6 / 31

第6話 異世界の神様ってすげえ

「ソーさん、俺はしばらくは手紙じゃなくて直接話してもいい?」 フランツ君に言われて俺は驚いた。 手紙や筆談が異世界流として流行っても、フランツ君は今までずっと普通に話しかけてくれていたし、それについてなんにも思ったことはなかった。 「ごめん。ソーさん。俺学校行き始めたばかりだから、まだあんまり字が書けないんだ。ちょっとなら書けるけど」 「もちろんだよ!ごめんね。気を使わせて」 いつも俺に異世界のことを教えてくれるフランツ君が、申し訳なさそうにしているのが、逆に申し訳なかった。 「せっかくソーさんが学校に通わせてくれているんだし、頑張って勉強して、俺もソーさんと手紙でやりとりできるようになるからねっ」 張り切って宣言されたけれども、目の前で手紙のやりとりするこの謎の文化は、そもそも異世界文化でもなんでもなくて、俺が望んでいた方法でもなんでもなくて。 「ううん。勉強は頑張ってほしいけど、フランツ君とはこのまま普通に会話したいな。だって家族みたいなもんだし」 フランツ君がびっくりした顔で俺を見つめた。 あ、家族みたいって思っていたの俺だけ?年の離れた弟みたいだな、と思ったり、大人びていて俺よりしっかりしていると感じることが結構あってむしろ兄みたいだなって思ったり、ご飯を作ってもらった時にはお母さんみたいだなって思ったりしてたんだけど。 「あ、そうか。家族って兄弟とかそういう?」 フランツ君がなぜか顔を赤くしている。珍しい。フランツ君が動揺するなんて。 「ソーさん、ええと気をつけてくださいね。家族になろうとか家族みたいだよねって表現はこの世界ではプロポーズの意味がありますから」 え?そうなの?家族になろうは分かるけど。家族みたいだね、もそうなの?恋人みたいだね。みたいなこと? え?俺がフランツ君に言ってもそういう意味になるの?フランツ君は子どもなのに? え?もしかしてこの世界って。 「ちょっと待って、もしかしてこの世界って子どもでも結婚できるの?」 そうだった。ここは学校に行けずに働く子どもがいる世界だった。それに元の世界にも子どもが結婚できる国があったり、日本もかつてはそうだったとか、そういうことを聞いたことがあるような気がする。 それで児童売買の温床になったりとか、不本意な結婚を強いられたりとか。 「え?できるよ。できるけど、無理やりはできないですよ。結婚するときは神様のところに行って誓うけれども、お互い心から同意してないと結婚が許してもらえないから」 なんて? 「神様が許す?」 「うん。礼拝堂で誓うんだけども、結婚を許されると持っていった花が咲くからそれを持って帰ってみんなでお祝いするけど、許されなかったら花が咲かないから、そうしたら結婚はできなくて結婚の約束は破棄になる」 え?神様ってそういう現実的な実行力のあるタイプの存在なの?ここでは。 フランツ君にしつこく聞いてみたら、やっぱりその通りだった。ここの神様は元いた世界の神様と違って、ふんわりとじゃない強い意志があって、言葉は交わせないけれども、いろんなやりとりができるらしい。 人々が悪事を働くと災害を起こして反省を促したり、異世界人が来て幸せに暮らしていると農作物を豊作にしてくれたり、あとは裁判も礼拝堂で行うらしい。そうすれば誰が嘘をついているかすぐに分かるんだって。 なにそれ、すっごい便利。 あ、じゃあ愛に違いがないっていうのは、神様の意思なのか。 「あ、じゃあ同性同士でも両想いなら礼拝堂で愛を誓うと花が咲くってこと?」 「それはそうですよ。あ、そうか、ツァヴァトゥさんに聞きました。異世界では同性同士は結婚できないんですよね」 うん。できる国もあるけどね。日本はできなかった。 「あ、じゃあ子どもも結婚できないんですね」 うん。 「でも、ここでも子どもはあんまり結婚できませんよ。本人同士が本気でも、神様に子どもの本気だとみなされると反対されるんで。もちろん何年かたってもう一度礼拝堂に行って結婚する人もいますけれど、だいたい大人になるころには別れて違う人と付き合っている人のほうが多いです」 神様の丁寧な仕事ぶりに驚いた。 大人の本気と子どもの本気とを見分けるなんてすごすぎる。 「俺はソーさんが好きだから結婚できるなら結婚したいけど、でもソーさんはツァヴァトゥさんが好きなんでしょ?」 フランツ君に言われて驚いた。 え?フランツ君?君、俺のことそんなふうに思っていたの?あと、俺、そんなに分かりやすかった? 「よくわかんないですけど、でもたぶん俺のこの気持ちは、神様的には子どもの本気ってやつだと思います。ソーさんが優しくて綺麗だから好きなだけだから、たぶん子どものやつです」 どんどん気になることを言われて脳みそが混乱したけど、絶対確認しておきたい事柄が一つある。 「ね、ねえ、この世界的に言って、俺って綺麗なの?綺麗な部類?もてそう?」 思わず勢い込んで聞いてしまったら、フランツ君に笑われた。 「綺麗ですよ。艷やかな黒髪と神秘的な黒い瞳がとても綺麗です。肌も陶器のように滑らかで顔立ちがすっきりしていていつまでも見ていられる」 フランツ君に言われて、俺は顔が熱くなった。ちょ、ちょっとフランツ君っ。そんな、まだ子どもなのに、そんなスパダリみたいなこと言わないでっ。 「ほんと可愛いなあ。綺麗で可愛くて優しくて、あーあー、ツァヴァトゥさんが羨ましい」 切なそうなフランツ君には悪いけれども、俺はめちゃくちゃ自信が持てた。 俺はこの世界では綺麗で可愛い!! 同性同士で恋人にもなれるし結婚もできる! 異世界って最高っ! 我ながら現金だと思うけれども、俺は完全に浮かれていた。

ともだちにシェアしよう!