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侵入者7

 居酒屋に着き、席の確保をしてもらっている間に、十川さんたちも追いついた。  さすがに外に出れば暑いから、十川さんも軽く汗をかいているようだった。  額に滲んだ汗を髪をかきあげるようにして腕で拭い、それを見ていた僕に気づくと、「ん?」と首を傾げた。 「入ろうか?」  何も言えないままで立ち止まった僕を助けるかのように、係長に促され店へと入った。  それぞれの部署ごとに4人ずついるから、まとまって座るかと思ったのに、係長は向き合って4つ並んでいる席の真ん中に座った。   「もう奥から詰めてくださいよ」    そう言いながら、係長と壁の間を通り抜け、係長の横に村田さん、その横に西山さんが座った。  それじゃあ僕は、もうひとつ空いている係長の横に座れば良いのか? 何この合コンみたいな並びは、と思いながら座ろうとしたとき、十川さんに腕を引かれた。 「俺たち仲良しなんで、ふたり並んで座って良いですか?」 「なっ」  彼のことだから近くに座って来そうだと、自惚ではなくて予想はしていたけれど、まさかこの流れを無視して、誰よりも年下のくせに隣を宣言されるとは思っていなかった。  これだけでもう、やはりすぐにでも帰るべきだったと後悔する。 「ど、どうぞ!」 「ありがとうございます」  さっきまでほとんど喋らなかった井上さんが大きな声を出し、その横で中野さんも大きく頷く。  十川さんの横は私が! タイプな女性ではなく、西山さんと同じか、と面倒ごとには巻き込まれなさそうでそれには救われた。  でも今は、誰かひとりでも十川さんの横を主張してほしかった。 「じゃあ私が係長の横に座りますね」  清水さんが手前の席に座ると、笑いながら僕たちを見ていた。僕の十川さんへの思いを知っている彼女には、絶対に助けてほしい。   「じゃあ僕、清水さんの正面に座りたいです」 「あっ、じゃあ私たちが奥行きます」  十川さんのように僕まで我が儘を言ってみたけれど、ふたりは全く嫌な顔をせずに奥の席へと移動してくれた。  西山さんと村田さんと、ふたりがどれほど接点があるのか知らないけれど、きっと同じ部署の清水さんと近くの席が良かったよね。  それでも僕も絶対に譲れなかったから今回はごめんなさいと、心の中で何度も謝った。 「じゃあみんなは2000円で、残りは全部俺が出すからじゃんじゃん飲んで食べよう!」  残業続きの週末とは思えないテンションで、係長が声を張り上げる。  それに続いて西山さんと村田さんが、おー! と手を挙げ、ふたりの正面に座っている中野さんたちも同じように手を挙げた。    早出し、おつまみ、焼きもの、揚げもの、刺身などから、それぞれ数品ずつ適当に注文し、以降は各自が気になるものを頼む流れになった。  ペースの早い係長を見ながら、とはいえ疲れもあるし、と僕はゆっくりペースで飲む。隣の十川さんはその間くらいのペースで飲んでおり、少し顔が赤くなっているようにも感じた。  てっきりお酒が入るとこれまでより強引さが増すと思っていたのに、その予想は外れ、料理が来る度に僕が取りにくい位置にある料理をよそってくれる。  強制されているわけでもないのに、そうなると口から勝手に「ありがとう」の言葉が溢れ、彼はそうして素直にお礼を言う僕に対して微笑むだけだった。  今日は少し、違った意味で居心地が悪い。  僕の気持ちを無視した会話もなく、清水さんを含め仕事の話をしながら、運ばれた料理を褒めたり、「係長って楽しい人ですよね」と些細な話題で場を繋いだ。    別に、十川さんに嫌な絡み方をしてほしかったわけではないけれど、ここまで何もないと拒否している自分だけが悪者になってしまいそう。それがちょっと気に入らない。  いつものテンションで絡んでこない十川さんの横顔を見ていると、悔しいくらいに顔が整っていた。  本当に見た目だけは良い。宗治郎さんも格好良いけれど、十川さんは宗治郎さんとは違い、モデルや俳優をしていてもおかしくないようなオーラがある。  僕の好みではないけれど、でも余計なことを言わずに愛想良くしていれば、もっとこの職場で彼に向けて飛ばされるハートを見る羽目になっていただろうな。  

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