリビングの扉前でいきなり、 響「FiVE DrinK!響ワタルだよ!!」 キメポーズをする響。 黒川「次のLIVEのアンコール、その格好な。」 響「言っとくけど、オレがこの格好なら、 みんなもこの格好になるよ??」 黒川「なんでだよ!!」 響「仲間じゃん♡」 抱きつこうとする響、 響の顔に手を当て近づかないようにする黒川。 黒川「近寄るな。ニートが伝染る。」 響「ニートちゃうわ!」 黒川「最近、関西弁 また出るようになってきたよな!……。」 響「しょうがないやろ!…… 旦那が関西弁なんやから……!」 黒川「まだ……付き合ってもないだろ!……」 響「もう……、結婚したも同然やん!……」 黒川「頭の中、お花畑も移る……やめろ。」 抱きつこうとする響と、 それを阻止しようとする黒川の攻防が続く。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --電車の中 青山(響、ちゃんと準備出来てるかなぁ?) ガクッ 電車のブレーキがかかる。 青山(あ、放送しないと……。) 到着前の放送をする青山。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --ReACTiO PRO 社長室 野村「明日ですね……。」 中尾「カレ……、来るんでしょ??」 野村「木田からの情報では、そのようです。」 中尾「青山コウタ……楽しみですねぇ。」 ニヤリと口を緩ませる中尾社長。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --車の中 阿川「明日は7:48の 新幹線で向かいます。」 黒崎「わかった……。」 黒崎「おっさんはいつ来るんだ?」 阿川「明日と聞いておりますが、 時間も調べておきますか?」 黒崎「いいよ。どうせ向こうが知ってるだろう。」 阿川「ですね。」 黒崎「兎波は別か?」 阿川「兎波はマネージャーと、 6:15の新幹線で行くかと。」 黒崎「そかぁ。」 ブッブ……。 黒崎のスマホが鳴る。 ヨシカワ〈明日、お会いして欲しい方が〉 〈Re.わかった。〉 黒崎「明日、時間あるんだよな。」 阿川「2泊の予定ですから、 たっぷりありますよ。どこ行きましょうか?」 黒崎「ちょっと抜けるかも知れん。」 阿川「ヨシカワですか?」 黒崎「あぁ。会って欲しい人がいるんだと。」 阿川「かしこまりました。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --兎波の家 スウェット姿で ベランダに立ちコーヒーを飲む兎波。 スマホのライトが兎波の顔を照らす。 〈今度良かったら飯行かない?〉 送信に迷う兎波。 震える親指。 大きく息を吸い、 目を瞑る。 シュポッ 〈送信しました〉 ベランダの手摺に項垂れる兎波。 兎波「返信来るかなぁ……?」 ブッブ。 スグ、スマホを取り通知を確認する兎波。 葉山〈明日寝坊しないでよー。〉 マネージャー葉山からのLINEだった。 肩の力が抜け手が落ちる。 兎波「はい、はい。」 〈分かってまーす。〉 心ここに在らずの返信。 コーヒーを飲もうとする兎波。 兎波「あ、もうないや。」 ブッブ。 兎波「なんだよ。またなんかあんのかよ?」 面倒くさそうにスマホを見る兎波。 桜木〈いいよ。〉 桜木からの返信だった。 思わずスマホを両手で持つ兎波。 手に力が入る。 足の力が抜け、座り込む兎波。 スマホに頭を付け震える兎波。 兎波「やった。やった!」 と言い立ち上がった。 部屋に入った兎波。 バフッ! ベッドに飛び乗り横たわる兎波。 スマホの画面を見続ける。 顔が赤らみニヤニヤする兎波。 兎波「会える……。悠真に会えるーー!!」 スマホを抱き締め、 ベッドの上で悶える兎波。 その横で広がるキャリーケースと荷物。 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --車掌区事務所 青山「お疲れさまでーす。」 当直「お疲れ様。」 堀越「お疲れ様でーーーす♡♡♡」 青山「…………。」 青山「457行路到着しました。 異常無しです。明日の点呼は4:55です。」 当直「457行路、異常無し。明日は、4:55点呼。部屋は11号室ね。お疲れ様。」 青山「部屋は11号室。 分かりました。お疲れ様です。」 堀越「あおやまさ〜〜ん♡♡」 青山「…………。」 堀越「ひびきコウタさ〜〜〜ん♡♡」 堀越を睨み付ける青山。 青山「なんだよ。てか、今の何?」 堀越「婿入りしたら、そうなるでしょ?」 青山「婿入りってあのなぁ!」 と言ったものの……。 止まる青山。 堀越「明日、山口行くんですよね?」 青山「まぁな。」 堀越「私も行こうかなぁ……。」 青山「ややこしくなる。来るな。」 堀越「えーーー! 久しぶりにワタルくんと会いたい〜〜!」 青山「ジンに言っちゃお。」 堀越「それだけはやめて!!」 青山「えー?なんでよー??」 堀越「意外と嫉妬深いですよ。あの人。」 青山「そうなん? 意外と可愛いとこあるやん!」 ブッブ。 響〈仕事終わったー??〉 返信する青山。 青山〈お疲れ様。何事もなく終わったよ。〉 響〈お疲れ様。明日楽しみだね!〉 青山〈そやな。撮影現場とか初めてだから、 なんだか、オレが緊張してる……。〉 響〈出る??〉 青山〈出ない。〉 響〈地元民役で笑〉 青山〈出ない笑〉 響〈釣り人役で笑〉 青山〈出ない笑〉 響〈魚役で〉 青山〈誰が半魚人やねん!〉 響〈半魚人wwwww〉 青山〈半魚人は、水浴びして寝ます。〉 響〈水浴びwwwww〉 堀越「何、LINEで イチャイチャしてんですかぁ?♡♡♡」 バッとスマホを胸にしまう青山。 青山「うるせぇ!寝るぞ!」 堀越「はぁーい!」 青山「お疲れ様です。おやすみなさい。」 堀越「おやすみなさーい!」 当直「お疲れさまー!おやすみ!」 精神と体力をすり減らし 疲れきった身体が癒される瞬間。 たった数通のやり取り。 でも、それが大好きな人とのやり取りなら それで十分。 どのエナジードリンクよりも 甘くそして元気が出る。 【寝室11号室】 ガチャ バタン。

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