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恋のキューピッド9

 翌日、十川さんの目を避けて清水さんを探した。清水さんの席に行こうものなら、その後絶対に彼に捕まると思ったから。  さすがに今日もすれ違い続けたら、宗治郎さんを紹介すること自体諦めてしまいそうだ。  どのタイミングで清水さんに声をかけようかと悩んでいると、たまたまトイレから出てきた彼女を見つけた。 「あっ! 清水さん!」 「楓くん? 昨日はごめんね、って、え!?」  昨日の十川さんのように彼女の腕をいきなり掴み、休憩所のほうへ引っ張った。  別に狭いわけでも汚いわけでもないけれど、休憩室はほとんど使う人がいないから、こういう話をするにはそこしかないと思って。  大股で歩く僕とは反対に、小走りでついてきてくれる。ヒールの音がカツカツと廊下に響く。 「ねえ、何をそんなに焦ってるの?」  こんなことをしている僕を清水さんはけらけらと笑ってくれていて、それがありがたかった。  「十川さんに見つかりたくないんです」とだけ伝えると、「(がく)くんね。仲悪いの?」と尋ねられる。  仲が良いとか悪いとかの前に、そもそも名字と顔を知っている程度の関係性でしかない。  下の名前が(がく)ってことも、清水さんに言われて今知ったくらいだし。 「そういうわけじゃないんですけど、なんかちょっと……」 「ふうん。でも楽くんはあまり他人に興味がない子だから、楓くんに絡んでいるとは思わなかった。珍しいね」  そりゃあ他人に心を閉ざしているような人が僕だけに心を開いてくれている、みたいなことがあれば嬉しいと思うかもしれない。  けれど、昨日の十川さんはかなり失礼だったし、あの人に絡まれたところで嬉しい気持ちなんて一切ない。  乱れた髪をこちらが勝手に整えてしまったあの一瞬だけ、少し可愛げがあったくらいだ。 「ああ、だからか。今日出勤したときに、楽くんがやたら楓くんのことを聞いてきてたのよね。何の用事があるんですかー? って。私も知らないよって返したら、心当たりすらないのかとしつこくてね」 「げっ」 「げっ、って。ふふ、何をあそこまで気にしているんだか」 「僕もそれで昨日しつこく絡まれたんですよ。だから最初、清水さんの彼氏なのかと思って」 「えっ、楽くんが? ないない。可愛い子だけど絶対に無理」 「ははっ、無理って……」  今この会話を聞かれていたら、後で僕の席まで来て責められそうだな、なんて思いながら、周囲に誰もいないことを確認して休憩所へと入った。  十川さんのことで気を取られてしまったけれど、本来ならこの話題に全てを持っていかれて緊張していただろうから、ある意味で十川さんへの不満に助けられたのかもしれない。  昨日よりも少しだけ気持ちが落ち着いていた。 「今から失礼なこと聞くので、嫌なことがあったら答えないで良いです。全部嫌なことかもしれないけれど」 「そうは言っても楓くんは、無駄に嫌なことを聞いてくる子ではないって知ってるから大丈夫だよ」 「ありがとうございます」  不安になる前置きすぎたなと後悔と反省をしつつ、まずは「今、恋人はいますか?」と尋ねた。  なんだそんなこと? と言いながら清水さんが笑い、「いません」と答える。 「じゃあ、恋人にするなら年上ですか? それとも同い年? 年下? どれでもOK?」 「基本的には、あまりにも年下すぎたり、年上すぎるのは嫌かも……。最後に付き合っていた人が結構年上で、もちろん結婚も意識したのに彼は全然そんな気がなくてさ。だから年上は……今は微妙かもしれない」  抵抗なく答えてくれる彼女にありがたい気持ちになる。もう少し続けて良いか確認すると、快く了承してくれた。 「見た目の好みは?」 「あまりにも明るい髪色でピアスが顔中に付いてなければ大丈夫」  「ははっ、すごい具体的ですね。じゃあ職業は?」 「特にこだわりはないけれど、仕事はしていてほしいかな」 「じゃあ最後に……。今、恋人はほしいですか?」 「そりゃあ良い人がいれば」

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