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予報は雨7

「……時間もらっちゃってごめんね。あのさ、僕が清水さんに宗治郎さんを紹介した理由の中に、彼の幼なじみで嫌な人がいて、その人と結ばれてほしくなかったからって話したことを覚えてる?」 「うん、覚えてるよ」 「その人が、今日僕が加わった企画にいる畠中さんなんだ」 「え? そうなの……?」  僕が言葉を続けずとも、僕の表情や声色から、これからの話が良くないものだと伝わったようだった。 「……今日、村田さんと一緒に畠中さんに会う機会があったんだけど、清水さんと宗治郎さんの関係を良く思っていないような発言をされて」 「うん。それで……?」 「近々僕に会うことになるって言われた。もしかしたら、何かしてくる気なのかもしれない」  楽の手を強く握ると、楽も同じように強く握り返してくれた。  心配しすぎなのかもしれないけれど、畠中先輩に関しては、気にしないで流すことができる相手ではないから。 「企画の打ち合わせのときに、仕掛けてくるかもってこと?」 「……分からない。その発言をしたときの彼女は、僕がこの企画に加わることを知らなかったから。打ち合わせ中じゃないかも。でも、絶対に違うとも思えないし、不安もあったから、私情も含めて僕も参加したんだ」 「……なるほど。単純に楓さんと仕事ができることを喜んでいたらダメだってことね」  僕がひとりで心配していることだけれど、楽も同じくらい深刻に受け止めてくれていることが伝わる。  こんな状況なのに、やっぱり好きだなあとそう思った。  彼の目を見ていると、少しずつ呼吸がしやすく感じる。 「今メインで清水さんがやりとりしているけれど、顔合わせはまだこれからなんだよね。メールや電話のやりとりの中では、直接何か嫌なことを言われている感じはないし、宗治郎さんの知り合いってことすら知らないと思う」 「……そうなんだ」 「清水さんが畠中さんのことを知っていたら俺に言うと思う。それに、俺も今知ったからね。楓と畠中さんが知り合いだって」 「……そっか。畠中さんが僕や宗治郎さんと知り合いだってことを、清水さんや楽に伝えているとしたら、楽もその事実を知った時点で僕に言うもんね」  まだ何も始まっていないなら良かったと、その点でも安堵した。  僕の知らないところで、清水さんや楽が傷つくことがあってほしくはないし。  そもそも、宗治郎さんは、畠中先輩の存在を清水さんに伝えているのだろうか。  職場が同じビル内にある幼なじみがいる、ということは話の中で出ているのかもしれない。  さすがに清水さんという存在がありながら、畠中先輩と大学時代の頃のように会うこともないだろうし。  清水さんが知らなかったり気づかなくても、それが当たり前なのかもしれない。 「……それなら、このタイミングで僕が加わるほうが、もしかすると畠中さんを刺激して、余計にまずいことになるかもしれないね。今からでも村田さんにやっぱりやめると言いに行こうかな」  繋いでいた楽の手を握る力を緩め、村田さんのほうへ行こうとした僕を、楽が「待って」と強く引っ張る。 「でもそうしたら、楓さんは気になって仕方がなくなると思うし、色んなことを想像して心配になるんじゃない?」 「そうだけど、でも……」  一歩分、歩き出していた僕を、楽が眉を垂らして覗き込む。  楽の言う通り、僕が色んなことを想像して心配になることは目に見えている。  けれど、僕の勝手な気持ちで企画に加わることが良いことなのか、分からなくなってしまった。  何も言わない僕に対して、楽は大丈夫だよとでも言うように、頭を数回撫でた。 「知らないところで何かが起きるより、楓さんも加わって対処できるほうが良くない? 俺も協力するから。畠中さんが、宗治郎さん経由で清水さんのことを知っていることは間違いないし。楓の話を聞いていると、何もしない人には思えない……」 「そうだよね……。じゃあ僕、参加しても良いのかな」  楽を見つめると、力強く頷かれた。  僕に何ができるかは分からないけれど、何も起きないように、起きたとしても誰も傷つかないように、自分にできることは頑張りたいと思う気持ちはあるから。 「迷惑かけてごめんね。ありがとう」 「迷惑じゃないから気にしないで。むしろ話してくれてありがとうね」  そう言って仕事に戻って行く楽の背中を見つめながら、僕も気持ちを整え、それからデスクへと戻った。

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