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好意の在処5
店に入ると、清水さんと宗治郎さんが並んで座り、宗治郎さんの正面に僕が座った。
宗治郎さんがさらにかっこよくなったことにも、並んだ姿が想像以上にお似合いなことにも少しだけ胸が痛む。
かと言って、やはり自分が宗治郎さんに対して頑張れることなんかなかったのでは? とそんな気持ちにもなった。
勝手に気まずくなった僕は、気づかれない程度に清水さんのほうへ視線が向くように身体を傾けた。
そうなると自然と十川さんとの距離が近づくから、彼にはバレてしまったかもしれない。
十川さんがテーブルの下で脚を広げ、僕の膝とぶつかる。
何でもお見通しだよと、そんなふうに言われた気がした。
お互いを詳しく知らない十川さんと宗治郎さんが改めて自己紹介し合ってからは、僕と宗治郎さんの大学時代の話が主だった。
宗治郎さんがどれだけ僕のことを可愛がっていたのか、僕が懐いていたのかを語られ、恥ずかしさと懐かしい気持ち、後悔と不安でぐちゃぐちゃになった。
けれど僕の心情とは異なり、清水さんは穏やかに笑みを浮かべながら聞いてくれ、その表情に安心した僕は彼女の顔ばかり見ていた。
他にも、僕たちの仕事の話、宗治郎さんの仕事の話、ふたりの最近の話など、意外にも沈黙なく時間が過ぎた。
宗治郎さんは終始嬉しそうで、時々視線が合うとにっこりと笑ってくれた。
それにうまく返せない僕だけが不自然だったかもしれない。
清水さんと宗治郎さんの話や、僕が突然紹介を提案したこと、それに感謝していることも話題に上がり、「へえ」とだけ答えて飲み物を流し込んでいた十川さんのことが気になった。
十川さんも仕事モードの声色ではあったけれど、それなりに発言してくれていたように思う。
彼がこの場で何を知りたかったのかは結局分からなかったけれど、僕の態度を見て何か感じることがあったに違いない。
「ちょっとトイレに……」
この空気に耐えられなかったわけではないけれど、少しだけ気分が変わればと思って立ち上がると、「じゃあ俺も」と十川さんも立ち上がった。
さすがに同じタイミングでトイレは……と思ったけれど、行く以外の選択肢もないから席を外した。
「十川さん、つまらなくない? 大丈夫?」
廊下はふたりできれいに横に並ぶことはできない狭さだから、振り返るようにして彼にそう尋ねると、他のお客さんの死角に入ったところでぐっと引き寄せられた。
咄嗟のことでバランスを崩したけれど、それもあっさりと受け止められてしまう。
「俺は大丈夫ですけど、望月さんは勝手に踏み込まれた気がして嫌になった?」
「……え?」
「俺、もしかしてやりすぎましたか?」
少しだけ酔ったのだろうか? それとも照明のせい?
彼の顔が何となく熱っているように見えた。
「踏み込まれたとかは……」
あの日あんなふうに絡まれたときの僕なら、そう思ってもおかしくなかった。
けれど今は、確かに気まずさはありつつも、十川さんに対しての拒否や嫌悪はない。
「じゃあなんで俺のほう見ないの? 清水さんばっかり見て、大貫さんに微笑まれてさ」
「えっ……?」
首の後ろに手を回され、彼の顔が近づく。拗ねたように眉を垂らした彼のことを、少しだけ可愛いと思ってしまった。
思い返せばいつもより飲むペースが早かった気もする。僕が十川さんに対して何かネガティブな感情を抱いたと気にしていたのかな。
「やっぱりふたりで食事に行かないと。隣に座ったらあんたの顔が見えないから」
それだけ、と言って僕の返事も聞かないまま、十川さんは結局トイレに行かずに先に戻ってしまった。
「なっ……、」
取り残された僕の頬の熱が一気に上がる。
「今日の十川さん、変だ……」
トイレを済ませ手を洗うと、水で冷たくなった手で必死に冷ましてから席へと戻った。
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