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好意の在処8
僕は勝手なことをしたし、それも結局素直に受け入れられないけれど、それでもふたりが選択したことで、僕はきっかけを作ったにすぎないと。
自分のために清水さんを利用したなんて、思わなくて良いんだと。
「実際にふたりが付き合ったことについて、素直に喜べないことも悪いことじゃないし、みっともないことでもない。そんなにすぐに切り替えられないくらい、あの人が好きだったってことでしょ」
まるで今、僕の心を読んだかのような言葉をかけられ思わず顔を上げると、僕に伝えることを考え過ぎてなのか、十川さんの眉間に皺が寄っていた。
せっかくゆっくりできるはずの週末に、こんな表情をさせて申し訳ないと思いつつも、十川さんからの言葉は今の僕にとってどれも必要でありがたいものだと思った。
「……ところで、十川さんはこのことをずっと知りたかった? 今日はそのつもりで宗治郎さんたちとの食事を了承してくれたの?」
ようやく一口お茶を飲んだ後、気になっていたことを彼に尋ねてみた。
それなりの熱さを覚悟しながらお茶を口に含んだつもりだったけれど、あっという間に適温になっていて時間の流れを感じた。
……心地良い話や楽しい話をしているわけでもないのに、それでもこの時間が過ぎていくことが寂しいような気がする。
「うーん……、まあそうなんですけど」
僕の質問にどんなふうに答えるべきか言葉を探している十川さんを見ながらふと、ある不安が浮かんだ。
十川さんと話すようになったばかりのあのときに、僕が気持ちと反対の行動をする理由を知りたいと言っていたそれが今日叶ってしまったことで、言い方は悪いけれどそもそも彼が僕に付き纏っていた理由がなくなってしまう。
今の彼からは想像できないけれど、元々は好意的に知ろうとしてくれているとは感じられない言動ばかりだったし。
関わる時間が長くなったり、僕も彼に向き合おうとしたり、彼の本当の優しさに触れてからは、好意的じゃないとかそんなことは思わなくなったけれど。
でも、今日あのとき知りたかったことは僕が話したこと、十川さんが実際に見たことが全てだ。これ以上の情報はない。
あのときの十川さんの中ではきっと、僕が十川さんに対して気持ちを教えられるようになること、そして十川さんも気になったことを聞ける間柄になれることが、ある意味でゴールのようにも思えていたんじゃないかな。
宗治郎さんのことだっていつかは知ってほしい気持ちもあったのに、いざ知ってもらえたらこうして悩んで、僕は何がしたいのか自分でも分からない。
……どうしよう。
さっきまではこの時間が過ぎていくことが寂しいなんて考えていたのに。
少し前の自分の質問を後悔して、今では怯えてすらいるのだから、今日の僕はやはりずっと混乱しているのかもしれない。
答えを聞きたくないからなかったことにしようか。
けれど、そう思ったときには、目の前の十川さんは言いたいことを纏め終えたようでこちらを見ていた。
カップの持ち手を握る指先に、思わず力がこもる。
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