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第25話 事後処理

 数日後。  町での所用を終えて宿に戻ると、店主が俺を出迎えた。 「おかえりなさいませ。教会の様子はどうでした?」 「まだ正確な犠牲者を把握する段階だな。建物や設備の復旧にはほど遠い」  事件の後、俺は当事者として後処理に追われる日々を送っていた。『聖獣』を使って教会が私腹を肥やしていたという事実に、町の民の半数は驚愕し、もう半数は納得した。  それだけ教会の権力が腐敗していたということだろうが、俺の証言を信じてもらえたという一点においてはその評判は好都合なものだったと言える。  隣町から教会の人員が派遣され、徹底的な調査が行われることになっているが、今のところ、あの虐殺騒ぎの原因は不明だ。分かっているのは、どうやら凶行に走ったのが全員男であり、森から殺到した複数の魔獣たちの性別も揃ってオスだったということだけ。  地下室に詰めかけたオスの群れ。その中心で行われていた交尾の真似事。  地下で犯されていた彼の姿を思い出し、彼が何かしたのではと疑いそうになる。状況としては一番ありえる可能性だ。だが、心優しい彼がそんなことをするなんて―― 「店主、ヒーラーの様子は……」 「残念ながら、変わりありませんね。良くも悪くもなっていません」 「そうか……」  あれ以降、ヒーラーは昏睡状態にあった。魔族の特徴がある頭部を布で隠し、俺が留守にしている間の介抱を店主に任せているが、一向に目を覚ます気配はない。 「あれから数日経つ……。このまま水も飲んでくれないと、本当に彼は……」  暗い想像をして俯いてしまう。手遅れになった頃に、ようやく助け出すことができた彼。それなのに、『助けに来てくれた』と幸せそうに笑った彼。そんな存在の命が消えてしまいそうになるという事実に、後悔と自責でいっそ死んでしまいたくなる。 「……剣士の旦那、少し話があります」 「え?」 「私の部屋においでください。詳しくはそこで」  真剣な表情で話を切り出した店主に、流されるような形で俺は頷く。そのまま彼の先導に従い、俺は彼の私室へと通された。  店主はしっかりとドアを閉めると、小さく呪文を唱えて、部屋に防壁を張る。 「店主、あなたは魔法を……?」 「昔取った杵柄ですよ。身を守る程度のものしか使えません」  そう答えながら店主は椅子を引き、座るように勧めてきた。警戒する心はあったが、数日間ヒーラーを任せてきた相手を今更疑うのもおかしな話だと思い直し、素直にそれに従って腰を下ろす。 「盗み聞き防止のまじないをかけました。その上でお話しするのですが……、教会を襲ったあの騒ぎの原因は『夜魔の呼び声』です」 「『夜魔の呼び声』……?」  聞いたことのない単語を出され、続いてヒーラーが夜魔であることを知られていたと悟り、驚愕と困惑の目を彼に向ける。店主は苦笑した。 「ヒーラーさんが魔族だということは勘で分かっていました。だから申し訳ないとは思ったのですが……この軟膏で、彼が何の魔族なのか確かめさせてもらったんです」  彼が机の上に置いたのは、ヒーラーが彼から買い取ったあの軟膏と同じものだった。 「軟膏……、まさか毒を!?」 「いいえ、ただの媚薬ですよ。夜魔には通常よりもよく効いてしまうだけのね。後遺症の心配もありませんし、少し騙して酒を飲ませて酩酊させたようなもの――いえ、こう言うと十分に外道な行いですね。申し訳ありませんでした」  深く頭を下げた店主からは、こちらを騙そうという気は感じられなかった。むしろそれは、その秘密を明かしてでも伝えたいことがあるという誠実な姿のように見えて、俺は居住まいを正して店主に向き直る。 「それは今は良いとしましょう。それで……『夜魔の呼び声』とは何なのですか?」

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