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第38話 最低だ*

「うう、あぁ……ごめんなさい、嫌わないで、ごめんなさいっ……」  ボロボロと涙を流しながら言う彼を見て、興奮している自分が最低だということは分かっている。だがそれでも衝動のままに動いている思考は歩みを止めることはなく、俺は、ぐすぐすと泣きじゃくる彼の涙を指で拭って囁く。 「嫌わないよ。でも悪い子には罰を与えないとな」 「うぅ……はい……」 「これから、この行為が終わるまで、嘘をつくことを禁止する。分かったな?」 「わかり、ましたぁ……」 「良い子だ」  痛々しいほど涙に濡れて赤くなった目元に、軽いキスを落とす。その途端、彼はぽっと爆ぜるように顔を真っ赤にして目を見開き、顔を手で覆って俯いた。 「どうかしたのか?」 「うぅ……はずか、しい、です……」 「もっと恥ずかしいことを下でしているのに?」 「へ? ン、アッ♡ あっ、あ、あー……っ♡♡」  本能と理性の混濁のせいか、一瞬頭から抜け落ちていたらしい状況を分からせるように、軽く腰を打ち付けて腹のナカのものを意識させる。 「あーっ、あっ♡ アッ、うぁ、あぁっ♡」 「気持ちよさそうだな、ヒーラー」 「ひ、ひゃい♡ きもちいい、きもちいいれすっ♡」 「このまま優しくされるのと、酷くされるのどっちがいい? 嘘はつくんじゃないぞ?」  あえて念押しをして、俺は尋ねる。酷くされる方を選ぶということは分かっていた。朧気な記憶の中の最初の行為の時も、昨日の性交の時も、今思えば、彼は激しくされればされるほど悦んでいた。  彼が酷くされるのを望むのならそうしよう。それが、自分の欲をぶつけるための言い訳なのではと悩む理性は今はどうでもいいと思えた。衝動に支配された今の俺の脳は、乱暴な性交をしたくて仕方がなかった。  だが彼は少し沈黙して考えた後、想定とは真逆の答えを返してきた。 「優しく、してほしい、です……」 「えっ……」  彼の体を貪るつもりでいた思考が急停止させられ、俺は困惑で言葉を連ねる。 「本当か? 嘘をついてるんじゃないのか? 取り繕う必要はないんだぞ?」 「嘘じゃ、ないです……アレクさまには、優しくして、ほしいって……思った、から……。今までの、人たちは……みんな、酷くしてきて、それを気持ちいいって……思ってきた、けど……、アレクさまは、優しいから……優しく、されてみたくって……」  うまく息継ぎが出来ていない話し方で、それでも懸命に本心を伝えようと喉を震わせる彼を前にして、俺は死にたくなるほどの恥を覚えた。  こんなに純粋な気持ちで慕ってくれている子を相手に、都合良く欲をぶつけようとするなんて最低すぎる。俺は今すぐ死んだ方が良い。俺には彼と体を重ねるどころか、顔を合わせる資格もない。  それでもいじらしい期待でこちらを見上げてくる彼の顔を、これ以上曇らせるなんてことはしたくなくて、俺は全ての罪悪感を飲み込んで、体の下に組み敷いている彼へとぎこちなく笑った。 「分かった。優しくするよ。もし痛かったり苦しかったりしたら、すぐに言うんだぞ?」 「はい……あぁ、ン、あっ♡」  最奥に優しくキスをするように、トントンと先端をぶつける。その度に甘い喘ぎが彼の口から漏れ、それに苦痛の色が混じらないよう細心の注意を払いながら、俺は腰を動かす。 「あ、ああっ♡ いいっ♡ きもちいいれすっ♡ アレクさまぁっ♡」 「くっ……!」  喘ぎの合間に名を呼ばれるごとに、自責の念で縮みかけていた性器が力を取り戻す。我ながら単純だったが、それで彼が満足できるなら今はこれでいいと思えた。 「あ、あぁ、くるっ♡ ふかいの、くるぅっ♡」  もどかしい刺激の繰り返しで徐々に高められていった快楽が決壊する時を待ちわびて、彼の内側を優しく刺激する。彼は蕩けた顔で、俺に腕を伸ばした。

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