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温めたい気持ち2
◇
十川さんとの中華街デート当日、ボーダー柄のカットソーに黒色のチノパンツを合わせたコーデにした。
十川さんはいつも暗めの色が多いから、隣に並んだときに何となく近い雰囲気になればと思って。
服に皺がないか確認しながら、パンパンと伸ばすようにして叩いた。
「人が多いな……」
今日は目的地まで少し距離があるから、現地集合はやめて、ちょうど集まりやすい駅から一緒に向かうことにした。
僕が早めに来すぎてしまわないように、今回は十川さんが乗る電車をあらかじめ決めてくれた。
その時間より早めに来ても、乗る電車は変わらないから意味がないよと彼は言っていたけれど、楽しみで早く準備してしまう癖はやはり抜けない……。
さすがに30分前はやめたけれど、20分前には待ち合わせの改札に着いてしまった。
「仕方ないよねえ……」
十川さんに見つかったら、何か言われるかもしれるだろうか? いったん隠れておいたほうが良い?
いや、十川さんに見つかるってことは、彼も早く着いているってことになるから大丈夫か。
そんなことを思いながら、周りを見渡した。
大きめの駅だから、お弁当屋さんやコンビニ、お土産屋などたくさん並んでいる。
集合時間になるまで、とりあえず店を見てまわることにした。
お弁当屋さんには、色んな種類が並んでいて、彩りが良く、どれも目を引いた。
買う予定はないのに、あれもこれもおいしそうだと、ケースをつい眺めてしまう。
普段、仕事に持って行くお弁当は、前日の残り物を詰めることが多いけれど、やっぱり彩りって大切だよね。
茶色ばかりになってしまいがちだから、少し緑と黄色を足してみるのが良いかもしれない。
「あっ、すみません……!」
何を購入するか悩む振りをして見ていると、ケースに集中しすぎたせいで、他のお客さんにぶつかってしまった。
咄嗟に謝罪の言葉を伝えた後、顔を上げて改めてお辞儀をしようとしたら、僕の目の前にいたのは十川さんだった。
「お昼は中華街に行くのに、お弁当見てるの?」
「えっ」
何でいるの! と思わず声を出すと、「それはこっちの台詞だよ!」と十川さんに笑われた。
「約束してもさ、望月さんは絶対に早く来るって思ったから俺も早く来たの」
呆れることもなく、目元に優しさが滲んでいるような、そんな表情で十川さんが僕を見ている。
「……僕が早く来るの分かってたって、ゆっくりその時間に来ればいいのに」
嬉しいのに。可愛くありがとうと返事をすることができない僕に対して、十川さんはさらに目尻を垂らした。僕の頭をぽんぽんと2回撫でる。
「早く会えるなら、そっちのほうがいいので」
「……っ、」
行きましょうと、十川さんに差し出された手を握り、ふたりでホームへと歩いた。
中華街は休日なこともあってか、かなりの人で溢れていた。
どこから回れば良いのか分からないけれど、とにかく歩きながらおいしそうな匂いがしているお店に並ぶことにした。最初に餃子屋の前で足を止める。
「あっ、ここの餃子、調べているときに出てきたところかも」
「俺も見ました。食べてみます?」
大きい餃子が3個入っている。色んなものでお腹を満たしたいから、3個入りを半分に分けて食べることにした。
「はは、でっかい」
先に餃子にかぶりつくと、肉汁が中から溢れてきた。一口では食べきれず、2回に分けてひとつを食べ切ると、十川さんが眉を垂らして僕を見ていた。
「望月さん、汁が顔に付いてるよ」
十川さんがハンカチを取り出すと、僕の口元へと向けた。
「えっ、あ、ティッシュがあるよ……!」
「いいから」
十川さんは汚れることに対して何の迷いもないようで、そのまま自分のハンカチで僕の口元を拭いてくれた。
洗って返すよと伝えたけれど、気にしないでと言われてしまう。
「じゃあさ、望月さんが俺に食べさせてよ」
ハンカチで拭いてあげたお返しで、ということだろうか?
「ええ?」
「あー……」
十川さんが僕を見つめたままで、大きく口を開けた。
こんなに人がたくさんいるのに! と思いながら周りを見渡した。
みな自分が購入した商品や屋台にばかり目を向けていて、誰も僕たちを気にしている人はいない。
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