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日常の変化1
暑かった夏が過ぎ、秋の主張が少しずつ大きくなってきた頃、十川さんと接点ができてから3か月が経った。
以前にうちと彼の部署で飲み会をしたあの日、素直に気持ちを表現してくれた彼は、結局僕の触れられたくない部分に踏み込んでくることも、嫌な絡み方をすることもなかった。
むしろ歳も近いし、金銭感覚も似ているから他の人より居心地が良い。
あの日の会話が最悪だったから警戒していたけれど、今後はもうそんな必要はなさそうだ。
今では週に1、2回昼休憩を一緒に過ごしている。
コンビニで購入したお弁当を休憩室で食べたり、前日の夕飯を持ち寄ったり、外に食べに出かけたり。
1時間しかない休憩時間の中で、外出できる範囲は限界があるけれど、立地に恵まれていることもあり、悩む程度には飲食店が職場周りに多い。
それに十川さんがわりと安めでおしゃれな店をたくさん知っていることもあり、連れて行ってもらうことも時々ある。
「そろそろ望月くんの犬が来る時間だよ」
「犬って……」
「猫派だって言ってたのにねえ」
「それは変わってませんけど!」
隣の西山さんに笑われたけれど、僕もそろそろ十川さんが来る頃だと思って外に出る用意をし始めていたから、彼女はそれも分かった上で揶揄ってきたのだろう。
だって今日は外に食べに行こうと事前に言われていたから、すぐにでも出られるようにしておかないと、貴重な休憩時間はあっという間になくなってしまうと思っただけだし……。
広げてしまった資料を片付け、ポケットに財布を突っ込むと、突然背後から「ワッ!」と声がし、驚いて振り返ると笑顔の十川さんがいた。
それを見ていた西山さんを含む数名に、僕の反応を笑われた。
「あなたたち、やってることが子どもなのよ」
「望月さんの反応が面白くて」
「それにしても、よく仲良くなれたね? 望月くんあんなに嫌がってたのにね」
西山さんが肘をつきながら、にやにやとこちらを見て笑う。
何を言っても動揺していると示すことになりそうで、恥ずかしさを抱えながら黙るしかない僕に、十川さんが「粘り勝ちです」と笑った。
「でも、俺は十川くんこそあまり笑わない子だと思っていたけどね」
珍しく村田さんが口を開いた。僕はあまり笑わない無口な人に加えて、失礼な人だと思っていたけどね。
「望月さんといると楽しいんですよ」
「えっ、望月くんって面白いこと言えたの?」
「ちょっと村田さん! 気の利いたことはあまりできないけど、僕ってそんなにつまらないですか!?」
「ははっ、うそうそ。ごめんてば」
まだまだ揶揄いが続きそうな雰囲気だったけれど、休憩時間が短くなるからと切り上げて外へ出た。
やや日差しの強さは残っているものの、外に出ると秋の匂いがする。風がほんのり心地良い。
ん〜! と伸びをすると、そんな僕を見て十川さんが笑い、同じように身体を伸ばした。
「風、最近気持ち良いですよね」
「う、うん……」
「行きましょうか?」
同じことを考えていたことに少しだけ特別さを感じた。まあでも、天気のことなんだから同じ感想を抱くのは当たり前か。
先に歩き出した十川さんの背中を見ながら、小走りで追いついた。
先週もお弁当ではなく外食にしたけれど、今週も続けて外でランチだ。またすぐに忙しくなってなかなか外には出られなくなるだろうから、今のうちに色んなお店に行けたら良いな。
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