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週末のデート7
声をかけられる雰囲気ではなかっただろ、とは言い返せず、そのまま黙り込む。
あのときは十川さんも嫌そうに見えなかったし、園田さんの気持ちを知っていてあそこに割って入る勇気はなかった。
仮にそのとき十川さんへの好意を自覚していたとしても、結局は何もできなかったと思う。
前に並んでいた2組が店内に入り、その分席を移動した。次の次には順番が回ってきそうだ。
気まずさから、彼を見ることができない。
「どこから見られていたか分からないですけど、もしかして俺が園田さんと行くと思ってたの?」
「うん……。だって、時間が合えばって言ってたし、連絡先も交換してたからさ」
「え? ああ、連絡先ね。交換してませんよ。最後まで見てないじゃん」
「えっ、あの流れでしなかったの?」
驚いて顔を上げると、思ったよりも近くに十川さんの顔があった。
慌てて視線を下げようとしたけれど、それを読まれてか、彼に頬をつままれた。
「面倒じゃん。するわけない」
「……逆にあの流れでよく断れたね」
それでも逸らすと、もう片方の頬もつままれたから、諦めて視線を合わせた。
それで許されたのか、彼も僕の頬に触れるのをやめた。
「あの人にどう思われてもどうでもいいんでね。連絡先交換は同じ部署の人だけにしてるんですって断った」
「え? 本当に?」
「本当に。何か問題ですか?」
「いや……」
園田さん、どんな気持ちだったんだろう。
僕だったらあの流れで断るなんてできない。
十川さんって、僕に優しいし、清水さんや彼と同じ部署の人、それから西山さんにもそれなりの愛想があるのに、枠に入れる、入れないがこうもハッキリしているんだな。
十川さんと過ごす時間が多すぎて、さすがに彼女がいれば僕とここまで過ごせないだろうと思って、そこまで深く考えて来なかったけれど、この話を聞いて急にあれこれ想像してしまう。
ハッキリしている彼が、心を許して大切にする相手って、どんな人なんだろう。
彼と付き合うことになる人って、よほど好かれているってことだよね。
園田さんと来るつもりがなかったことで喜んだのも一瞬で、今度は自分の面倒な考えにうんざりしてしまう。
何をしたって、十川さんの自由なのに。
「何でちょっと目が湿ってるの?」
「……え?」
「俺が園田さんと行くか不安だったの?」
なんてね、と言いながら、十川さんが笑った。
まるで嫉妬した恋人を慰めるみたいな、そんな冗談を言う彼に、ぐるぐると悩んでいた思考が、今ここに引き戻される。
嫉妬する権利もないのに、図星だから余計に恥ずかしい。
十川さんへの気持ちを、全然上手に扱えない。今回はちゃんと大切にしようって思ったのに。
大切にするどころか、十川さんに迷惑をかけるかもしれない。
「ねえ、冗談じゃなくて、本当に不安だったの?」
「……や、そうじゃなくて」
これ以上この話をすると、今日のデートが台無しになりそうだと、僕もサイトを開いてメニューを確認した。
これがおいしそうだといちごがたくさん積まれたパフェを指さしたとき、十川さんがその指を掴んだ。
「俺、望月さんとしか予定立てませんよ」
「え?」
「園田さんから情報を聞いておいて、あの場でキッパリ行かないって言うのは失礼かなって思ったから、何となく返しただけですよ。あの人も本気か分からないし、社交辞令でしょ」
「……でも、社交辞令なら連絡先まで聞かないんじゃ?」
「そうですか? だとしてもどうでもいいです。望月さんとここに来れたから」
「……っ、」
十川さんの言葉ひとつひとつが、僕を想ってくれているように感じた。
わざわざ水族館に誘ってくれたり、こうして僕が好きだろうと思う店に連れて来てくれたり。
あげく、こんな面倒な拗ね方をしているただの職場の先輩のために、フォローまでしてくれて。
嬉しいけれど、虚しい。勘違いしたくなる。期待したくなる。
でも、十川さんの真意は分からないし、聞く勇気もなければ、伝える勇気もない。
僕とこうして過ごすことに、十川さんは何のメリットがあるの?
ぎゅうっと握り潰されるみたいに、胸が痛くなった。
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