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第21話 聖獣の吟味*
首輪を通じた命令を受けた僕が連れていかれたのは、四方を鉄格子で天井まで囲った大きな檻の中だった。
檻の周囲には信徒の格好をした男たちが並んで立ち、今から起きることを心待ちにしている。彼らの視線に混じる下卑た色に気づき、これから行われることがろくでもないものなのだと否応にも察してしまった。
「司祭様、彼らは一体……」
背後でアレクが不審そうに尋ねるが、今更儀式は止まらない。檻の中央に僕は座らされ、部屋の奥から信徒たちが一頭の獣を引いてきた。
白銀の毛並みに巨大な体躯。知らぬものが見れば聖なる獣と見間違えても仕方のない整った見た目の狼型の獣。
だが今まで数多くの戦闘経験を積んできた僕とアレクには、その獣の正体が一目で分かった。
「ダイアウルフじゃないか! そいつは聖獣じゃない! 魔獣だ!」
「口を慎みなさい。今、あなた方の命は我々が握っているのですよ?」
思わず声を荒げたアレクの言を、司祭はたった一言で切り捨てる。今、アレクは剣を奪われており、僕は魔法を封じられた上に弱っている。対して、信徒たちの中には武装している者もおり、命を握られているというのは比喩ではない純然たる事実だった。
それでも何か抵抗の手はないかと身構えるアレクに、司祭は笑みを向ける。
「ご安心を。あの聖獣様にも『首輪』がついているのです。この意味は、あなたにもお分かりでしょう?」
「……!」
司祭の言葉通り、獣の首には大きな首輪が嵌っていた。僕の首にあるものと同じ文様がそこには刻まれており、この獣も己と同じようにヒトの支配下にあるのだと理解する。
「聖獣様。その者の罪をお試しください」
司祭は手をかかげ、その指に嵌められた指輪が怪しい光を放つ。獣はぴくりと体を震わせると、床に座る僕に巨大なその鼻先を近づけてきた。
何かを確認するように僕の匂いを嗅ぐ獣の姿を、僕はぼんやりと眺めていた。
今から僕は、周りにいる男たちの見せ物になる。抵抗できないままなぶり殺しにされるのか、それともわざと悲鳴を上げさせて命乞いする姿を楽しむのか。
内心に浮かぶもう一つの可能性のことは考えたくなかった。もしそうだとしても、こんな巨大な獣に組み敷かれたら命に関わるのだから、結局は同じことだ。
そうやって他人事のような冷めた思考を必死で続けないと、体の震えを抑えられそうになかった。
獣は僕の匂いを確かめ終わると、聖別された衣へと噛みつき、一息にそれを引きちぎった。元々破られることを前提として作られたらしいその服は、一瞬でただの布切れと化し、仰向けに倒れ込んだ僕の肢体は獣の目の前へと晒される。
「何をっ……!」
「お静かに。吟味されているだけですよ」
アレクと司祭が何か言い争っているようだったが、僕の耳にはもうほとんど届いていなかった。
欲望でギラつく両目と、牙の間から垂れるどろりとした涎。
獲物として見ているのか、それとも精を注ぎ込むメスとして見ているのか。どちらにせよ近づいてくる己の命の最後に、呼吸が浅くなり、喉の奥がひゅうひゅうと音を立てる。
獣はまず僕の味を確かめるように、全身をくまなく舐め回してきた。濃い魔力を有した唾液が全身に塗り込められ、頭は確かに恐怖を感じているのに、体は熱く火照っていく。
「あ……ひ、うぁ、ッ……」
かすかに艶かしい声が漏れると、周囲の男たちから失笑が漏れた。
「なんと淫蕩な」
「聖獣様に浄化してもらわねば」
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