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第32話 好かれる訳など*
「あ”っ、あぁっ♡ ごめんなさいっ♡ はしたなくて、ごめんなさいっ♡」
「何故謝るんだ? これは夢の中なんだからいいじゃないか」
「ら、らってぇ♡ ゆめのなかでも、アレクさまに、きらわれたくないからっ♡ ああっ、うぐっ、ぎっ♡」
あまりに可愛いことを言うヒーラーに、思わず腰の動きを激しくしてしまう。
そうか。彼も俺に対して幻想を抱いているのか。はしたない相手を好きになるわけがない高潔な剣士。実際の俺はこうして欲望に流されて、言い訳を並べて、瀕死になっている仲間の体に無理をさせている最低の男なのに。
早く奥を抜いて、軟膏を塗り込んで、この行為を終わらせないと。このままズルズルと行為を続けていたら、頭がおかしくなりそうだ。
焦りから動きが乱暴になり、ごちゅごちゅと暴力的な音を立てて奥底は抉られ続ける。
「ハッ、はぁっ……ヒーラー、ヒーラーっ……!」
「アレクさまぁ……っ♡ きてっ♡ いちばんおく、こわしてぇっ♡」
爪を立ててしがみつきながら懇願する彼のナカへと、一際強く腰を打ち付ける。
「お”っ……ごはっ……」
ぐぽんっと先端が向こう側に入った感触がして、それに流されるように二度目の射精が俺の性器の先から迸る。
「あ”、あぁ、ああぁーーっ…………♡♡」
ナカで熱いものを受けとめたヒーラーの体は可哀想なほど痙攣し、俺にしがみついていた腕から力が抜け、気絶寸前という顔でずるりとベッドへと落ちる。
「え、へへ……アレク、さまぁ……♡」
「ああ」
「だいすきです、あいしてます、アレクさまぁ……♡」
ふわふわと夢見心地の面持ちで、歌うように彼は言う。それにどう応えればいいか迷っているうちに、彼はゆるやかに目を閉じ、そのまま穏やかな寝息を立て始めてしまった。
「ヒーラー、俺は……」
自分の本心がどこにあるのか自身が持てず、俺は彼を見下ろして沈黙する。彼がもう、今にも死んでしまいそうな酷い顔色ではなくなっているのが、唯一の救いだった。
*
翌朝、結局あの後一睡も出来なかった俺は、ヒーラーの部屋で彼の寝顔を眺めながら考え込んでいた。
彼は、俺に好意を抱いている。それが本心なのか、それとも歪んだ環境のせいで好きだと思い込んでいるだけなのかは分からない。
そもそも俺には彼に好かれる要素はないはずだ。勇者達から助け出すことも、教会の連中から守ることもできなかった。むしろ恨まれて当然だ。こんな自分を愛してくれるはずがない。
「はぁ……」
考えれば考えるほど、俺は彼に相応しくない。だけど彼は俺のことを求めている。はしたない相手を嫌う清廉潔白な剣士だと思い込んで、そんな俺に嫌われないよう必死に頑張っている。
いっそ彼の求める理想の姿でいることが、彼にとっての償いになるのかもしれない。守ると言っておいて結局一度も彼を守れていない自分には、それぐらいでしか彼の想いに報いることはできないのだから。
「ん、んん……」
ベッドから僅かにうめき声がして、俺は物思いに耽っていた思考を現実へと引き戻す。ベッドを覗き込むと、ヒーラーが眩しそうな様子で薄く目を開いていた。
「アレク、さま……?」
「ああ。おはよう、ヒーラー」
「……すごく、すてきな夢を、見ていました」
野に咲く花のように可憐な微笑みを浮かべる彼を前にして、昨夜の姿は全て幻だったのではという錯覚に陥る。だがそれが現実逃避だということも分かっていて、俺は誤魔化すように窓の外を見た後、彼へと視線を戻した。
「その……教会でのことは、覚えているか?」
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