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恋のキューピッド7

 翌日、少し緊張しながら清水さんの部署へ顔を出した。  どんなふうに伝えれば失礼ではないのか考えても分からないままだったけれど、丁寧に話せば優しい清水さんは怒らないで聞いてくれるはずだ。 「清水さんいますか?」  見当たらなかったから近くにいた島田(しまだ)さんに声をかけると、「しばらく会議で席を外してるよ」と教えてくれた。  会議終わりの時間も尋ね、「またその頃に来ます」と伝え、自分の席へと戻ることにした。  今から言うぞと意気込んで不発に終わるとなんだか気が抜けてしまうな。  次にまた行くときは、さらに緊張してしまいそうだ。 「そろそろ終わる時間かな」  廊下の角から出てくる人にいちいち驚かせられながら、言われた時間に再度彼女のもとへ行ってみると、席にその姿はなく、島田さんもいなかった。  キョロキョロとして不審だったからだろうか、別の男性がどうかしたのかと声をかけて来てくれた。 「清水さんに用があるのですが……。会議は終わってますか?」 「会議は終わったみたいだけど、隣の課に呼ばれて今はいないよ。お昼には戻ってくるんじゃあないかな。急ぎかな?」 「いえ、急ぎではないのですが……」 「そっか、次は会えると良いね」 「はい、ありがとうございます」  今日の清水さんは忙しい日なんだな。  改めて別日に言ったほうが良いかもしれないと思ったけれど、翌日油断しているときに彼女から声をかけられたら、そのタイミングで上手に話せる気がしない。  僕から声をかけて、僕のペースで話せるほうがうまくやれそうだし……。  ああ、どうして以前の飲み会のときに彼女の連絡先を聞いておかなかったのだろう。  でもいくら大好きな先輩とはいえ、プライベートにまで関わる予定がなかったから、あのときに聞けるはずもないか。 「じゃあ、またお昼に来ます」 「名前、望月(もちづき)さんだよね? 君が探していたことは清水さんに伝えておくからね」 「ありがとうございます」  お礼を伝えて部屋を出ようとしたとき、走って戻って来た若い男性とぶつかった。  「すみません」と言うと、無言で軽く頭だけ下げたその男性は、さっき僕に声をかけてくれた人に急いで何かを報告していた。  あの人は確か、十川(そがわ)さんだったかな?   若手までバタバタしているし、今日は特に忙しかったようだ。  何となく彼の背中を数秒見つめると、それからまた自分の席へと戻った。  三度目の正直だと期待しながら清水さんの部署へ行くと、言われていた時間だったにも関わらず、彼女はまた席にいなかった。  伝言してくれると言っていた男性が僕に気づき、ごめんとジェスチャーをする。 「伝えはしたんだけどね。俺が午後のスケジュールを確認できていなくて。もう外勤に出ちゃったんだよね」 「あっ、そうだったんですね。戻りは何時頃になりそうですか?」 「今日の戻りは定時を超えるから、難しいかもね。明日の昼休みには確実にいるから。彼女にも伝えておくよ。本当にごめんね」 「こちらこそすみません。ありがとうございます」  やはり今日はダメだったか。  明日までにどんなふうに伝えるべきか、ちゃんと考えなさいとのメッセージなのかもしれない。  僕はその男性に頭を下げ部屋を出た。  明日何の話があるのかと構えている清水さんに、声をかけるのはかなりの勇気が必要そうだ。  そう戸惑いながらゆっくりと廊下を歩いていると、背後から誰かが走ってくる音がした。  振り返ると息を切らした十川さんがいて、彼の呼吸が乱れている姿は今日で2回目だな、なんてそんなことを考えた。 「望月さん」  彼に呼ばれ、僕の名前を知っていたんだ、とまずそれに驚いた。   前に清水さんたちとの飲み会をしたときに、確か端のほうに座っていて会話ができなかったし、彼には失礼だけれど、自分が関わる人しか名前を覚えていないタイプだと思っていた。  他人に興味がないのか、よく思われようとする気がないのか、すれ違っても軽く会釈されるのみだし、顔を見ながら話す機会がこれまでなかったから。

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