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第2話
街灯の下で、湊が律を見る。
いつもの軽い笑顔はなかった。
律は視線を逸らした。
「避けてない」
「じゃあ、なんで最近ずっと帰ろうとするの?」
「……」
「俺、何かした?」
「してない」
「じゃあ――」
「湊」
律は遮った。
「もういいだろ」
「よくない」
「いいよ」
「俺はよくない」
思ったより強い声だった。
律が顔を上げる。
湊は、真っ直ぐこちらを見ていた。
「俺、律に嫌われたくない」
「……嫌ってない」
「じゃあ、好き?」
心臓が跳ねた。
あまりにも簡単に言うから、律は一瞬意味が分からなかった。
「……何、それ」
「そのまま」
「そういう冗談、やめろよ」
「冗談じゃない」
湊が一歩近づく。
「俺、律のこと好きだよ」
律は黙った。
夜風が二人の間を通り抜ける。
遠くでタクシーが走っていく。
「……年下のくせに」
「関係ある?」
「あるだろ」
「ないよ」
「俺のほうが四つも上だぞ」
「だから?」
「だから……」
言葉が続かない。
年齢なんて、本当はどうでもいい。
分かっている。
分かっているからこそ、怖かった。
湊と出会ったのは、大学時代だった。
最初はただの後輩。
何かと律の隣に座りたがる、少し生意気な後輩。
卒業してからも連絡を取り続けて、気づけば休日に会うのが当たり前になっていた。
映画を見て、飯を食って、くだらない話をする。
それだけだった。
――それだけのはずだった。
「律」
「……何」
「返事、今じゃなくてもいい」
湊が少し笑った。
「でも、逃げないで」
「逃げてない」
「じゃあ、明日も会ってくれる?」
「……明日?」
「うん」
「仕事は?」
「休み」
「また俺のところ来るつもり?」
「ダメ?」
律は答えなかった。
代わりに、コンビニへ向かって歩き出す。
「律」
「……来れば」
「え?」
「明日」
振り返らずに言う。
「来ればいいだろ」
後ろから、湊の笑い声が聞こえた。
「うん!」
その声が妙に嬉しそうで、律は少しだけ口元を緩めた。
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