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第17話 無抵抗の屈辱*

 明確な悪意と揶揄いを込めて問いかけてきたのは、先程会った門番の男だった。  勇者の素行の悪さは、町中の誰もが知っている。その噂の一部として、僕が勇者パーティーで性処理道具にされていたことも知ったのだろう。  僕は何の表情も浮かべず、ベッドに腰掛けたまま、ただ男の顔を見上げた。その反応をどう受け取ったのか、門番の男はズカズカと僕の前へとやってくると、僕の体をベッドへと強引に押し倒した。 「なあ、勇者が死んで体を持て余してるんだろ? 守るべき町の民である俺にも、その体、味わわせてくれよ」  やっぱり、そういう用件か。今までの旅でもこうして部外者に体を求められることはあった。別に減るものでもないし、抵抗する権利も己にはなかったから、その度にそういう奴らの欲望は受け入れてきた。  だから、今回もそうするだけだ。感情的な己には蓋をして、自分のなすべきことをすればいい。ここでトラブルを起こさないことが、結果としてはアレクのためになるのだから。 「くっくっく。抵抗しねぇんだな。やっぱりヒトじゃない淫乱種族だからかぁ?」 「え……」  わずかに動揺の声が唇から漏れる。男は僕の頭部に手を伸ばすと、被っていた大きな帽子を強引に取り払った。  その下に隠されていた魔族の証である長い耳と角があらわとなり、僕の顔色はさっと青くなる。 「なんで知ってるのかって顔だなぁ? この町に以前立ち寄った時、泥酔した勇者が自慢してたんだよ。『うちのパーティーでは淫乱なバケモノを飼ってる』ってなぁ?」  勇者の言動の迂闊さが今になって僕の首を絞めてくるだなんて。焦りから鼓動が早くなり、動揺で視線が揺れる。 「勇者パーティーに魔族が混じってるだなんて知ったら、この教会の奴らはどう思うかなぁ? 当然、穢らわしいお前は縛り首だし、それを隠してたあの剣士も同罪だ。仲良く並んで、広場で死体を晒すことになるかもしれねぇなぁ?」 「っ……!」  目前に迫る危機を自覚し、僕の体はカタカタと細かく震え出す。男はにやりと笑うと、僕の服をゆっくりと剥ぎ取り始めた。 「分かったら抵抗するんじゃねぇぞ? 助けも求めるな。もしこのことがバレても、お前が俺を誘惑したって証言するんだ。いいな?」  そんなふうに脅さなくても抵抗なんてしないのに。本当は不要である脅しの言葉に青ざめながら、僕は小さく首を縦に振る。  男は下卑た表情で僕の服を全て奪うと、まだ性交でついた傷が薄く残る肢体を見下ろして、感心したように息を吐いた。 「へえ、話に聞いてた通り、男を悦ばせるためだけの体じゃねぇか。一体この体で、どれだけの男のもんを咥え込んできたんだぁ?」 「……」 「黙ってんじゃねぇぞ、性奴隷が!」 「いぎっ……!」  乳首を強くつねられ、思わず苦痛の声が歯の隙間から漏れる。 「ほら、ちゃんと答えるんだよ。テメェはどれだけの男を誘惑して、精液袋にされてきたんだぁ?」 「か、数え、きれま、せん……僕は……精液を、搾り取るため、だけに……生まれた、生き物、です……」  勇者やその仲間に陵辱されていた記憶が蘇り、反射的にあの頃口にさせられていた淫猥な言葉が喉から発せられる。  何も感じないはずだった。いつものことのはずだった。体を貪られるのは自分が生き残るのに必要なことで、そこには何の感情も抱くことはないはずだった。  だけど首輪の支配から半ば逃れ、アレクと体を重ねた今、僕は自分の言動に酷く羞恥と屈辱を覚えた。事実を口にしているだけなのにそれが悔しくて、じわりと目に涙の膜が張る。

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