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恋のキューピッド2

 宗治郎さんと彼女は卒論のゼミも同じ、バイト先も同じ、そして就職先まで同じになった。  同じ会社ではないものの、同じビルに入っているのだから、同じと言い切っても良いだろう。  ここまで来ると彼も「あいつって俺のこと好きなのかな?」と、確信を持ったように僕に尋ね、「もうあいつと付き合って結婚する運命なのかもな」と笑ったことがあった。  自分のペースで考えたいと言っていたのに、そのタイミングが今なのか、そういう考えを跳ね除けるような運命を感じたのかは分からない。  それでも、それだけはどうしても許せなかった僕は、そのとき初めて宗治郎さんに言い返した。 「あの人が宗治郎さんのこと好きなのは見ていて分かるし、これまでのおふたりの関係性があるのも分かるけれど、でもあなたには、もっと良い人とくっついてほしいです」 「え?」 「あなたのことを試したりせず、まっすぐに愛情をかけてくれる人。その人が笑うと、思わずこちらも笑い返したくなるような、そんな温かい人」 「まず俺がそんなに素敵じゃないのに、そんな人が現れるかな」  彼女のことを悪く言った僕を否定することはなく、頭を撫でてくれた宗治郎さんに胸が苦しくなった。  僕が女だったら、あと一歩が踏み出せるのに。でもそんなことは叶わないし、宗治郎さんの恋愛事情に口を出すことが精一杯。  彼女のことを悪く言った僕も、彼には釣り合わない人間なのだろうから、だから神様も間違って告白しないようにと僕を男にしたのかもしれない。  それでも、宗治郎さんに相応しい人になりたかった。 「楓みたいな子だったら良いのかな」 「……え? 僕、ですか」 「いつもそばにいてくれて、笑うと可愛くて、俺のことを真剣に考えてくれるから。一緒にいる時間は穏やかだし、落ち着くし」 「……だからって、何言ってるんですか。さっき宗治郎さんにはもっと良い人がいるって、その話をしたばかりなのに」  返事をする声が震えた。  じゃあ僕と付き合ってみますかと、思わず出てきそうになった言葉を飲み込んだ。  二度と出てこないようにと何度も何度も飲み込み、奥深くまで戻す。  浮かれるのも自惚れるのもダメだ。期待してもダメ。  冗談で言ったわけではないのだろうけれど、本気の告白でもないのだから。 「宗治郎さん、全然面白くない」 「ははっ、そうか?」  優しく微笑みながら、宗治郎さんがもう一度僕の頭に手を置き、そっと撫でる。  その手がいつもより優しく、そしていつもより触れられている時間が長く感じたけれど、それもきっと僕の願望がそう思わせただけなのだろう。    宗治郎さんの隣にいる思い出の中で、このときが一番苦しかった。

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