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第20話 この世界の技術

リヒト君の家にいこうとしたけれども、フランツ君が呼んできてくれた。 確かにリヒト君はこの世界の人で、家族とか親戚とか友達の友達とかと一緒にみんなで住んでいるから、内緒話はしにくい。 しかも内緒話でもなんでもなくなって、みんなで和気あいあいとセックスについて喋ったりする可能性もあるから、俺の家で二人きりで話したほうがいい。 フランツ君には、席を外してもらった。 「フランツ君は子どもだから、セックスの話を聞かせたくない」 ってものすごくはっきり言ったのに全然通じなくて、 「俺の元いた国では子どもはセックスできない。子どもとセックスすることは犯罪だし、性的なものを見せたりするのは虐待にあたる」 って説明したら、フランツ君がめちゃくちゃ驚いていたけど、俺も驚いてるフランツ君に驚いているからね! ということで、この国には存在しない法律の話をして、フランツ君には外に行ってもらって、それでようやくリヒト君と二人になれたんだ。 「ソーさん、俺に聞きたいことがあるってなんですか?」 うん。えーとね、えーと。 リヒト君は話しやすい。この世界の人のなかではかなり冷静なほうで、驚いたり笑ったりのリアクションが小さいから。 「あのね、リヒト君の恋人は男性だって聞いたんだけど」 「ええ。そうです」 俺は同性と付き合っている生身の人間を初めて見た。というかリヒト君は前から知り合いだけど。 すごく当たり前に肯定されて、ちょっとだけ勇気がでた。 「あのね、俺、タバトさんとそういうことがしたくて、でも仕方がわからないんだ」 「そういうこと?」 「あのね、その、セックスの仕方なんだけど」 はっきり言わないと通じなかった。 「セックス?ソーさんのいた世界とやり方が違うんですか?」 いや、それもわからないんだ。 「ううん。あの俺、なんの経験も無くて」 「ソーさんが?」 うん。 リヒト君が難しい顔になった。 「セックスが嫌なら、無理にしなくてもいいと思いますよ。タバトさんは無理強いする人ではないですし」 ああっ。嫌で避けてたと思われてるっ。 「う、ううん。全然嫌じゃないんだ。嫌じゃないけどね、ただモテなくて恋人がいなかっただけなんだ」 「ソーさんが!?モテない?」 リヒト君が驚いてまじまじ見てくる。 「へえええ。異世界ってすごいですね。ソーさんみたいな綺麗な人がモテないなんて」 え?そう?そうかな。俺、綺麗かな。 俺はほんとに現金だと思う。綺麗だって言われるとすぐに浮かれてしまう。 「ええと、じゃあソーさんはタバトさんと肛門性交したいんですね。それで俺にやり方を聞きたいと」 わあっ。そんな直接的な言葉言わないでっ。 「あ、あの、その、もっと婉曲な言葉を使って?」 「婉曲?」 「うん。エッチなこととか、そういう」 「エッチ?」 俺はめちゃくちゃ恥ずかしかったけれども、単語の言い換えをリヒト君に頼んだ。 セックスはエッチ、 性器はそれ、 受け入れるほうはそこ、 あとはできるだけ直接的な単語を使わないで。 リヒト君はものすごく難しそうな顔をした。 「ええと、ソーさんはタバトさんとエッチがしたいけれども、エッチの経験と知識がなくて、それで経験者の俺に聞きに来た。ええとそこにそれを入れるための準備物や準備の内容を知り、安全にそこにそれを入れて、安全で楽しいエッチをしたいということですか?」 俺は頷いた。 「ええと?これで通じてます?」 うん!通じてる。 「ええと、じゃあ、ええと説明しますね、ええとそこ、それ、ええと?」 リヒト君はしばらくぶつぶつ言っていたが、 「ええと、それをそこに入れるための準備ですけど」 リヒト君は頭が混乱しないように指で「そこ」と「それ」の形を作って説明を始めてしまった。それはそれでものすごく恥ずかしかったんだけども、教えを乞う側なのにもうだいぶわがままを言っている立場なので、それについては見ないようにした。 「ええと、それをそこに入れるには前準備が必要です。まずそこの中をきれいにするんですけど、専用の道具と中の洗浄剤が売ってます」 「売ってる!?」 思いもよらないことを言われて驚いた。 「ええ。ええと、そこに洗浄液を入れるための器具と中をきれいにする洗浄液です。その器具で数度洗浄液を入れて出すと、きれいになります。殺菌作用もありますし、ちょっと香りもついてます。それに筋肉をほぐす作用があるので、そこにそれを入れるときに怪我をしにくくなります」 なんだって?そんな便利な道具があるの?それ専用の? 「ソーさんのところにはなかったんですか?」 え?知らない。知らないけど、たぶんそんなものはなかったと思う。それともどこか特別なお店にいけばあったのかな? 「それはどこに売ってるの?」 「薬屋か、雑貨屋に。だいたいどこにでも売ってますよ」 どこにでも!? どこにでも!?!? 「ソーさんのいた世界って同性カップルいなかったんですか?」 「いたと思うけど、それは内緒というか、秘密の関係というか」 「秘密?へええ。あ、じゃあそれで技術が発達しなかったんじゃないですか?だってソーさんのところのほうがはるかに文明進んでいるみたいですよね。作って作れないようなもんじゃないと思いますよ。だってそこに洗浄液を入れるだけですから」 俺は呆然としてしまった。 確かに元いた世界のほうがいろんな面で進んでいる。男女のセックスで言えば、コンドームや避妊具はこちらの世界よりはるかに進んでいる この世界にはまだゴムが発明されていないから、コンドームは動物の腸でできているものしかなくて、高価だからあまり庶民には広まっていないらしいし。 でも、この世界では同性愛も普通のことだから、その行為に必要な道具も普通に発明されてて、普通に売っている。 そうか。必要は発明の何とかって言うから。 俺はめちゃくちゃ感心した。 しかも洗浄液だけじゃなくて、男性同士のエッチ専用の軟膏もあると教えてもらえた。 それも筋肉の緊張をほぐす成分があり、また粘膜が傷つかない様な保護剤が配合されているそうだ。 「その軟膏を使ってそこの中をほぐすんですけど、それはタバトさんにやってもらったほうがいいですよ、そのほうがエッチが盛り上がりますから」 リヒト君は説明を終えると俺を薬局に連れて行ってくれた。 近所にある普通の薬局で、喉が痛い時に飲む煎じ薬や、包帯なんかと一緒に当たり前に売っていた。しかも安かった。 リヒト君が当たり前の顔をして買うのを見て、俺も当たり前の顔をして買った。 お店の人は俺が消毒薬を買うときと同じ顔で当たり前に売ってくれた。 異世界ってすごい!! 俺はリヒト君とこの国の神様にもう一度感謝した。

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