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好意の在処7
いざ話をするとなると、やっぱり怖い気持ちも出てくる。
本当に言う必要があるのか、彼に甘えて言わなくても良いのでは、言わなくてもこれまで通り関われば良いのでは、とそんな考えも浮かぶ。
それでも、どうしてか十川さんに嘘をつきたくなかったし、誤魔化したくなかった。
改札前でかたまってしまったことも含め、正直自分が何に混乱しているのかはまだうまく言語化できない。
でも、十川さんに話すことで少し整理できるんじゃあないかって、そんな期待もあるのかもしれない。
「実は、宗治郎さんのこと好きだったんだ」
「……うん」
ひとりで抱えていたものをいざ吐き出してみると、そこからはもう止まらなかった。
話す順序も何もかもまとまっていなかったけれど、ずっと宗治郎さんに片想いをしていたこと、報われるための努力はしなかったこと、諦めるために清水さんを利用したこと、結局思った通りの展開になったのに素直に喜べない気持ちも確かにあること、あのとき何を頑張れば良かったのか考えても分からないこと、色んな気持ちをぽつぽつと吐き出した。
十川さんからすれば、理解しにくいことも受け入れられないこともあったと思う。
それでも彼は、僕の話を最後まで静かに聴き続けてくれた。
「努力をしなかったと言う望月さんを否定するつもりも、こうすれば良かったと言うつもりもないけれど、でも受け入れてもらえないって決めつけて諦めたこと、もったいないなあとは思いました。俺では到底想像できない葛藤があったんでしょうけど、でも望月さんって、こんなに可愛くて魅力的なのに……と。まあ、それが正直な感想です」
彼なりの配慮の結果かもしれないけれど、いつもより言葉数が多いように感じた。それに、少しだけ早口だ。
もしかしてと前に期待していた通りに、十川さんは同性への好意に対しては何も言わなかった。
それについてわざとらしさはなく、自然に理解してくれたのかもしれないと、勝手に安心した気持ちもある。
「可愛くて、魅力的か……。なんか、ありがとうね」
「いや、望月さんを励ますために言ったとかではないですから。嘘つかないです。まあ自分の可愛さとか魅力が本気で分からないんだったら今はそれでも良いですけど……」
嘘をつくというより、少しでも気持ちが落ち着くように良く言ってくれただけだと思っていたのに、十川さんは僕の反応が気に食わないといった様子で、まだ熱いだろうお茶を一気に数口流し込んだ。
「俺は望月さんじゃないから分からないですけど、……でも、告白しないにしてもわざわざ誰かとくっつけなければ、とも思いました。この話を聞いて今日のあのふたりを思い出すと、俺でも抱く印象が違うから」
さっき彼が言っていたように、こうすれば良かったのでは? というアドバイスではなくて、あくまで僕の立場で考えたとき、その決断はつらかったんじゃないかと、そんなふうに寄り添ってもらえたように感じた。
誰かに聞いてもらえることで、こんなに気持ちが落ち着くんだと、彼のおかげで知ることができたように思う。
「えっとね、それは……」
僕は、まだ聞いてくれそうな態度でいてくれる十川さんに甘え、宗治郎さんと彼の幼なじみの畠中先輩の話をした。
宗治郎さんに気持ちを伝える気はなさそうなのに宗治郎さんからアプローチされることを待っていて、彼や周りを試すような言動をする彼女が苦手だったこと、そんな人に宗治郎さんを取られたくなかったこと、僕が宗治郎さんのことを諦めるために自分の納得できる相手と付き合ってほしかったこと。
「だからあんなことをして自分を慰めようとしたの。そのせいで清水さんまで巻き込んじゃった。勝手だし、最低だよね」
お茶に手を伸ばしたけれど、湯気を見るだけで熱く、結局飲まずに戻した。
「それについては、望月さんは出会うきっかけを作っただけで、その先を選択したのはあの人たちでしょ。あんたは別に何も悪いことをしてないわけだし、勝手だとか最低だとか、そんなに卑下してほしくないですけど」
「え……」
「だってそうでしょ? 望月さんが自分のために大貫さんに清水さんを紹介したことは事実だけれど、その先どうしたいかはあのふたりが選択して決めること。そこに望月さんの強制力なんて何もないよ。何も酷いことじゃない」
十川さんは変わらず言葉数は多いけれど、もう早口ではなくなって、ひとつひとつの言葉をこれまでよりもさらに丁寧に伝えてくれた。
彼の言う通りだと、そう思っても良いのだろうか。
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