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侵入者6

◇  しばらく忙しい日々が続いた日の週末、「金曜日だし飲みに行っちゃう!?」と騒ぐ係長に誘われ、定時を過ぎても残っていた僕と、村田さんと西山さんで居酒屋に行くことになった。  最近はあまりにも僕たちの部署が忙しくしているせいで、十川さんがちょっかいをかけてくることはほとんどない。  それはそれで平和ではあったけれど、疲れているから早く帰って休みたいのが本音だ。  けれど、僕より忙しくしていた西山さんがあっさり行くと返事をしているのを見て、断ることができなかった。 「西山さん、疲れてないんですか?」 「そういうときのお酒がうまいんでしょうが」 「……はあ」  村田さんはどうなんだろうと彼を見つめると、目をキラキラさせてこちらを見ていた。何も返事をしていなくても、彼も西山さんと同じタイプだと分かる。  だったら、僕が抜けても3人で楽しんでくれるのでは?  そう思って数歩先を歩く係長に追いつき断るために肩を叩くと、振り返った係長が僕の顔を見て「ああ!」と何かを思いついたように声をあげた。 「望月さんって、十川さんと仲良いらしいね?」 「仲良くしているつもりはないですけど」 「そっか、じゃあ彼の部署の人たちも誘っちゃおうか。4人は寂しいよねえ」 「そっか、の後に続く言葉じゃないですよ、それ」  僕を見て十川さんたちを、の流れになってしまったせいで「じゃあ抜けます」とは言えなくなり、とにかく彼がいませんようにとそれだけ願いながら、清水さんたちの部署へと顔を出した。  真っ先に目が合ったのはやはり清水さんで、僕たちに気づくと手を振ってくれた。 「清水さんたち、これから飲みに行かない? 誰が残ってる?」  係長が誘うと、あまり話す機会のない、正直名前も知らない女性がふたりだけいた。 「西山さん、僕まだあのふたりの名前を覚えていないです……」  小声で伝えると「茶髪のほうが中野(なかの)さん、黒髪ショートの子が井上(いのうえ)さん」と教えてくれた。   「じゃあこれだけかな? 3人はすぐ出られる?」  係長の言葉に中野さんと井上さんは頷いたけれど、清水さんが僕の顔を見て何か言いたげな表情をしている。 「まだ終わってませんか?」 「いや、そうじゃなくてね。もうひとり……」  もうひとり……? とその誰かを察する間もなく、背後から「俺も入れてもらって良いですか」と声がした。  振り返らなくても分かる、十川さんの声だ。  だから清水さんがあんな顔で僕を見ていたのか。   「おっ、うちの望月さんと仲良しと噂の十川さんだ」  何が嬉しいのか、係長が笑う。 「なに? 俺たちって仲良しって認めてもらってるんですか?」  十川さんが僕の肩に手を回し、それからそう耳元で囁いた。 「……はあ?」  冷房が効いているとは言え、夏に一日仕事をした後なのに、ふわっと漂う匂いが爽やかなことにも腹が立つ。  肩に回された手は頬へと移動し、十川さんは「もちもちだ」と僕の頬をつまんだ。  係長や先輩たちの前で、僕が大きくリアクションできないことが分かっていてこんなふうに触れるなんて、やはり性格が悪すぎる。 「最近、望月さんに会えなかったから嬉しいです」 「え……」  それなのに、素直に表現されたせいで拍子抜けした。僕の反応を楽しむための発言ではなさそうで、一瞬の出来事だった。 「じゃあみんなで行こう! いつもの居酒屋で良いよね!?」  係長がスキップでもするかのように歩き出し、「すぐに追いつきます!」と言った清水さんの声を背に、まだ少しだけ動揺を隠せない心臓を押さえ係長に続いた。

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