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第20話 過去

【登場人物】 ・青山コウタ(あおやまコウタ) 響の事が好き。 だけどまだ告白はしていない。 ドラマがクランクアップするまで 告白はしないで。と木田に言われている。 木田の元彼。 響からは、コウタくん。 木田からは、コウちゃん。と呼ばれている。 響に会うため、 仕事の度に大阪と東京を往復していたが、 ついに体力の限界を迎えてしまう。 現在は、FiVE DrinKの新マネージャーになるという 新たな選択肢を前に揺れている。 《FiVE DrinK》 ・響ワタル(ひびきワタル) 青山の事が大好き。 だけどまだ告白はしていない。 アイドルグループ FiVE DrinKのセンター。 撮影中のBLドラマ「フタツノ ヒカリ」W主演で “浦井耀”(うらいひかり)役を演じている。 落ち着いたら告白しようと考えている。 青山からは、ワタル。 木田からは、響もしくは、ワタルと呼ばれている。 仕事の忙しさから青山に無理をさせていた事に気付き、 二人のこれからを考え始めている。 ・黒川ジン(くろかわジン) FiVE DrinKメンバー。 クールで口数は少ないが、感情が顔に出やすい。 長い間、響を想い続けていたが、 その気持ちは伝える事なく、 響の幸せを優先し支えてきた。 青山と出会い、 今では青山コウタを“推し”として慕っている。 TOKYO FINALの打ち上げをきっかけに、 堀越サチとの距離も少しずつ縮まり……。 ・木田アスカ(きだアスカ) FiVE DrinKを預かる敏腕マネージャー。 青山コウタの元彼女。 青山からは、悪魔と呼ばれている? 響のスマホのLINEの名前は、 “天使か悪魔か”にされていたが “木田天”に変更された。 青山と響の将来を考え、 青山にFiVE DrinKの 新マネージャーになることを提案した。 ・吉川キョウスケ(よしかわ キョウスケ) ReACTiO PRO所属。 新人女優、大空ユメのマネージャー。 人当たりが良く、 誰とでもすぐ打ち解ける柔らかい性格。 常に笑顔を絶やさず、 木田アスカにも懐いている。 しかしその裏では、 芸能界の様々な情報を独自に集め、 中尾や黒崎からも頼られるほどの情報通。 響のスキャンダル騒動でも、 水面下で大きく動いていた。 ・社長/中尾マサシ(なかお マサシ) FiVE DrinKが所属する芸能事務所 ReACTiO PRO(リアクティオ プロ)の社長。 人を見る目に長けており、 響ワタルをスカウトした張本人。 穏やかな口調とは裏腹に、 時には冷酷な判断も下す。 その人が売れる為なら、 自ら悪役になることも厭わない。 木田やFiVE DrinKからの信頼も厚い。 元所属タレント・黒崎零とは、 複雑な因縁と信頼関係を持つ。 フリーザの声に似ているらしい? 現在は青山コウタにも興味を持ち、 水面下で動き始めている。 ・野村リカ 中尾社長の秘書。 中尾が役者時代の3代目マネージャーとして 支え続け、今では中尾の右腕として働く。 中尾の事を一番良く知る人物。 ・黒崎零(くろさき れい) 芸名 RAY-K(レイケイ) 芸能事務所 Crest Aster(クレストアスター)の社長。 元アーティストであり、 圧倒的なカリスマ性と実力で 事務所を大手へ押し上げた叩き上げの男。 勝ち気で口も悪く、 かつてはReACTiO PROに所属しており、 中尾社長には反抗的な態度を 取っていたが、 誰よりもその実力と 人を見る目を信頼している。 向上心が強く、 常に“勝つこと”を求め続ける。 所属タレントには厳しいが、 その才能と人生には本気で向き合う。 実はモフモフしたものが好き? ・兎波奏(となみ かなた) ダンスボーカルグループ VIREST(ヴィレスト)のセンター。 「フタツノ ヒカリ」で 響ワタルとW主演を務める若手人気俳優。 クールで近寄り難い雰囲気を持ち、 ドSキャラとして人気を集めている。 響ワタルを尊敬しており、 共演をきっかけに親しくなる。 現在は、 響の恋愛相談相手にもなっている。 自身も気になる男性がおり、 少しずつ距離を縮めようとしている。 所属事務所は、 Crest Aster(クレストアスター)。 黒崎零(RAY-K)からは、 「かなた」と呼ばれている。 ・葉山智也(はやまともや) 兎波奏のマネージャー。 デビューの時から兎波の事を 支えている。 ・阿川聖哉(あがわせいや) 元芸名、SEIYA(セイヤ) Crest Asterの副社長。 黒崎の側近。 ReACTiO PRO在籍時の同期。 黒崎の事を良く知る人物の一人。 ・堀越サチ(ほりこしサチ) 青山の後輩車掌。 FiVE DrinKの大ファン。 青山とは先輩後輩でありながら、 遠慮のないやり取りをする関係。 TOKYO FINALの打ち上げをきっかけに、 黒川ジンとの距離も少しずつ縮まり……。 ━━━━━━━━━━━━━━ --徳山駅 ティンコン、ティンコン……。 ガコン、カッシャー、カコン。 新幹線の扉が開くと同時に、 潮風が鼻の奥を通り過ぎた。 『徳山、徳山です。 ご乗車ありがとうございました。』 兎波「やっと着いた!」 葉山「長かったですね。」 そう話してると、 少し遠くから聞き覚えのある声が……。 響「うーー!!やっと着いたーー!!」 木田「長かったわねー!!」 背伸びをしてる、どこかで見た事のある アイドルとマネージャー。 葉山「私達も背伸びしますか?」 兎波「しよか!」 葉山、兎波「うーーー!!!」 兎波に気付いた響。 響「あ!かなた!!」 振り向き、手を振る兎波。 葉山と木田は、軽く会釈をする。 響「同じ新幹線だったんだね!」 兎波「そだね! 同じ新幹線って分かってたら、 近くの席だったら良かったのにねー!」 兎波と響は、マネージャーを見る。 木田、葉山 「そこまで手が回りませんでした。 すいません……。」 兎波「響もこれから車??」 響「いや、オレは電車で行くよ。」 兎波「そうなの??」 響「だって、フタツノ ヒカリの小説では 徳山駅で新幹線を降りて、 電車に乗り換えるでしょ。」 響「あと、小説に出てくる、 電車から見える海。 それを見てみたくて。」 兎波「あー!そうだよね。 あのシーン好きだったなぁ。 てか響、凄いね。」 兎波「ね!葉山さん! オレも電車で行っても良い?」 葉山「え?あ、まぁ……。」 葉山「とりあえず、 車はキャンセルしときますね!」 兎波「すいません。」 葉山「いや、大丈夫! 作品のためですし、 兎波くんの演技にも繋がりますから。」 兎波「ありがとうございます。」 響「ね?なんか機嫌良い??」 兎波「なんで??」 クンクン……クンクン……。 兎波の匂いを嗅ぐ響。 響「恋の匂いがする……。」 ニヤリと笑い、兎波の顔を見上げる響。 兎波の顔が真っ赤になる。 兎波「ひ、響!何を?!バカ!バカ!!」 葉山「恋??」 兎波「あ……!フタツノ ヒカリの話ね!」 葉山「あ、はぁ。」 シャーーーー。 小さい音が少しずつ大きくなる。 シャーーーー。 カッシャッカッシャッカッシャッ……。 4人の目の前を新幹線が通過する。 響、兎波「おぉぉぉぉーー。」 新幹線が遠のいていく。 西側のトンネルに 新幹線が吸い込まれていく。 赤いテールライトだけ残して……。 やがて新幹線はトンネルの暗闇に消えた。 赤いテールライトも 少しずつ、薄く儚く暗闇に消えていった。 立ち尽くし、身動きしない4人。 兎波「やべぇ……、カッコイイ……。」 響「小説でも綺麗な描写だったけど、 本物は、もっとヤバいね。」 兎波「うん……。」 響「ということは??」 兎波「500系こだま?!」 バッと二人は発車標を見る。 【のぞみ】 響、兎波「え……??のぞみ??」 木田「残念でしたーー。」 葉山「ふふふ……。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ --車掌区事務所 青山「お疲れ様でーす。」 当直「お疲れさまー。」 青山(やっと終わった〜。 さて、着替えてと。) ガラガラガラガラガラガラ……。 青山(キャリーケースの音??) 堀越「せんぱーい!お疲れさまでーす!」 青山「おつかれー。 ん??これ……何??」 堀越「キャリーケース。」 青山「どっか行くの?LIVE??」 堀越「山口。」 青山「山口?山口でなんかあったっけ?」 堀越「追っかけ。」 青山「誰の?」 堀越「コウタとワタル。」 青山「ケイコとマナブみたいに言うなや。」 堀越「てか!早く着替えて来てください!」 青山「え?なんで? なんでオレ急かされてる??」 堀越「いいから早く!!行け!!」 青山「あ……はい。」 あの後、結局堀越に押され、 席も隣に取り直し、一緒に 山口へ行くことになった青山。 ━━━━━━━━━━━━━━ --新大阪駅 堀越「お弁当2つ下さい!!」 堀越の目を盗んで、響にLINEをする青山。 タタタタタタタタタ……。 青山〈堀越も山口に行くって。〉 シュポッ。 ブッブ……。 響〈え?なんで? うるさいし、邪魔なんだけど。 てか、反対の新幹線に乗せちゃえば?〉 青山「ぷぷぷっ」 タタタタタタタタタタタタ……。 青山〈流石に相手も車掌なんで無理笑〉 〈既読〉 青山(相変わらず既読、早っ。) ━━━━━━━━━━━━━━━ --電車の中 窓側に響が、通路側に兎波が座る。 向かいには、 窓側に木田が、通路側に葉山が座る。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 カンカンカンカンカンカンカンカン……。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 長閑(のどか)な風景の中を走る電車。 響「コウタくん、仕事終わったって。」 スマホを見ながら木田に伝える響。 木田「OK!ありがとう。」 兎波「相変わらず仲良いね!」 響「そりゃぁ……。」 木田「ぅ!ううん……。」 咳払いで言葉を遮る木田。 響「あ……。」 葉山マネージャーが目に入る。 葉山「大丈夫ですよ。」 笑顔で響と木田を見た葉山。 響「新幹線に乗ったって。 堀越さんも来るみたい……。」 兎波「新幹線に乗った……??」 響「うん。」 兎波「え?こっちに来るの?」 響「うん。」 兎波「マジ?! やべぇー!え……、 どんな人なんだろう?楽しみーー!!」 響「会わせないよ。」 兎波「え?何その罰ゲームみたいなの。」 兎波「てか、なんでよ!! ちゃんと、ご挨拶しないと!!」 響「なんの?」 兎波「彼氏の兎波です。って……。」 カッコつけて良い声を出す兎波。 響「てか、お前誰だよ?? キャラ変わってんじゃん。 てか、彼氏役な!!」 兎波「えーーー……。」 響「えーーじゃねぇわ!」 ゴーーーーーッ。 トンネルに入る電車。 兎波「手、繋いで会おうよ!」 響「え?何??」 トンネルの中に入り、 電車の轟音で、 兎波の声が聞こえない響。 兎波の方へ身体を近づけ、 必死に話を聞こうとする響。 パッ。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 トンネルを抜け、外の光が入り、 車内が明るくなる。 兎波「あ……。」 響「何?」 ゴーーーーーッ。 兎波「今、海あったのに……。」 響「え?何?聞こえない。」 パッ。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 響「何よ?何て言ったのよー?」 兎波「だから、海って。」 響「海??」 響が窓の方を向こうとした時、 ゴーーーーーッ。 響「トンネルじゃん!」 兎波「トンネルに入る前は海だったよ。」 響「なんて??」 兎波「さっき、海見えた!!」 響「え?!」 兎波「もう!!」 兎波は両手で響の肩を持ち、 身体を窓の方に向けた。 パッ。 開けた景色。 だが、 堤防が高くて海が全く見えない……。 響「壁じゃん。」 兎波「だね……。」 ゴーーーーーッ。 無言の二人。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 パッ。 響「きたーーーー!!」 兎波「めっちゃ綺麗!!」 ゴーーーーーッ。 響、兎波「あ……。」 響「短くね?」 響「オレ焦らされてる?」 兎波「かもね。」 パッ。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 『まもなく、富海、富海です。 お出口は、左側です。』 響「富海だって!」 兎波「あれ……、現場じゃない?」 響「あそこなんだ……。 キラキラの海……。」 兎波「楽しみだね。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --撮影現場 響と兎波は撮影現場に到着し、 息つく暇もなく衣装に着替え、 撮影に備える。 スタッフ 「響さん、兎波さん、 撮影準備OKなのでスタンバイお願いします!」 響、兎波「はい!」 スタッフ 「響さん、兎波さん入られまーす!!」 響「よろしくお願いします!」 兎波「よろしくお願いしますっ!」 監督「暑いけど、よろしくね。」 響、兎波「はい!」 監督「じゃぁ、始めよっか。」 スタッフ「よ〜い!」 カチッ!! ━━━━━━━━━━━━━━━━ --徳山駅ホーム ガラガラガラガラ。 ガラガラガラガラ。 堀越「私、山口県に来るの 初めてなんですよね!」 青山「オレは……。」 堀越「ん?」 青山「ばぁちゃん家が富海。」 堀越「え?!そうなんですか?!」 青山「もう、ないんだけどね笑」 堀越(なんで、 いつも少し悲しい顔して笑うんだろう?) 堀越「そうなんですね!」 堀越「じゃぁ! 案内してくださいよ!先輩!!」 青山「嫌、無理。」 バタンッ。 足から崩れ、地べたに座り込む堀越。 堀越「振られた……。」 青山「こんな公共の場で、やめなさい。」 腕を掴み、立たせる青山。 堀越「うっ、うっ、うっ……。」 青山「泣き真似してもダメ。」 そして二人は乗換口に向かった。 ガラガラガラガラ。 ガラガラガラガラ。 ━━━━━━━━━━━━━━ カチンッ!! 監督「カットォーッ!」 監督「OK」 助監督「OKでーす!」 助監督「少し休憩入りまーす! 響さん、兎波さんはこちらへどうぞ!!」 兎波「お疲れ様。」 響「お疲れさまー。」 兎波「見て!海めっちゃ綺麗!」 響「うん。めっちゃ綺麗。 こんな綺麗な海、初めて見た。」 兎波「オレも。」 響「原作通り、本当にキラキラしてる。」 兎波「眩しいくらいにね!」 木田「響!兎波くん! 休憩の時は、ちゃんと休みなさい!」 響、兎波「はーい。」 響「コウタくん今どこ?」 木田「徳山駅に着いて、電車待ちだって。」 兎波「お!そろそろ来るな〜♡」 響「冷やかし〜?」 兎波「もちろん!冷やかし〜〜〜♡」 ━━━━━━━━━━━━━━ --中尾と野村を乗せた車。 野村「まもなく到着します。」 中尾「彼は?」 野村「まだのようです。」 中尾「そう……。」 ルームミラーに映る吉川の目。 中尾「野村、 ちょっと寄って欲しい所があるんだけど。」 野村「寄って欲しいところ……?」 言われた場所へ向かう車。 ━━━━━━━━━━━━━━━ --富海海水浴場 遠浅の海が広がる海水浴場。 砂浜と駐車場を繋ぐなだらかな階段に座り、 考え込む黒崎。 黒崎(青山コウタ……。) 思い出しそうで、 思い出せない黒崎。 天を見上げ、諦めようとした時、 中尾「お久しぶり……。」 中尾の顔が上下逆転して見えた。 黒崎「おっさんかぁ……。」 中尾「横、良いかしら……?」 黒崎「どうぞ。」 黒崎「何の用だ?借りを返しに来たか?」 中尾「あんな小さなスキャンダルを 一つ潰したくらいで、偉そうに……。」 黒崎「ふーん。滅多に謝んねぇあんたが、 詫び入れて来たのに?」 中尾「……。」 中尾「そうそう。」 中尾「思い出した??」 黒崎「何を?」 中尾「青山コウタ……。」 ドクンッ!! 黒崎の心臓が跳ねた。 黒崎(なんだこの衝撃は……。) 中尾「あら……、忘れたの?」 黒崎「だ……、誰だよ、それ?!」 中尾「渋谷……。 あの日、あなたは 高熱なのに無理やり レッスンを受けたその帰り。 渋谷の街で倒れたわよね……?」 黒崎の脳裏で思い出される、あの日の出来事。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 講師「今日はこれでレッスンを終わります。 お疲れ様でした。」 黒崎「ハァ……ハァ……、ハァ……。」 両膝に両手を当て、 倒れまいと必死に身体を支える黒崎。 汗が、ボトボトと滴り落ちる。 講師「黒崎くん、大丈夫? 今日動き鈍かったようだけど?」 黒崎「……チッ……。」 黒崎は講師を睨み付け、その場を離れた。 夜、渋谷の街。 カップル、酔ったサラリーマン、 ホスト、楽しげな家族連れ。 フラフラしながらも、その間を縫うように 一歩ずつ歩く黒崎。 黒崎「どいつもこいつも、 うっとおしい……。」 身体が段々と重たくなっていく。 目の前が少しずつ歪んでいく……。 世の中が歪んでいく……。 バタッ……。 目の前が真っ暗になる。 自分がどこにいて、 どうなってるのかも分からない。 男の声「大丈夫ですか?!」 男の声「オレに掴まって。」 目を開けようとするが、力が入らない。 しかし、ホンの少し開いた目から 薄っすらと男の姿を見れた。 だが、それも一瞬。 また目の前が真っ暗になった。 男の声「救急です。場所は、渋谷の……。」 119番に電話をかけ、場所を伝える。 そして、名前も聞こえた。 男の声「私の名前ですか?! 青山コウタです。」 青山「もうすぐ救急車来るから!」 黒崎「大丈夫……。」 青山「どこがだよ……。」 青山「とにかく掴まって!!」 黒崎を支え続ける男。 手が触れる。 青山「手、冷たっ!」 手を握り、暖める男。 黒崎(暖かくて気持ちいい……。) 黒崎(なんだろ……?凄く心地良い……。) ピーポーピーポーピーポーピーポー……。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 黒崎の中で記憶のパズルがはまっていく。 忘れていた記憶が一気に蘇る。 黒崎「青山コウタ……、あの時の?」 中尾「そう……。」 黒崎「そう、あの時は、 病院に運ばれても意識が戻らず、 気が付いたら、 助けてくれた青山コウタは、 そこには居なくて。 社長がいた。」 中尾「私が到着した時には、 もう彼はいなかったけど、 病院の入口で、 一人の男性とすれ違ったの。 その時は、 その男が誰だか分からなかったけど、 最近分かって……。」 中尾「驚いてるわよ。 私が可愛がってるタレント二人が、 一人は“元”ですけど……。 まさか、同じ人物に助けられるなんて。」 黒崎「ホントにあの青山コウタなのか?!」 中尾を掴む黒崎。 中尾「私があの顔を忘れるわけないでしょ。」 黒崎「なぜ今そんな事を言うんだ……? それに、二人ってなんだよ! オレ以外にも助けたヤツいるのか?!」 中尾「響……。」 黒崎「あの響か?!」 中尾「そう。」 黒崎「やっとあの時のお礼が言える……。」 中尾「そうね。」 黒崎「オレは、青山さんに なにをしてあげられるだろう?」 中尾「もうしてるじゃない。」 黒崎「もう……してる……?」 黒崎「まさか……。」 中尾「そうよ。あのスキャンダルは、 響と青山コウタのスキャンダルよ。」 黒崎「そうだったんだ……。」 中尾「悔しいでしょ?」 黒崎「べ……別に!!」 中尾「あら、そう。」 中尾「もうすぐ富海駅に着くらしいわよ。 迎えに行ったらどう?」 黒崎「知らないヤツが迎えに行ったら、 向こうはびっくりするだろう。」 中尾「それはどうかしらねぇ。」 中尾「行くの?行かないの?」 黒崎「うっせぇなぁ。行きますよ。 行けば良いんでしょ、行けば。」 中尾「相変わらず憎たらしいほど 素直じゃないわねぇ、あんたは。」 黒崎「お互い様だろ!」 黒崎「おっさん、ありがとな。」 中尾「借りは返したわよ。」 黒崎「返されるの早かったなぁ〜!」 中尾「阿川、行かなくて良いわよ。」 阿川「でも……。」 中尾「あなたがいたら邪魔になる事、 分からないの?」 黒崎「阿川!先行っててくれ。」 阿川 「……はい。かしこまりました。」 歩いて駅へと向かう黒崎。 そして、軽く手を上げる。 中尾「ホント素直じゃないわねぇ。」 中尾「さ、私達は現場へ行きましょうか。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━ --電車の中 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 堀越「やっぱりこっちの電車は揺れますね。」 青山「そだね。田舎だからね。」 ゴーーーーーッ。 パッ。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 『まもなく、富海、富海です。 お出口は左側です。』 プシュー。 ガシャン。 青山「懐かしい……。」 堀越「長閑なところですね。」 プシュー。 ガシャン。 ガタンゴトン……、ガタンゴトン……。 ガラガラ……。 ガラガラ……。 堀越「さすがに無人ですよね〜。」 青山「電車から降りたの オレ達二人だけだもんな。」 無人の改札を出る青山と堀越。 すると、目の前に一人の男性が立っていた。 黒崎「すいません。 青山……コウタさんですか?」 青山「はい……。」 堀越は信じられない光景を 目の当たりにする。 このド田舎の無人駅に、 あの元トップアイドルだった RAY-Kが立っている。 あまりの驚きに、 青山の腕を掴み、固まる堀越。 そして青山は、 黒崎の顔をじっと見る……。 黒崎「その節は、助けていただき ありがとうございました。」 深々とお辞儀をする黒崎。 青山「もしかして……、 渋谷で倒れた……。」 黒崎「はい。」 青山「だよね!元気になったんだ! 良かった〜……。」 黒崎「おかげさまで……。」 青山「で、どうしてここに??」 ツンツン……。 棒立ちで固まった堀越が青山を突く。 青山「ん?」 堀越「RAY-Kさんですよね……?」 黒崎「はい。」 笑顔で応える黒崎。 青山「そうなの?!」 黒崎、堀越「え?!今?!」 あまりの無頓着さに笑う黒崎と堀越。 堀越「RAY-Kさん、 ちょっとすいません。」 堀越は、青山を連れ黒崎から離れる。 堀越「RAY-Kさんと知り合いとか 知らなかったんですけど!! どういう関係なんですか?!」 青山「あー、響みたいな?……。」 堀越「????」 青山「ごめんなさい。 お待たせしました。」 黒崎「良いんですか?あの子?」 青山「大丈夫です。」 堀越「大丈夫じゃないです!!」 黒崎「らしいですよ……。」 青山「……。」 青山「行きましょ!」 堀越「嘘でしょ?完全スルー?!」 黒崎「はい……。」 三人は歩いて撮影現場に向かう。 ガラガラ……。 ガラガラ……。 青山「黒崎さんは……、 あ、RAY-Kさんは……、」 黒崎「黒崎で良いですよ笑」 青山「黒崎さんは、なぜここに?」 堀越「RAY-Kさんは、 兎波くんの所属する事務所の 社長さんですよーー。」 青山「そうなの?!」 黒崎「あ……はぃ。」 黒崎「兎波がお世話になっております。」 青山「お世話だなんて、 それは、オレじゃなく……。」 オレじゃなく、響が……。 と言おうとした時、口が止まった。 同じ芸能界でも、変に勘ぐられると ややこしくなりそう。と感じたから。 でも、その考えは徒労に終わった。 黒崎「響さんでしょ?」 青山「え……?」 黒崎「知ってますよ。 お付き合いされてる事。」 青山「え?いや、 まだ付き合っては、いないですよ!」 黒崎「私にもチャンスがあると……?」 堀越「ないですよ!!」 堀越「この人、 響くんにしか目がないですから。」 堀越「ねーーーー。」 じーーっと見てくる堀越。 バスケットボールを持つように、 堀越の顔を掴む青山。 青山「お前は黙れ…………。」 堀越「んー、んーーー!」 青山「あ!そしたら! その節は大変 ご迷惑をお掛けしました!!」 これでもかと、深々と頭を下げる青山。 驚く黒崎。 黒崎「え……、あぁ……まぁ……。」 黒崎「あの時は驚きましたけど、 ま、結果オーライということで!」 黒崎「ていうか、敬語やめませんか?」 青山「え?」 青山「いいですよ。」 黒崎「あと……、もし良かったら……、 LINE交換しませんか?」 青山「オレで良かったらいいですよ!」 笑顔で快く応じた。 青山の屈託のない笑顔を見て、 黒崎は、身体の中が 暖かくなるのを感じた。 黒崎(なんだ……この笑顔……。) 黒崎(あの時……、 この笑顔されてたら……、 オレ……、完全に……堕ちてた……。) ボーっとする黒崎。 青山「黒崎さん?」 首を傾げ、黒崎の顔を覗き込む青山。 黒崎「あ、あ……。ごめんなさい。 ちょっと、考え事を……。 そう……、今度……ご飯行きましょ! あの時のお礼もしたいし。」 青山「お礼なんて良いですよ!!」 黒崎「させてください!」 青山「……分かりました……。」 堀越「私もいきまーーす!!」 青山、黒崎「お前は来なくていい!!」 黒崎、青山「ぷぷぷ……。」 二人とも見合って、笑いを我慢する……。 青山「ハハハッ」 我慢出来ず、青山が笑い出す。 それにつられて笑い出す黒崎。 大笑いする黒崎と青山。 黒崎(そりゃぁ、響も惚れるよな……。) 黒崎(でも……、会えて良かった。 お礼も言えて良かった……。 そして……、 何よりも幸せそうで良かった……。) 立ち止まる堀越。 タタタタタタタタタタ。 〈コウタムカツク〉 シュポッ。 ピコン。 ジン〈お前がまた変な事言ったんだろ。 自業自得〉 堀越「ムカつく……。」 気付くと、先を行ってる青山と黒崎。 堀越「待ってー!置いてかないでー!」 ガラガラガラガラ! 青山、黒崎「やだーー!!」 笑い合う青山と黒崎。 それを追い掛ける堀越。 空は雲ひとつない晴れ渡った青空だった。

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