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第2話
ため息をつく沼部。今は特別忙しいわけではないけれど、真翔を中心として開発の見直しを行っているところだった。他のメンバーもプログラム内容を十分に把握しているとはいえ、真翔がチームの主戦力であるためそこそこダメージがある。
ふと、真翔は沼部の言葉に引っかかった。
「交換って言いましたよね? ってことは、俺店舗チームのどこかに出向っすか?」
真翔のチームでは、ECサイトで商品を売っている小売店舗が使用するシステムの開発と保守の一部を担っている。真翔の経験としても今の業務から離れない方が年明けからの業務としても効率がいいだろう。
「赤羽くんの実力的にはそうなるだろうね。僕も知らないんだ」
「あっちの人たち俺よりもポンコツばっかじゃないですか! いちいち無駄な行動ばっかで。えー……行くの嫌なんすけど」
「こらこら。向こうでは絶対にそんなこと言わないでね。せめて、赤羽くんの実力見せつけるだけにしてよ」
「はーい……」
常日頃皆で愚痴をこぼしながら仕事をしているせいで、沼部からこれ以上叱られることはなかった。
今でこそチームリーダーとしてスケジュール管理を主としている沼部だが、以前は開発エンジニアとしてとても優秀だったと聞いている。真翔のように効率的な開発を得意としていたらしく、真翔のコードの書き方をよく褒めている。そのおかげで、真翔は仕方なく入社したこの会社でもエンジニアとして頑張ろうと思えているのだ。
「申し訳ないついでに、今日明日で引き継ぎ資料作っておいて。他のことはできなくてもいいから最優先で」
「分かりました」
真翔は失礼します、と自席に戻った。中途半端に残っているタスクもどうにかしてしまいたい。真翔は早くやってしまおう、と気合を入れるためにハーフアップを解いて髪をひとつ結びにした。
まずは資料を作るために、チャットログやメールを見返していく。ふと、今までも何度か目にしていた名前に目が止まった。確か、今年に入ってから出てくるようになったはずだ。
「東雲 ……。まさかね」
学生時代に付き合っていた恋人も東雲だった。真翔は今でも彼のことが好きだが、自分の未熟さに嫌気が差してフッてしまった。確かサンアップに就職していたはずだが、こんなに近くにいるものだろうか。大会社だから同姓の人がいてもおかしくない、真翔はそう言い聞かせた。
自分の劣等感を引き出すから二度と会いたくないはずなのに、心の奥底にしまい込んでいた恋心が燻って、東雲という名前が頭から離れなくなってしまった。
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