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好意の在処12
◇
あれから忙しい日々を乗り越え、12月もほぼ終わりに近づいた。
宗次郎さんたちとの食事をしたあの日は、結局十川さんとゆっくりできなかったから別日で彼を誘った。
今回はプチ打ち上げではなく前回のお詫びだと言って誘った。
けれど、彼の反応を見ているとわざわざ理由を作らなくても、気軽に誘ってみても良いのかもしれない。
それから、今年のクリスマスは水曜日で週の真ん中ではあったけれど、十川さんに何の予定もないなら一緒にクリスマスマーケットに行かないかと誘われ、仕事を早く終わらせて行くことになった。
クリスマスを誰かとふたりきりで過ごすことは人生で初めてかもしれない。
高校まではそのとき仲良しだったメンバーで騒いでいたし、大学は宗治郎さん含むサークルメンバーでケーキを食べて過ごしていた。
社会人になってからは駅にあるイルミネーションを帰りに見るくらいで、特にクリスマスを楽しむことはしなかった。
だから、今回のクリスマスマーケットはけっこう楽しみにしている。
昨日の夜はなかなか眠れなかった。この歳になって恥ずかしいけれど。
「望月くんは今日何か予定があるの?」
「え? あ、まあ……」
「あっ、彼女か……? ってこんなこと聞くの良くないか」
「別に大丈夫ですよ」
鞄に必要な書類を入れながら西山さんが声をかけてきた。
僕の相手がまさか十川さんだとは思わないだろうし、もしそのことがバレてしまったら確実に揶揄われるだろうから絶対に言いたくないと思っていたけれど、どうやら西山さんはこれから外勤のようで直帰するらしい。
クリスマスを友人と過ごすなんてよくあることだろうけれど、僕たちの仲が良くない時期も見ている彼女からすると、きっと面白いネタになってしまうだろうから。
「あ〜、クリスマスまで仕事とか〜」
「行ってらっしゃい」
「……はーい」
肩を落としながら西山さんが僕のほうに向かって手のひらを見せてきたので、がんばれの意味を込めてハイタッチした。
手を振って部屋を出ていく西山さんを見ながら、残り数時間で仕事を終わらせるために気合いを入れ直す。
ふと、スマホを見ると「時間通りに終わりそうですか?」と十川さんからメッセージが来ていた。
仮に終わりそうになくても絶対に終わらせてみると言う強い気持ちで、「大丈夫!」というメッセージとスタンプを返した。
少しして、十川さんから「楽しみにしています」のメッセージが追加で送られており、それを見て自然と口元が緩む。
何を食べようかな思いながら少しずつ空いてきたお腹をさすり、残りの仕事を片付けた。
定時になるとすぐに席を立ち、待ち合わせ場所にしていた職場の入り口に向かった。
十川さんより僕のほうが早く着き、それを何となく恥ずかしく思いながら彼を待つ。
数分した後、息を切らした十川さんがやってきて、お互い少しだけ気まずくなり笑った。
「俺、誘っておきながらクリスマスマーケットって初めてなんですよね」
「そうなんだ。でも僕も長らく行ってないからほぼ初心者のようなものだよ」
「とりあえず、ホットチョコレートは飲みたいですよね」
「意外と可愛いこと言うんだね」
雑談をしながらクリスマスマーケットへと向かうと、週の半ばとはいえクリスマス当日なこともあり混雑していた。
前から来た学生の集団にぶつかりそうになったとき、僕の腰に手を回した十川さんに抱き寄せられ、一気に距離が縮まる。
「望月さん、人多いしはぐれそうだから俺のほうに寄っておいて」
「……はい」
腰に回された手はすぐに離れていったけれど、感触は残っている。
どうしてか恥ずかしくなり少し距離を取ろうかと思ったけれど、また同じようなことになるかもしれないと十川さんにくっつくようにして歩いた。
それに気づいた十川さんが一度こちらを見て微笑み、「何から食べます?」と周囲の店を指差した。
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