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週末のデート2
翌週も、一度もランチに行けないまま、あっという間に金曜日の夜になった。
僕のほうはやっと仕事が落ち着いたし、定時で終わったのに、十川さんがまた外勤でいない。
昼も夜も一緒にいられないと、彼が丁寧に連絡をくれたものの、園田さんの件があったせいで素直に受け止められなかった。
この後、彼の外勤先まで会いに行こうか?
僕もちょうどその辺に用事があったんだと、そんな言い訳をしてさ。
……いや、すぐにバレてしまうだろうな。さすがに引かれてしまうかもしれない。
「望月くん、本当に大丈夫なの?」
顔に出ていたのだろう。
西山さんが、心配そうに僕を見つめていた。
「すみません、大丈夫です」
「週末しっかり休むんだよ。お大事にね」
「はい」
自分でも驚くほどに、気持ちが沈む。
重い足取りで帰宅すると、十川さんからメッセージが来ていた。
やっぱり今日会えるとか……!?
スタンプで終えられているトーク画面を、期待を込めて開く。
ひとつめのメッセージは、改めて今日は難しいという内容のメッセージだった。
無駄な期待をした自分を笑いながら、次のメッセージを見ると、『明日水族館行きませんか? それとも食事以外は難しいですか?』と、予想外の内容だった。
「水族館……? えっ……」
明日会えるだけでなく、水族館に行くってこと?
十川さんと僕のふたりで?
いやでも、もしかして、園田さんの件で巻き込まれたのかもしれない。
彼女と行くから一緒に行きませんか? と、そういうことなのかも。
「はあ……」
急上昇していた気分がまた一気に落ちてしまった。
それでも、彼女がいるのかどうかを早く確認したい僕は、彼にすぐ返事をした。
『水族館、大丈夫だよ。僕と十川さんのふたり? それとも他に、誰か参加者がいるのかな?』
いると言われたらどうしよう。断りたいけれど、気になるから断れない。
そんなことをぐるぐると考えていると、画面に彼の名前が大きく表示され、メッセージではなく電話が来たのだと分かった。
「……もしもし」
緊張して少しだけ上擦った声で出ると、「今時間大丈夫ですか?」と優しい声がした。
外が騒がしいから、帰宅する前にすぐかけてくれたのだろう。
「大丈夫だよ」
「水族館が数ヶ月前にリニューアルしたみたいで。望月さんと水族館が似合いそうだなって思ったんですよ」
「……うん」
「それで、当たり前に俺と望月さんで行くつもりだったんですけど、他に誰か誘ったほうが良いですか? そのほうが、望月さん的に行きやすい?」
当たり前に俺と望月さんで、という彼の言葉が何度も脳内で再生される。
彼も僕とふたりが良いと思ってくれていたんだ。
「僕もふたりが良い! ふたりで行きたい!」
ふたりきりが良いというニュアンスで言われたわけではないだろうに、都合良く変換してしまった僕は、ひとりで勝手に恥ずかしい言葉を口走ってしまった。
気づいたときには彼に言葉が届いた後で、そこからはどうにかして誤魔化すこともできないから、ひとりで静かに焦る。
僕は何を言ってしまったんだ。
「ははっ、俺もふたりが良いですよ」
「……うん」
けれど、電話の向こうの彼は、優しく笑ってくれた。
その声からはネガティブなものは感じられなくて、むしろ喜んでいるように思えた。
「疲れてるだろうに、明日出かけて大丈夫なの?」
「望月さんこそ、大丈夫ですか? 俺はあんたといると元気になれるから会いたいです」
「……そっか」
僕も、とは言えなかったけれど、同じ気持ちだと思いながら頷いた。
元気になれるだなんて、そんなことを言ってもらえるとは思っていなかった分、頬が緩んでしまう。
「ちなみに、俺は夜までいたいんですけど、どうですか?」
「夜まで? うん、大丈夫だよ」
十川さんと食事に行くときは、いつも夜まで過ごしているけれど、それは仕事終わりだからその時間になっているだけ。
そうではないときの「夜まで」は、いつもとは違う特別な感覚を強くさせた。
だって、水族館は昼間に行くでしょ? そこから夕方まで過ごして解散ではなくて、夜までってことはけっこう長い時間だと思う。
それを十川さんのほうから誘ってくれたことが嬉しい。
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