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第39話 共に行こう*
「アレクさまっ、ちゅーしてっ♡ 押さえ込んで動けなくしてっ♡ お願いっ♡」
ねだられるままに唇を奪い、全身を押しつぶして逃げ場を無くす。その体勢で深く奥を穿つと、彼は身じろぎひとつできないまま、大きく絶頂した。
「ッ~~~~~!!♡♡♡ ッ、んむっ……っふぅ……♡」
口を塞がれた状態で甘い声を上げることも封じられ、腹のナカをきついほど痙攣させて締め付ける。俺もまた口づけで呼吸ができないまま、彼のナカへと欲を吐き出した。
「……はぁ、はぁっ…………」
「ふふ……えへ、へ……♡」
押しつけるような長いキスを終わらせ、俺は彼の内側から己自身を抜き去り、後から追いついてきた罪悪感に表情を曇らせる。
やっぱり自分は最低の人間だ。欲望をコントロールできず、彼を性欲処理の相手として見てしまった。ほんの僅かな間の気の迷いだとしても、許されることではない。俺は、彼に相応しくない。
「アレク、さまぁ……♡」
朦朧とする意識で、彼が俺の名を呼ぶ。慌てて表情を取り繕い、伸ばされた彼の手を取る。彼は、ふわりと可憐に笑った。
「愛してます、アレクさま……♡」
何故、俺なんかを。
自己嫌悪と罪悪感に蓋をして、彼にただ無言で微笑む。
彼の言葉への返答は、いくら考えても正解を見つけることができなかった。
*
数日後、出立の準備を整えた俺とヒーラーは、店主によって見送られていた。
「この先、使うこともあるでしょう。これをどうぞ」
彼が渡してきたのは、あの軟膏の容器が複数入った袋だった。
「ありがとう。金はいくら払えば……」
「いいんですよ。久々に同胞のために動けて気分が良かったですし。餞別です」
にこりと笑む店主に聞きたいことは山ほどあった。彼は何者なのか。どうして自分たちをここまで気にかけてくれたのか。
だがそれを追及されることを店主が望んでいないことは明らかで、俺はただ彼に頭を下げた。
「本当にありがとう、感謝する」
「どういたしまして。さあ、日が昇る前にお早く」
「ありがとう、ございま、した……」
傍らのヒーラーがぺこりと頭を下げる。その仕草にすら愛しさを覚える自分に気付き、すぐにそんなことを考えてはならないと自制する。
自分にそんな資格はない。彼との約束だから求められた時は拒まないが、自分から愛を伝えたいだなんて思ってはいけない。そんな資格は自分にはないんだ。思い上がるな。
「……旦那、この子を幸せにしてくださいね?」
「え……」
「約束ですよ?」
内心を見透かすように小声で店主に言われ、俺は押し切られる形で何度も頷く。
「ではお二人とも、お元気で」
「は、い……」
「……店主もな」
最後にもう一度頭を下げ、俺とヒーラーは町から出ていく。
俺が背負っている大きな木箱には、勇者の死体が入っている。死体を持って出発する旨は教会の後始末をしている人々には伝えたが、町の住民から見送られるのは避けたかった。
ヒーラーが惨い陵辱を受けたという噂は、町中に広まっている。彼が好奇の目を向けられた時、俺は冷静でいられる自信がない。俺も、彼を陵辱した奴らと変わらない、彼に欲をぶつけようとした側の人間なのに。
「アレクさま」
心なしか生気のある声で、ヒーラーが呼びかけてくる。曇りかけた表情のまま見下ろすと、彼はそっと俺の手に自分の手を重ねてきた。
「大丈夫、ですよ」
本当に幸せそうに、彼は笑む。
俺が、彼を守らなければ。たとえ俺が彼に相応しい人間ではなくても、守るという約束だけは今度こそ果たさなければ。
自然と胸に浮かんだその決意のまま、俺はなんとか彼に微笑み返した。
「ああ。共に行こう、ヒーラー」
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