84 / 110

楽との日々6

◇ 「え! そういうこと……!?」  お風呂から上がり部屋へと戻ると、スマホを見ていた楽が顔を上げ、僕を見るなり大声を出し目を見開いた。  自分のパジャマと僕のパジャマを交互に見ながら、何度も「同じだよね!?」「えっ、お揃い!」と、確認をする。 「お揃いだよ。びっくりした?」 「びっくりも何も……、何でそんな可愛いことばかりするの? 俺、怖いよ。楓さんの可愛さが増していくスピードが。俺をどうしたいの。もう、まじで可愛すぎて無理……」  楽はわざわざ立ち上がって僕を迎えてくれていたのに、早口でそう言うとその場に座り込んでしまった。 「楽……?」 「楓さんが可愛すぎて苦しい」 「え、そんなに?」  お揃いという事実に喜んでくれると思って用意したけれど、楽はそれを通り越して、準備した僕のほうに意識がいくみたい。  何度も可愛いと言われ、僕も恥ずかしくなり、隣に座った。 「楓さんは可愛いって言われるの嫌かもしれないけど、俺は本当にあんたが可愛くてたまらない」 「……嫌ではないけど、あまりに言われるとどうしたらいいのか分からないかも」 「そういうところも可愛い。どうしよう、ねえ、本当に大好き……」  楽が僕の肩へと手を回し、それから抱き寄せた。彼の肩に頭を乗せる形でおさまると、同じシャンプーの匂いがして、それにドキリとした。  うちに泊まることはこれまで何度もあったのに、僕がこの後のことを意識しすぎているせいか、普段通りなことにまで緊張してしまう。  膝を抱えるように座ったまま、それ以上どうしたら良いのか分からずかたまっていると、楽が僕の頬にキスをした。 「楓さん、可愛い」 「……可愛いって言いすぎじゃない?」  言葉を返す声が震えて、楽のほうをなかなか見ることができない。   自分の心臓の音で身体中がうるさい。期待と不安もあるけれど、それ以上に僕が楽に触れたくてたまらなくなってしまう。  今、横を向いて、楽と視線を合わせたら、僕はきっと彼の首に腕を回し、キスを求めてしまうと思う。  そうなったら、その後のことを、どうしたらいい? 僕から言う? でも、どんなふうに? 「毎秒思ってるから。これでも言い足りないくらいです」 「なんでそんな恥ずかしいこと、さらっと言えるの?」  ぐるぐると考えている僕とは違い、楽は余裕そうに甘い言葉を囁いた。  頬の熱が上がっていくのが分かる。冷房で肌の表面は冷えているのに、身体の内側が熱い。 「何も恥ずかしくないよ。知ってほしいから伝えます。俺がどんなにあんたのことが好きで、可愛いと思っているのか」 「……っ、」 「楓さん、こっち向いて」  楽に誘導され、抗えずに彼のほうを向くと、優しく顎に手を添えられ、それから唇を重ねられた。  柔らかい感触がしたかと思えば、唇の境目を舌先で撫でられる。  素直に少しだけ口を開けると、楽の舌が口内に侵入し、それから僕のにゆっくりと絡められた。 「……っ、あ、」  いつのまにか後頭部に手を回され、髪の中に指を入れられる。くしゃくしゃと動かされる指があまりにも気持ちよく、下半身に熱が集まっていくのを感じた。  楽のもう片方の手がお腹側から服の中へと入れられ、僕の肌に直接触れる。  身体が冷えているせいで、楽の指先の熱を感じ、思わず身を捩ると、僕が逃げるとでも思ったのか、楽のキスがさらに深くなった。 「楽、待っ……て、」  服の中に入れられている手が徐々に上がり、僕の胸元に辿り着いたけれど、楽が止まる様子はなく、指先で弾かれた。 「……楓さん」 「あ……」  唇が離れ、改めて楽を見ると、呼吸が荒くなり興奮しているのが分かった。  僕は、何を心配していたのだろうか。楽も当たり前に僕と同じ気持ちでいてくれたのに。 「こういうふうに俺に触られるの、嫌じゃないですか?」 「……っ、」  僕が答える前に、楽が口を塞ぐ。  これじゃあ答えられないよと、そう思いながらも、僕はコクコクと頷き、彼の舌に自分のを絡ませることで答えた。

ともだちにシェアしよう!