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第31話 本当の彼*

 思わず口にした謝罪は、何に対するものなのか自分でも分からなかった。彼を軽んじていたことか、理想を押しつけていたことか、その理想に応えようと無理をさせていたことか、それに気づけなかったことか。  全てに謝罪したい。だけど夢だからと告白してくれた真実に対して、改めて謝罪などされたら、彼は傷ついてしまうかもしれない。  淫蕩な彼でもいいのだと、今の俺は断言できない。それも含めて彼なのだと思うのが一番なのだろうが、俺自身、突然知ってしまった真実に困惑していて、自分の気持ちに結論を出せていない。  だから俺は全て夢のせいにして、酷い選択を取ることにした。  腰を大きく引き、行き止まりめがけて力強く打ち付ける。彼の体はがくんと揺れて、持ち上げられた空気が喉を通って、濁った声となって発せられる。 「お”っ……ゴッ……♡」 「全部夢なんだ。我慢しなくていい。……お前のはしたないところ、全部俺に見せてくれ」  彼にとってきっと都合が良いであろう言葉を耳元で囁く。快楽で混濁する彼の思考にそれはゆっくりと浸透し、大輪の花が咲いたかのような笑みがその顔に浮かんだ。 「ほん、とにぃ……?」 「ああ」 「うれしい……♡ うれしい、です、アレクさまぁ……♡」  その途端、彼の纏う雰囲気がガラリと変わった。周囲の様子を常に窺って生きているか弱い生き物から、他者から精を搾り取り、夜を歩く淫蕩で強い生き物へと。  だけどその根底にある部分は変わっておらず、いつもの彼の延長線上にいる彼が、愛しげな視線でこちらを見上げてきている。 「アレクさま、キスしてください♡ キスして、ぎゅーって押しつぶして、入っちゃいけないとこぶち抜いて、死んじゃうまで犯してくださいっ♡」  本能に流された言葉でもあるのだろう。それでも増幅される前の好意がその裏側にあるのは明白で、それほどまでに大きな愛を向けられている実感で、彼の腹のナカに収めているものがより硬く膨らんでしまう。 「っ……、死ぬまで犯すのは、ダメだな」 「はぇ……?」 「だが、お前の奥には入れたいんだ。激しくするが、絶対に死なないでくれ。ずっと、俺にしがみついていてくれ」  快楽のままに体を開いてくれれば、きっと彼の最奥の先をこじ開けることもできるだろう。彼の望むような死ぬまで続く性交を与えるわけにはいかないが、酷く抱くことで目的が達せられるなら、俺は酷い男になろう。  これは治療なんだ。自分は理性を手放していない。言い訳をするように脳内でそう繰り返しながら、物欲しげに薄く開く彼の唇を奪う。乱暴に舌を入れると、俺の言葉通り、ヒーラーは俺の体にしがみついてきた。 「ん、んんっ♡ んむ、ンッ……♡」  呼吸を奪い合うように深いキスを交わし、俺の思考は明確に熱に侵されていく。目の前の生き物を蹂躙したい。力尽くで犯したい。ダメだ。酷く抱くのはいいが、彼を傷つけるようなことだけはしちゃいけない。  頭の奥底で叫ぶ理性を感じつつ、肉体は衝動のままに彼へと欲望を叩きつけ始める。 「ごッ、おっ♡ お、アッ、ぎぃ♡」  激しく奥を突かれるごとに、彼の口からはうめき声や悲鳴に似た音が溢れ、取り繕うのをやめた顔は硬骨とした表情を浮かべながらも、焦点の合っていない視線を虚空に揺らしている。  色気があるというよりも可哀想という感想が先に来る有様だったが、同時にそんな彼の姿に酷く興奮している自分も自覚して、もっとこの姿を見ていたいと邪な己が思考を支配する。 「お、おぉっ♡ あ”、うぁっ♡」 「はしたないな。お前は本当はこういう奴だったんだな」  酷い男に徹しようと、わざと意地悪なことを言ってやると、彼は絶望で顔を大きく歪めつつも、同時にきつくナカを締め付けた。

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