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侵入者3

 関係のない人が、関係のない話で騒ぐなよ。今、何事もなかったかのように、これからの時間を過ごせるように、気持ちを落ち着かせることでいっぱいいっぱいなんだから。  僕は、“良かったです。会ったらまたお話聞かせてくださいね”の文字を震える手で打ち、最後に今の気分とは全く違う、“いいね!”のスタンプを押した。 「俺の質問にさらっと答えるだけで良いのに」 「十川さん以外からの質問なら、さらっと答えているよ」 「じゃあ俺だけなんだ?」 「俺だけって別に良い意味じゃない。特別みたいな言い方するなよ!」  小声だけれど、でも確かに強い声が出た。ハッとして顔を上げると、それを笑うのでも、怒るのでもなく、何か見透かした表情で彼がこちらを見ていた。  画面を覗き込まれたわけではないけれど、一瞬視線がスマホに向いたことで、僕が何かに動揺していると、彼に伝わってしまったかもしれない。 「……ねえ、それって俺に怒ってるんじゃないですよね? やっぱりひとりだと抱えられないんじゃないの」 「……うるさい、十川さんには関係ない」  スマホをひっくり返し、彼とは反対側のスペースへ置いた。 「言えばすっきりするかもしれないのに」 「それは絶対にないから」  ひとりだけ動揺しているこの状況が恥ずかしく、そしてあまりにも惨めだ。僕は十川さんから視線を逸らすと、もう二度と彼に向けることはしなかった。  指の震えに気づかれないように力を入れながら、カタカタとキーボードを叩く。  喉が渇きカラカラで唾液も出ないのに、意味もなく飲み込んだ。  ……頼むから早く、帰ってくれよ。 「分かりましたよ。じゃあまた明日ね」  いつもなら何かしらの形で僕に触れていくのに、彼はわざとらしく触れて構うこともなく西山さんの席を立つと、それ以上何も言わずにいなくなった。  油断してすぐに視線を動かせば、まだそこに彼がいるかもしれないからと、余裕がない中でそんなことを考え、とりあえずお茶を口に含んだ。  ……さっきよりも苦い。 「最悪だ……」  数分経って、ふうと大きく息を吐き、それからスマホを手に取るとメッセージを確認した。  家でまた見てしまうと、ひとりでさらに気持ちが落ちてしまいそうだから。  宗治郎さんからは、“ありがとう”とお辞儀をしたスタンプだけが送られてきていた。  さらにメッセージを送る必要はないから、僕は画面を閉じると今度は鞄の中へと戻した。  畠中先輩に邪魔をされたあの日以来、宗治郎さんとは会っていないし、清水さんの連絡先を教えて以降、電話もメッセージのやりとりもしていなかった。  久しぶりの彼からの連絡が、清水さんのことについてなのは寂しくもあるけれど、自分が望んだことだし、ふたりがうまくいくのなら僕はそれを喜ぶことしかできない。  恋って難しい。  ……いや、これが恋と呼んでよいものなのかは分からないけれど。  少しだけ滲んだ涙を指先で拭い、僕は大きく伸びをした。

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