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第26話 記念すべき日
目が覚めたとき、俺はタバトさんに抱き込まれていた。
タバトさんは、寝息を立てながらまだぐっすり眠っていて、タバトさんが眠っているところは初めて見たから、なんかすごく新鮮だった。
目を閉じているタバトさんはちょっと可愛い。金色のまつ毛が扇を広げたような形で並んでいて、形のいい唇が少し開いている。
昨夜、あんなに激しかったのに、こんなに静かで穏やかなのがすごく不思議だった。
俺はタバトさんの胸に顔を擦り付けた。
昨日はすごかった。
タバトさんは俺に「無理はさせないから」って言ってくれて、無理はさせられなかったと思う。痛くもなかったし苦しくもなかったら。気持ちよすぎてむしろ苦しかったけれどもそれはまた別だと思う。
タバトさんはすごく丁寧で優しくて、めちゃくちゃ時間をかけて俺の27年間なんにもしたことがなかった化石みたいな体をゆっくり解きほぐして生身の体に戻してくれた。
それに俺の様子を見ながら慎重に入れてくれて、あまりの衝撃に、息が詰まって呼吸ができなくなった時には、優しく首と胸元を撫でてくれて、呼吸を整えさせてくれた。
でも俺がその行為に気持ちよさを感じ始めたら、タガが外れたように激しくなってしまった。額から汗を垂らして、貪るように奥を攻めてきた。
あれ、すごかった。
思い出すと体の奥のまだじんじんとしているところが、ぎゅっと締まって生々しい感触が蘇ってくる。
奥を穿たれるたびに、おうっ、とか、んあっ、とか、変な声が出たけど、タバトさんは興奮する一方で、そのうち俺も声がどうとか考える余裕はどこにもなくなってしまった。
それにタバトさんも結構声を出して喘いだり呻いたりしていた。それで安心もしたし、興奮もした。
タバトさんも気持ちよくなっているんだって思ったら、嬉しくて安心で、もう何をされてもいいくらいの気持ちになった。
でも、すごかった。
何をされてもいいんだから、何をされてもいいんだけど、すごかった。
タバトさんは今までずっと落ち着いた優しくて理性的な大人だった。(実はまだ25 歳だって最近知って、年下!?ってビックリして、ちょっと戸惑ったけれども、でも頼りがいや包容力が凄まじいから、この際年下だと言うことは忘れることにした)
いつでも俺のことを最優先にしてくれる紳士的なタバトさんが、あんなふうになるなんて、すごく驚いたし、すごくうれしかった。
タバトさんの理性がどっか行って、俺の体に夢中になっているのが、泣きそうなくらい嬉しくて、嬉しいって気持ちって気持ちいいに繋がりやすいのかな。
俺もますます気持ちよくなっちゃって、ほんとに二人でドロドロに溶け合うのかと思った。
俺はタバトさんの汗の匂いと湿度を堪能しながら、昨夜のことを反芻し続けた。
あまりに緊張して、27 年間新品のままほったらかした自分の体を持て余して、若い頃にワンナイトとかしておけばよかったなんて思ったけど、あれは間違ってた。絶対。お詫びして訂正する。
あんな凄まじいこと、遊びの相手としたりしたら、絶対発狂してたと思う。
というか、俺、絶対めちゃくちゃ怖がりだ。タバトさん以外の誰ともこんなことできなかったと思う。
世界でタバトさんだけ。元の世界でもこの世界でも、こんなことできるのはタバトさんとだけだ。
そう思うと、俺、もしかしたら、タバトさんと出会うために、異世界転移してきたのかもしれない。なんて、めちゃくちゃロマンチックなことを考えてしまって、一人で照れてしまった。
そんなことをつれづれに考えていたら、タバトさんの金色のまつ毛が動いて、水色の瞳が見えた。
「おはよう。ソウ」
タバトさんはちょっと寝ぼけているみたいな声だった。
いつも背筋を伸ばしてキビキビしているから、こんなぼんやりしたところは見たことがなくて、すごく特別なものを見た気がした。
「おはよう、タバトさん」
タバトさんは俺を腕のなかに抱き込んで、髪のなかに顔をうずめた。そのままスンスンと匂いを嗅がれる。
「んんんん。ソウ、昨日は大丈夫だった?辛くなかった?」
甘ったるい喋り方。まだちょっと眠そうな、でも俺のことをいたわる優しい声。
「うん。大丈夫」
「そっか」
タバトさんはしばらく俺の背中と腰を撫で続けてくれた。
タバトさんは今日もお仕事だった。
始めたのが夕方だったから、二人で起きた時はまだ早朝で、タバトさんは起き抜けでもうお風呂の準備をしてくれて、シーツも替えてくれて簡単な朝ごはんも用意してくれた。
自分はざばざばとお湯をかけて簡単に汗やいろんなものを洗い流すと、俺をゆっくりお風呂に入れてくれて、その後はてきぱきと出勤の準備を始めた。
世の中の人たちはすごいな。
俺はタバトさんを見ながら感心した。
こんなすごいことをした次の日も当たり前の顔をして仕事をしたりできるんだ。
当たり前と言えば当たり前か。
前日にエッチしたから休みます。なんて言っている人、元の世界でもこの世界でも見たことない。
でも、俺は無理。
何度もして慣れて来たら出来るかもしれないけれども、今日は絶対無理。
だってまだ体のなかにタバトさんが入っているみたいな感覚が残っているし、頭は快楽にさらされすぎてぼんやりしている。腰は重だるいし、喉は枯れているし。
だから広場に行って歌ってみたすることもできないし、こんな昨日エッチなことしましたよ。って顔で色んな人に会うことはできないと思う。
正直フランツ君に会うのも恥ずかしいくらいだけど、フランツ君に頼まなくては俺はほんとになんにもできないから、フランツ君の前ではできるだけ普通の顔をしていようと決意する。
タバトさんが仕事に行くのを見送って、これって新婚さんみたいじゃない!?なんてちょっと浮かれて、しばらくするとフランツ君が来る時間になった。
フランツくんは学校に行く前に俺の家に来てくれて、朝の家事を済ませてくれる。
それで学校が終わるともう一度来てくれて、晩御飯を作ったり、お風呂の準備をしたりしてくれている。
いつもの時間にフランツ君が来たけれども、フランツ君はなぜか手に花束を持ってきていた。
なにか笑いを噛み殺しているような顔をしている。
「おはよう、フランツ君。その花どうしたの?」
フランツ君は花束を俺に手渡した。
「ソーさんの繊細さを神様はあんまりわかってないみたいで」
神様?愛と旅人を守護してくれる、俺にとってめちゃくちゃ都合のいいこの国の神様が?
「あの、ソーさんとタバトさんの、はじめての行為を祝福して、また街中が花だらけになってます」
嘘でしょ。
え、てことは、街中の人に、昨夜俺とタバトさんが結ばれましたよーーー!って神様が大々的に触れ回ったってこと!?
俺は、両手で顔を覆った。
神様っ!神様にもデリカシー!!
「フランツ君、あのさ、神様にも取説読むように伝えてくれる?」
「それは無理です」
フランツ君がちゃんと答えてくれた。
うん。そうだよね。そうだとは思っていた。
俺はその場でしゃがみこんで、衝撃が収まって、町中の人たちが俺とタバトさんが初めてエッチしたんだなーって思いながら花が咲くのを眺めているのを想像し終えて、一生懸命開き直ろうとした。
フランツ君は、しゃがみこんで呻いている俺を見ないふりをしながら家事を進めてくれて、俺のお世話係がフランツ君で本当に良かったなんてことを、ずっと考えていた。
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