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予報は雨1

「付き合って半年経ったんだ! おめでとう!」 「ありがとうございます。なんだか照れますね」 「ふふ、楓くんてば可愛いねえ」  年が明け、楽と付き合って半年が過ぎた。今日は昼休憩前に楽を迎えに行ったけれど、急な対応で一緒に食事をすることが難しいと断られた。  それを見ていた清水さんが、「じゃあ私が一緒に食べよう」と笑い、ふたりで休憩室へとやって来た。  せっかくだから仕事の話ではなくてプライベートな話をしよう、という流れになったけれど、共通の話題でお互いに興味がある内容を考えると、どうしても恋愛話になってしまう。  清水さんに、改めて半年を祝われた。  僕と楽の間に、もう少し何か葛藤があるのかと思っていたけれど、想像よりも早いスピードで半年が過ぎ去ったように思う。 「清水さんたちは長いですよね? 1年は経ってます……よね?」 「うん。1年数か月は経ったかなあ」  1年数か月前は、宗治郎さんに片想いをして苦しい気持ちでいたのに、今ではこうして何も思うことなく清水さんの話を聞いているから不思議だ。  楽と出会えていなければ、絶対にありえないことだと思う。  楽に関係のない話をしているときでさえ、こうして彼のことを思い浮かべてしまう。僕は本当に楽に助けられているなと、改めてそう感じた。 「あっという間ですね。こんなこと言うのは失礼かもしれませんが、結婚の話は出ているんですか?」 「全然失礼じゃないよ。結婚はね、今年の10月にしようって話しているんだ」 「今年の10月!」 「そうなの。2年記念日のタイミングで」  清水さんの頬が緩んでいくのを見ながら、僕まで温かい気持ちになった。  あのとき、自分都合でふたりを引き合わせたけれど、こうして幸せな姿を見られて嬉しい。 「すごくおめでたいですね! 好きな人たちが夫婦になるなんて、僕にとっても嬉しいです」  さっき清水さんが僕にしてくれたように、僕も拍手を返した。 「全部楓くんのおかげだよ。本当にありがとうね」 「感謝されることは何もしていないです。でも本当、嬉しい……。結婚式は絶対に呼んでくださいね」 「来てくれるの嬉しいよ〜!」  その後もしばらく清水さんと話し、結婚式は来年の夏頃を予定していると聞いた。  婚姻届を提出するのは、今年の秋らしい。まだまだ先に思えるけれど、その日もあっという間にくるんだろうなと、清水さんの話を聞きながらそう思った。  金曜日の夜は、毎週恒例のお泊まり会で、当たり前のように楽の家に帰った。  ぼんやりとテレビを見ながら、先にお風呂に入っている楽を待っていると、しばらくして楽がスマホを真剣に見ながら戻って来た。 「楓さん、そういえば俺、来週の土曜日に結婚式行ってくるから」 「あ、ああ! 前に言ってた学生時代の友人のね?」 「うん、そう。その日は帰りが遅くなるけど、俺の家で待っててくれる?」  スマホをじっと見つめていたのは、どうやら帰りの電車の時間を確認していたのが理由みたいだ。  最近は楽と毎週末一緒に過ごしているけれど、強制しているわけでもないのだから、こういうときも無理はしなくて良いのに。  せっかくの機会だから、みんなと積もる話もあるだろうし。 「疲れて帰って来るだろうし、その日は会わなくて良いんじゃないかな。僕は大丈夫だよ」 「……大丈夫って言わないで。俺は会いたいんですけど」  楽のことを気遣ってそう伝えたのに、よほど気に入らなかったのか目を見開き、そんなことを言うなんて信じられない、とでもいうような顔をする。  そんなに? と思いながら笑っていると、楽はさらに拗ね下唇を噛んだ。  楽の反応が面白く、僕は彼の頬を指先で優しく摘むと、前歯で見えなくなっている下唇あたりに、そっとキスをした。 「じゃあ俺が楓さん家に行くのは?」  少しずつ下唇が現れたかと思うと、今度は突き出されるから面白い。  駄々をこねる子どもみたいだ。  なんだか意地悪したい気持ちになってしまう。 「日曜日に会えるのに? そうまでして土曜日も会いたいの? 夜に少ししかいられないのに?」  楽の眉が、どんどん下がっていく。  内容的には大したことではないはずなのに、楽はこれだけのことで落ち込むんだ。  そんなに僕と一緒にいたいと思っているのか。 「うん。土曜日から会いたい……」 「……っ」  僕に何も言い返すことなく、楽は素直にそう伝えると、肩まで落として黙ってしまった。  あまりの可愛さに、僕の中で何かがワーッと騒ぎ出す。  恋人フィルターがかかっているから? いや、そんなこと関係なしに可愛すぎるんじゃ?  重いだとか、面倒だとか、そんなことは一切思わずに、彼への温かな気持ちで胸がいっぱいになる。   「じゃあ、僕が泊まりの用意して楽の家に行くよ。だから楽はそのまま帰っておいで。土曜日から会おう」  両手を広げると、楽が甘えるように僕の胸に頬を預けた。 「本当? ありがとう」  擦り寄る楽の頭を撫でながら、その髪にキスをする。 「それにしても、結婚かあ……。良いよねえ……」  僕の背中に腕を回しながら、楽がぼそりとそう呟いた。  清水さんの話と言い、楽の友人の話と言い、最近は周りに結婚の話が溢れているように思う。  それだけ結婚が身近な年齢になった、ということでもあるのだろうけれど。   「そうだね……」  楽の頭を撫でていた手を止め、それ以上何も言えなくなってしまった。楽の言葉だけが耳に残って離れない。    結婚を、ずっと一緒にいることと考えるのか、法的に結ばれることを指しているのか、僕とのイメージなのか、悲しいけれど別の人とのイメージなのか。  ゲイを自覚した時点で、僕はどこかで結婚を諦めてしまっていたけれど、楽は違うのかもしれない。  自分自身に向き合うこと、自分の気持ちを認めること、相手に好きになってもらうために努力すること。  それらはクリアできても、大切な人と結ばれた先のことまでは考えられていなかった。  

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