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週末のデート4
◇
昨日は早く寝るつもりだったのに、結局あれこれ考えてしまい、あまり寝ることができなかった。
顔色が悪く見えてしまったらどうしようと不安になったけれど、十川さんへの好意を意識してしまった今、そんな心配をせずとも勝手に顔が赤くなったり、楽しそうな表情になってしまうに違いない。
反対に、表情に出すぎないようにしないと。
宗治郎さんのときは、自分の中では上手に隠せていたつもりだけれど、十川さんに対してはそううまくいかない気がする。
宗治郎さんのときよりも会う頻度が多いだけではなく、ふたりきりで過ごしているし。
何より、宗治郎さんが先輩として後輩の僕を可愛がってくれている関係性と、十川さんと僕の関係性は全然違うから。
土曜日だからか人が多い駅の改札を出て、待ち合わせ場所に指定されたコンビニの前に立った。
僕が30分も早く来てしまったから、当たり前に十川さんはおらず、いったんトイレに入って髪型を整えることにした。
崩れにくいようにセットしてきたけれど、今はそれを少し後悔している。
気合いを入れすぎたかな? そうでもない?
十川さんに気づかれたとき、「職場にはしてこないのに俺との外出時にはするんだ」と思われないかと緊張してくる。
彼への好意を自覚すると、自分のあらゆるものが気になってしまい、それだけで頭の中が慌ただしい。
けれど、今日が来てしまったのだから、今さら悩んでも仕方がない。
もし次があるのなら、今日の十川さんの服装とかを見て、次回の対策を練れば良いか。
トイレを借りたお礼の意味を込めて、小さめのペットボトルのお茶と喉飴を購入した。
それでもまだまだ時間があるなと思いながら外に出ると、「あの人かっこいいね」と、コソコソ話をしている女性ふたり組がいた。
気になって視線を向けると、そこには十川さんがいた。
まだ集合時間の20分前なのに、もう着いたの!? と驚く。
僕が早く来てしまうのは仕方ないとして、十川さんが早く来る理由は?
十川さん的には、僕が既にいたら気まずくなってしまうだろうか。
もう少ししてから登場したほうが良い?
それとも集合時間の20分前行動をするタイプなの? 僕も20分前行動なんだよね、と登場したほうが良いのか?
「いや、さすがにそんなわけないか……」
コンビニの出入り口から一歩も動かずにいると、目の前の女性ふたりが十川さんのほうへ歩き出した。
まさかと思って見ていると、予想通りで彼に声をかけ始めた。
少し距離があるから、何を言っているのかは聞こえない。
僕とふたりで出かける約束が、ナンパ……なのか分からないけれど、この状況で覆るとは思わないものの、女性に囲まれているのを見て嬉しいわけでもない。
僕は数メートル分だけ近づいた。
けれど、隠れられる場所もなければ、僕の動きも不自然だったからか、すぐに十川さんに気づかれ、彼が僕に手を振った。
厚手のチェスターコートにネイビーのニット、ホワイト系のパンツを合わせていて、モデルのように見える。
顔が整っているしスタイルも良いから、スーツのときもかっこよかったけれど、私服はまた違う。
騒いでいる女性ふたりと心の中では同じ気持ちになりながら彼の隣に行くと、さらっと肩を抱かれ、十川さんは「それじゃあ」と女性に挨拶をした。
僕が来るまでどんなやりとりがあったのかは分からないけれど、女性は「せっかくだから4人でどうですか?」と、彼の腕を掴む。
「すみません、ふたりが良いので。ね?」
ふたりが良い、で昨日のやりとりを思い出して、一気に顔が赤くなるのが分かった。
彼女らを断りつつも、昨日の僕を揶揄っているみたい。
十川さんを睨むと、ははっと優しく笑われた。
残念がる女性らにそれ以上のフォローをすることはなく、十川さんが僕の手を引いて歩き出した。
「良かったの?」
「当たり前。あんたとふたりが良いの」
「そっか……」
十川さんの言葉に心が弾む。これだけ言ってもらえるのなら、今日はあまり気を遣わずに全力で楽しもう。
「そういえば十川さん、集合時間よりかなり早かったね」
歩きながら、ふと彼に尋ねた。
十川さんは、何を言っているんだ、とでも言いたそうな表情でこちらを見る。
「あんたが早く来てそうだったから、俺も早く来たんですよ。やっぱりいたし」
「ええ……?」
以前に、宗治郎さんにも同じようなことを言われた気がする。
僕はそんなに何十分も前から行動しそうな人に見えているのだろうか?
だったら何がそう見せているのか? と、考え込む僕を見て、十川さんが「冗談だよ」と笑った。
「冗談?」
「うん。俺が楽しみで早く来たかっただけ」
「……ふうん」
さっきから、嬉しい言葉ばかり言われているのに、「僕もそうだよ」の一言すら返せない。
これまでなら、素直に返せなくとも、もっとマシなことを言えていた気がするのに。
集合場所からここまでで、既に何もうまくいっていないのだけれど……!
「どうしたんですか? 険しい顔してる」
「大丈夫! 何でもない!」
何も大丈夫ではなさそうな返事をし、鞄からペットボトルを取り出すと、半分くらい一気に流し込んだ。
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