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予報は雨6
さっき聞いた、企画のメンバーへの驚きや、これからどうすべきかの処理で頭が混乱しているのに。
村田さんは軽い雑談の延長で、僕にとっては爆弾でしかない話を始めた。
楽を、畠中先輩に紹介してあげればって……。
「あ、でも畠中さんは彼氏いそうだね。望月くん、彼氏がいるか知ってる?」
「畠中先輩に彼氏がいるかは、知らないです。でも十川さんは、畠中先輩みたいな人はタイプじゃないので、どちらにしろ無理だと思います」
「へえ、そうなの。さすが仲良しだ。好みまで把握してるんだ。ははっ。そうかあ……、じゃあ十川くんは理想が高いんだね」
思わず苛立ちが滲んだ声色で返してしまった。村田さんはそこはあまり気にしていないようで、特に何も言われなかった。
冷静にならなければと思えば思うほど、落ち着くことができない。
それどころか、村田さんの言葉が頭から離れなくなってしまった。
こういうときにも、彼が僕の恋人だと言うことも叶わないんだ。
証明云々の話ではない。恋人がいる、というそれだけの事実を伝えることもできない。
それから楽は、勝手に誰かにとっての理想の相手にされ、対する僕は、悪気もなく楽と誰かの間を取り持つよう言われるんだ。
村田さんに悪気がないからこそ、今後もこういう場面が何度もやってくるだろうイメージがわく。
そのうち、僕はこの手の話の流し方も上手になって、そういう望んでいない自分の成長にまた、虚しくなっていくんだろうな。
「どうした? 浮かない顔して」
助手席に乗り込んでから、何も発言しなくなってしまった僕を心配してか、村田さんが戸惑ったような声を出した。
「いや、何もないです。すみません」
「それなら良いんだけど……。あ、そうだ。今望月くんが待っている仕事は……まあ、落ち着いていないだろうけれど、今よりもう少しだけ忙しくなっても良いなら、君もこの企画に参加する? メインは俺と清水さんだから、サポート的な感じで少ししてもらうことがあるかなあってくらいだけどさ」
「……え」
突然の誘いに、さらに余裕がなくなり、どうしてか泣きそうになった。
僕が加わることで、畠中先輩がどう動くのか分からないし、むしろ加わらないほうが平和に終わるのかもしれない。
それでも、僕の知らないところで何かが起きてしまうよりは、自分がその場にいて、対応できることはしたほうが良いに決まっている。
純粋な仕事への興味で参加を決断できればよかったけれど、これはもう、清水さんと楽を守るための使命なのかもしれない。
「参加して良いなら、僕も参加したいです」
「じゃあ言っておくね。清水さんも十川くんも喜ぶと思うよ」
「……はい。よろしくお願いします」
シートベルトを握り締め、僕は少しだけ視界を歪ませている涙を指先で拭った。
何事も起きないで終えることは難しいかもしれないけれど、せめて少しでも状況が悪くなりませんようにと、揺れる車内で何度も何度も願った。
職場に戻り、しばらくすると楽が僕のところへ走って来た。
村田さんが、帰りの車の中で誰かに連絡していたけれど、おそらくそれが清水さんで、その清水さんから聞いてきたのだろう。
「楓さんも加わるんだってね」
何も知らない楽は、とにかく嬉しそうに見え、声も弾んでいた。
「……楓さん? どうかしたの?」
うまくまとまらないし、何から言えば良いのか分からないけれど、でも楽には正直に伝えておいたほうが良いと思う。
最近の僕は空回っている気もするし、言わなかったことで楽のに心配をかけ、僕たちふたりの間がギスギスしてしまうことは避けたい。
それに、前に宗治郎さんを清水さんに紹介した理由を楽に伝えたとき、うっすら畠中先輩の話を出したこともあったから、話を聞いてくれるに違いない。
「楽……」
小声で彼の名前を呼び、シャツの袖を掴むと、楽はそれだけのことで何かを察したのか、僕の手を引き廊下へ連れ出した。
「楓さん、どうしたの? 話せそうなら聞きたい」
少しだけだと思いながら、誰からも見えない角度で楽の手を握った。
そんな僕の様子に、楽がさらに心配そうな顔をする。
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