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予報は雨5

「楓とは同じ大学で同じサークルだったので、仲良しなんですよ。でも、もーっと仲の良い人が別の階にいるんです。だから私のことなんて頭になかったみたい。それでびっくりしちゃったんだよねえ?」  僕の顔を覗き込みながら、畠中先輩は僕の頬を何度かつついた。  ネイルをしている長めの爪が食い込む。つつくなんて可愛いものではなく、刺したと言うほうが正しいかもしれない。 「望月くん、良かったね。仲良しの先輩に会えて」  村田さんは鈍いのか、畠中先輩の嫌味には気づくことなく、穏やかな表情で笑った。 「楓、そんな表情しないでよ。私たち1年半振りくらいじゃない? 私、ずーっと楓に会いたかったんだよ」 「……っ」  そんなことは一切思っていないくせに、畠中先輩はそう言うと僕の頭を撫でた。  触れられる度に身体が強張り、何の言葉も返せなくなってしまう。  触れられた部分は何の温かみも感じず、ただただ広がっていく不快感で呼吸が苦しい。 「1年半振りかあ。なかなか会えなかったんだね。望月くん、良いよ。畠中さんと少し話しておいでよ。俺は先に車に戻っているからさ」 「いや……」 「大丈夫ですよ。楓とは近々会うことになるとは思うので」  村田さんにそんな気遣いは不要だと伝えようとしたとき、畠中先輩がにっこりと微笑み、それから僕の耳元に顔を寄せた。 「あのふたり、結婚を考えているらしいね」 「……あ、」  顔をあまり動かさず、視線だけ向けて畠中先輩を見ると、今まで見たことがないくらい怖い表情をしていた。声もさっきまでとは別人のように低い。  僕が紹介したとはいえ、まさか宗治郎さんと清水さんが、トントンとうまくいくなんて思っていなかったに違いない。  宗治郎さんと職場が同じビルなら、彼と会う機会もたくさんあるだろうし、そもそも宗治郎さんと畠中先輩は幼なじみだから、そこでの関係は当たり前に続いているはずだ。   きっと、清水さんとのことも、宗治郎さんから色々聞いているのかもしれない。  最近、引っかかる出来事ばかり起きてばかりで、胸がざわつく。  このまま次々と嫌なことが起きて、そこから抜け出せなくなってしまいそうだ。 「それじゃあ、失礼します。村田さん、ありがとうございました。楓も会えて嬉しかったよ。またね」  笑っていないのに口角が上がっている不気味な表情の彼女に、僕は軽く頭だけ下げ、すぐに背を向けた。  エレベーターに乗っている間も気持ちが落ち着かず、楽の顔が見たくてたまらなくなった。  この事情を伝えて分かってもらいたいわけではなく、ただ、彼の顔を見て安心したい。  車に向かって歩きながら、村田さんは「畠中さんが知り合いなんてびっくりだよ。 あの人キレイだよね。優しいし」と笑っていた。  外面が良いだけなのに。  そう思っていても、それが真実だとしても、村田さんに言えるわけもなく、かといって認めたくもないから、無言で何の反応もせずに聞いていた。 「清水さんのところと、うちの部署と畠中さんたちと、今度一緒に新しい企画の打ち合わせをするんだよね」 「えっ……」  あまりにもひどい組み合わせに言葉が詰まる。清水さんのところってわざわざ名前が出るということは、清水さんが参加しているのだと思う。  畠中先輩と清水さんが関わるなんてこと、絶対にあってほしくないのに。清水さんが何を言われてしまうのか分からない。 「あ、望月くんと仲の良い十川くんも参加するらしいよ」 「え? 十川さんもですか?」 「そうそう。清水さんがメインらしいけどね」 「……へえ」  清水さんのことを気にするだけでもどうにかなりそうなのに、そこに楽まで加わっているだなんて、聞いていておかしくなりそうだ。  清水さんのことを畠中先輩が知っているのはもうどうにもできないけれど、楽まで僕の知り合いだとバレたら、彼にも何かするかもしれない。    でもこれを、どうやって楽に伝えれば良いの?  清水さんのことも、どうやって守れば?   宗治郎さんに、畠中先輩に嫌なことを言われると、そう伝えるわけにもいかないし。 「そういえば、十川くんってかっこいいしさ、畠中さんは美人だし、ふたりって似合いそうじゃない? 確か……十川くんって彼女いなかったよね? この機会に畠中さんを紹介してあげれば?」 「……っ、」

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