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第17話 ロマンチックどころの騒ぎじゃなくて
あんないやらしいことをしておいて、今更ロマンチックな場所で告白も何もないでしょ!?
って俺は俺にツッコんでいたけれども、タバトさんはそんなこと全然なんとも思っていないようだった。
この国で一番ロマンチックなところは王立植物園の薔薇園らしくて、俺はそこに連れて行ってもらった。
確かにめちゃくちゃロマンチックだった。
本物しかない世界のロマンチックはすごい。
王立植物園は元々は王宮の庭だったらしくて、つまりは王宮の一角にある。
この王都で一番美しいと言われている白亜の王宮が遠景になっていて、そして自分の周りには溢れんばかりの薔薇が咲いている。
本物の王様が住んでいる本物の王宮は、ガイドブックで見たヨーロッパの宮殿みたいだったけれども、画像でも動画でもないから、生の迫力がすごかった。
それに薔薇もすごくて、花びら一枚一枚が柔らかくてつややかで、それが集まっているからとても繊細でとても豪華で、そしてとてもいい香りがした。
ロマンチックな場所で言ったら、現代日本はこの中世ヨーロッパ風世界に完敗だと思う。
電気がないから電柱も電線もないしね!
デリカシーのないやりとりのあとのやり直しだってことや、告白の前に二人でエロいことをしちゃったこととか、そんなこと全部吹き飛ぶロマンチックさだった。
そして、タバトさんも中身のデリカシーのなさを補って余りあるほど素敵だった。
王都警備の仕事は、時々王族の行事の警備として働くことがあるらしくて、式典用の華麗な制服があるのだそうだけれども、なんとタバトさんはその制服を着てきてくれたんだ。
いつもの紺色の制服だって、もうすっごく素敵なのに、式典用の制服は全身が純白で金糸の美しい刺繍が襟や袖口に施されている、王子様みたいなデザインで、それを長身で金髪で美形西洋人のタバトさんが着ていると、映画の中から出てきたハリウッドスターかよっ!ってツッコミたくなるほどの、かっこよさだった。
しかも異世界人取扱説明書にはロマンチックの章があるのかないのか、俺のための素敵な衣装も用意してくれていて、それは光沢のあるグレーの生地でできたおしゃれなタキシードで、スーツならともかくタキシードなんて着たこともなかったけれども、着てみたら結構似合っている気がしてすごく浮かれてしまった。
タバトさんと並んで歩くと、本当に映画の主人公になったような気持ちになった。
さらに、乗ってきた馬は白馬だった。
ここまでされたら、これはやり直しの告白だし、とか、告白の前にいろいろね、やってしまってね。みたいなのとか、もう全部吹き飛んだ。
タバトさんはすっごいスマートに俺に肘を差し出してくれて、俺は腕を絡めて、それで王立植物園の花々を見て回って、最後に薔薇園に連れてきてもらった。俺は花を見たり、王宮を見たり、タバトさんの顔を見上げたりして、くらくらしながら歩いた。
その薔薇園の中央には、白い屋根の可愛いガゼボがあった。
光の差し込んでいる美しいそのガゼボの中で、タバトさんは跪いて俺に右手を差し出してくれた。
「ソウ、愛してます。俺の恋人になってください。ソウの何もかもが好きだ」
水色の瞳が俺を見つめている。
「俺も愛してる」
俺が右手の上に自分の手を乗せると、タバトさんが恭しく俺の手の甲にキスをしてくれた。
ああっ。
俺はあまりの濃厚なロマンチックさに、何もかもが蕩けそうな気持ちになった。
タバトさんは立ち上がると俺のことを抱きしめて、そっとキスをしてくれた。
俺の妄想通りの、妄想の百倍ロマンチックな告白だった。
俺はタバトさんの腕の中でうっとりしていた。
と、薔薇の香りが強くなった。
「ソウ、見て」
タバトさんに呼ばれて目を開けると、周囲の薔薇が、さっきまで蕾だったものまで全部咲いていた。
もともと美しく咲き誇っていた薔薇の花が、すべて満開になり、風が吹いてもいないのに、花びらが空中に舞い始めた。
「何?これ?」
「あ、ああ、すごいな。神様から祝福されたんだ」
タバトさんも呆然としたように辺りを見回している。
神様からの祝福?フランツ君が言っていた、あの結婚の誓いを教会でするときの?
え?でも、ここは教会じゃないし、俺たちは結婚の誓いをしたわけでもないんだけど。
「神様から、結婚の許可がおりたんだ」
ちょ、ちょっと早くない?気が早すぎるよ。神様っ。もちろん恋人同士になって、いずれ結婚したいと思っていたけれども、でも教会に行って誓ったわけでもないのに、神様側がやってきて、先に祝福しちゃうとか許可出しちゃうとか、そんなのあるの?
「ソウは神様に愛されているんだな」
タバトさんはもう納得しているみたいだった。確かに俺は究極の旅人で、ここの神様は愛と旅人の神様だから、究極の旅人である俺の愛を、特別祝福してくれたのかもしれないけれども。
タバトさんが俺を抱き上げてくれて、お姫様抱っこで薔薇園を抜けると、植物園の他の花々も季節外れのものまで全て満開になっていた。
それどころかタバトさんに抱っこされたまま王立植物園を出て、馬に乗せてもらって家まで帰った道中も至る所に花が咲き乱れていた。
タバトさんが遠回りして確認してくれたけども、王都中の花が咲いたみたいだった。
俺ははじめ呆然としていたけれども、だんだん嬉しくて楽しくて仕方なくなってきた。
だって神様が俺とタバトさんの恋を祝福するために街中の花を咲かせているんだよ。
神様の超自然的な力を目の当たりにしたのも嬉しかった。ファンタジーの醍醐味ここにあり!って感じで楽しかったし、タバトさんの気持ちも、俺の気持ちもどっちも本物だって神様に太鼓判を押してもらえたから、もう俺は何一つ心配する必要がない。
異世界は話が早いっ。
俺は嬉しくて笑いが止まらなくなってしまった。
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