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第3話

 はぁ、と、真翔はため息をつきながら電車を降りた。突然の出向のせいで、本来であればニ週間だった年末年始の休みが一週間に減ってしまった。会社によって休みのタイミングが異なるのは仕方ないが、まさか遅い休みからの早い仕事始めとは思ってもみなかった。  ただでさえいい印象のない仕事場へ行くのに休みも短い。嫌だと勝手に漏れ出るため息がこれ以上出ないように必死に抑え込みながら、駅直結のオフィスビルへと入っていく。無機質な建物内にはサンアップ以外にも多数の会社が入っている。当然多くの人が来るのでエレベーターホールにはずらりとドアが並んでいる。しかし、ラッシュを過ぎた時間のおかげか、真翔以外に待っている人はほとんどおらず、過剰なほどに思えた。  真翔はエレベーターに乗り込み、受付のあるフロアのボタンを押す。最新技術の搭載されたエレベーターは静かに速く上がっていく。耳が少しキーンとなったところで、どうして大きな会社ほど上層階に会社を構えるのかという疑問が湧き上がった。他の高めのフロアもそこそこ有名な企業が多い。  答えが出ないまま、ポーン、と到着を告げる音が鳴ってドアが開いた。真翔がエレベーターから降りると景色が一変した。流行を取り入れた広々としている空間は、まるで自然に囲まれているような感覚がする。中央には見慣れたロゴがでかでかと掲げられており、その下の受付は案内のパネルに囲まれて女性が二人座っている。真翔は受付へと向かう。 「おはようございます。ファーストラインテックから出向の赤羽真翔です。人事部の方に取り次ぎお願いします」 「赤羽様ですね。少々お待ちください」  女性が端末を操作している間に、チラリと受付隣のドアを見る。このフロアにもオフィスゾーンはあるだろうが、これから出社してくる人の気配がない。職種によって勤務時間が異なるとしたら、おそらくこのフロアはエンジニアはいないだろう。  それにしても、サンアップの敷地に入った途端色とりどりな空間になり、会社とは思えなかった。慣れない場所も相まって、真翔は落ち着いて仕事ができる自信がなかった。 「赤羽さん、お待たせしました」  真翔の名前を呼ぶ同世代くらいの男性がオフィスゾーンから現れた。スーツではないけれどオフィスカジュアルの格好で、内部のことを担当しているとひと目で分かる。 「人事の久世(くぜ)です」 「赤羽です。よろしくお願いします」 「では、早速担当するエンジニアチームのいるフロアを案内します」  久世はエレベーターへ向かい、二つ上のフロアのボタンを押した。大きなオフィスビルではあるが、それ以上にサンアップが大きな会社であるためにいくつものフロアにまたがっている。他部署に用があるときは業務中もエレベーターを使う必要があるようだ。  すぐに到着して降りると、久世は真翔の方を向いた。 「各フロアのオフィス部分へ入る際は、こちらのカードキーをかざしてください」  はい、と、セキュリティマークの描かれたカードを渡した。久世は見本を見せるように自身のカードをかざして解錠する。

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