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侵入者5
「ねえ、その話って長引きそう? 私、外でランチするからしばらく座っていて良いよ」
彼が返事をする前に、隣の西山さんが僕たちの話に割り込んできた。
頼んでもいないのにまた、十川さんに席を提供しようとしている。
「ありがとうございます、じゃあお借りします」
もちろん彼が断るはずはないから、この話が本当に長引くことが確定してしまった。
西山さんの隣で喧嘩みたいなことをしている僕たちが悪いのだけれど、彼女はいつもいてほしいタイミングでいなくなってしまう。
こちらこそお菓子ありがとうね、と十川さんに手を振って去って行った。
僕のことはちっとも気にしてくれていないようだ。
「望月さんって面倒だね」
当たり前のように彼女の席に座った彼が、また肘をつきながら僕を見てきた。
肩に手を置かれることはなくなったけれど、まだ感触が残っていてそれが落ち着かない。
相変わらず目力があり、それも僕を動揺させる要因のひとつになっていた。
「……うるさい。じゃあ関わるな」
「関わりたいって言ってるじゃん」
人が嫌だと言うことはやめようね、に対して、俺は大丈夫だから、と答えるタイプの人だ、と心の中で軽蔑しながら、彼に聞こえるように大きくため息をついた。
押しに負けてお菓子をいくつかもらってしまった僕も悪いけれど、それにしても、だ。
「……ねえ、これいつ終わるの?」
「あんたが諦めるまで。ちなみに俺は諦めないから」
十川さんが手を伸ばし、僕の頬に触れた。ここで拒否をすると話しが逸れてしまいそうだったから、あえてそのままにして僕は真っ直ぐに彼を見つめた。
それに驚く反応を見せることなく、彼も視線を合わせてくる。ふざけて言っているわけではないことだけは、なんとなく伝わった。
「十川さんは、あの日のことを知って、それからどうしたいの?」
「そんなのは口実ですよ。望月さんと仲良くなりたいだけ」
「じゃあやり方を間違えたね。こんなんじゃあ仲良くできない。お菓子をあげれば良いってものじゃないでしょ」
僕も彼に本当のことを言えないように、彼も本心は見せてくれないように感じた。
仲良くなりたい、が全くの嘘だとは思わない。でも、彼の言う仲良くが何かは分からないし、僕に興味を持った理由にも、しつこく構う理由にもならない。
「でもお菓子は食べてくれるし、食べるときに俺を思い出しません?」
「……思い出さない」
「間がありましたけど?」
「むかつく」
いまだ僕の頬に添えられている彼の手に噛みつこうとすると、慌てて手を避けることもせずに「どうぞ」と笑われたから、それはやめて革靴で彼の脛を蹴った。
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