15 / 63

侵入者4

「十川さん、これ何……。いらない」  昨日あれだけ嫌な態度を向けたのに、彼は変わらず僕のところにやってきた。  今日は怒られないように休憩時間に来たんですよ、と当たり前の配慮を誇らしげに言う。  こういうところはあまり変わらないにしろ、歳下らしいな、とそんなことを思った。  それでもこれは別。手懐けられたいわけではないから、彼からの甘やかしは不要だ。  机に広げられたお菓子を、彼のほうへと押し返した。こぼれ落ちそうになった分を、隣の西山さんが笑いながら受け止め、そして彼女は自分の引き出しへと入れた。   「西山さん、全部良いですよ」 「いや、全部はいらないから」  横取りする流れに乗っかって彼女に押し付けようと思ったのに、きっぱり断られてしまう。それ見た十川さんが笑い、僕の肩に手を乗せた。 「そんなに頑なにならないで、素直にもらってくれたら良いのに。甘いもの好きだって知ってるんですから」 「いや、本当にいらない。無理……」 「そういう態度も俺には意味ないですよ。前に置いていったお菓子も食べてくれてたし、嫌がれば嫌がるほどさらに持ってきますからね」  ほら、と改めて渡されたお菓子は、なぜか僕の好みのものばかりだった。  確かにたまにお菓子を食べている姿を見られていたことはあったけれど、常に机の上に出しているわけでもないのに。どこから情報を得ているんだ? 「……それ、脅しじゃん。仮にも先輩なんですけど」 「じゃあ先輩、懐いている後輩を可愛がってくださいよ」  仕方がないからと数個だけもらって残りをまた押し返すと、十川さんも数個だけ取って西山さんの机に置き、残りをまた押し付けてきた。  何回このやりとりをする気なんだ。 「可愛がるのは違くない? 十川さんを可愛がるほどの関係かな? 僕たちって」 「だからそういう関係になろうって言ってるじゃん。そうなりたいから俺はこうして望月さんのところに来てるんでしょ」 「頼んでないよ。どうせ今だけなんでしょ。早く飽きてくれ」  今までだって、名前を何となく知っているだけの関係性だったわけだし、彼が僕に対して良い印象を持っているような素振りもなければ、あの日しつこく清水さんを探す僕にたまたま興味を持っただけのくせに。 「今だけじゃないなら良いの?」  肩に置かれたままの彼の手にぐっと力が加わる。  痛い、と視線を向ければ、真剣な表情で僕を見つめていた。  だから、それが分からないんだって。十川さんが僕に絡む意図が、あの日の僕の本心を知りたいからだけにしては、あまりにも強引だ。  仮にそれだけだったとしても、知ってどうするつもりなんだろう。関係を作って真実を知って、僕のことも知って、それで困るのも後悔するのも十川さんなのにね。 「今だけとか、そういう話でもないんだけど……」

ともだちにシェアしよう!