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第15話 教会へ

 宿を出た僕とアレクは、緊張した面持ちで教会を目指して歩いていった。アレクは軽装ではあるが帯剣しており、僕が特徴的な大きな帽子を被っているのもあって、町の人々は一目で僕たちが何者なのか理解して囁きあう。 「ああ、あの二人が――」 「勇者様を死なせたパーティーメンバーだろう?」 「魔獣すら倒せない役立たずがいい気なもんだな」  遠巻きに囁かれる陰口にどう反応するのが正解か分からず、関わりを避けるよう目を伏せる。すると、隣のアレクは僕の肩を軽く抱き寄せてきた。 「大丈夫、気を強く持つんだ」  悪し様に言われていることに対して、僕がショックを受けたのだと思ったのだろう。そうやって勇気づけてくる彼の実直さが愛しくて、僕は表情を変えることはしないまま、ほんの少しの好意を込めた声色で返す。 「はい、アレクさま」  淡々とした返事しかされなかったことにアレクは少し動揺したようだったが、すぐにそういう段取りだったと思い出したのか、軽くこちらに頷き返して前へと視線を戻した。  僕が自由意志を獲得していると悟られることへの危険性は、出発前に彼にも共有してある。いざという時、意思の疎通が難しくなるのは危ういが、少なくともおいそれと部外者に開示すべき情報ではないのは確かだ。  外を歩くときは、従順な人形のような顔で歩く。それが僕が彼に伝えた作戦だった。  目的地である教会は、町の中心部に存在している。巨大な尖塔が三本聳え立ち、神に仕える者たちが暮らしている聖なる場所。一般的な感性で言えば美しいと感じるその場所に近付くごとに、僕は自分の体が重くなっていくのを感じていた。  教会のような聖なる場所は、基本的に魔族にとって天敵だ。敷地に入るだけでうまく力をふるえなくなるし、僕のような中途半端で弱い魔族は長居するのも難しい。  だが腐敗した権力が支配する教会に、アレクを一人で行かせるという判断はどうしてもできなかった。彼は実直であるがゆえに、騙されやすい。現に、僕に様々な形で騙されているのだから間違いない。 「……ヒーラー、気分が悪いのか?」  教会の前で小声で尋ねてきた彼に、小さく頷く。 「でも……行き、ましょう」  すぐ近くにいる門番には聞こえないようかすかな声で、だけど最大限力強く聞こえるように僕は囁く。同時に強い眼差しでアレクを見上げると、アレクはそんな僕に頷いて返してきた。  ここまで来たのだ。今更戻れない。彼にもそれは分かっているし、僕の覚悟を汲んでくれたのだろう。 「手短に済ませよう。……失礼、王都に手紙を出したいのだが、どこに行けばいいかな?」  教会の入口を守る門番にアレクは声をかけ、中に入ることを許される。やけにねっとりとした門番からの視線から逃げるように、僕も彼に続いて教会の中へと入った。  建物に入ってすぐに存在する礼拝堂では、この町の教会を治める司祭が待っていた。 「おお、これはこれはアレク殿。勇者様のことは本当にお気の毒でした」 「こちらこそ、遺体の安置に協力してもらい感謝する。今日は王都に、その一件についての手紙を出しに来たのだが」 「なるほど。ですが実はこれから、礼拝の時間なのです。魔法陣を動かすのは礼拝からしばらく経ってからという規則がありまして……。そうだ。ついでと言ってはなんですが、お二人も祈りを捧げていかれてはいかがでしょう? 手紙は一旦、こちらで預かりますから」  初老の司祭は流れるような勢いでそう言い、アレクに手紙を渡すように要求した。その目に宿る悪意に気付き、僕は慌てて話に割って入ろうとする。  しかしその直前、司祭が偶然口にした『聖句』が、僕の体を強い衝撃をもって打ち据えた。

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